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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
最終章 終わり、始まる世界
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まだ見ぬ明日を見るために

「待て…!」


ブラックホールの中、永戸はひたすら逃げていくアズウルを追いかける暗い視界で何もかもが見えなくなりそうだが、自身の聖剣の光で道を照らし、アズウルを追いかけた。

そして、ブラックホールの先、終点へと彼らは辿り着く。


「……ここは」


そこは、何もない空間で、さらには星ひとつない暗闇が広がっていた。

そんな中で、永戸はアズウルと対峙する。


「何故だ…何故お前はここまできた! 一度飛び込めば帰って来れるか分からないと分かっていながら」


アズウルでさえ、永戸の行動原理が分からなかった。この空間は文字通り世界の終点、世界の終わりとなる場所だ。彼にはこの終点から元の世界に帰る程の転移能力はないはず、それなのに何故、自分を追ってきたのか、アズウルには理解できなかった。


「そんな事…………」


永戸もヤケクソでここまで飛んできた。帰れるかも分からないこの場所にまで、けど彼は、絶対に帰ると決心していた。それが、神癒奈との約束だから。


「…分かりきったことだろ、お前を倒して、俺は、元の世界に帰る!」


剣を振り翳し、彼はアズウルに向ける。


「…ふ、ふふふ…たった一人で、キミが、僕を倒すだって? 笑わせるなぁあああああっ!」


その場に落ちていた数々のアーティファクトが浮かび上がり、彼の武器となる。


「行くぞ、アズウル!」


永戸はたった二つの剣を握り、幾多の聖遺物を掲げたアズウルに挑み始めた。


ーーー


「僕をぉ…イジメるなァアアア!」


巨大ななり損ないが絶望の影を吐き出しながら触手で攻撃を行う


「散開!」


ユリウスの指示で四課のメンバーがバラバラに分かれ、攻撃を開始した。


「こいつどうしたら倒せるんだ!」


ライが全員にバリアを張りながらそう言う。影を取り込みながらどんどん巨大化していくこの怪物にどう対処しろと、彼は思った。


「フェイタルポイントが見えない! いや、すごいスピードで体の中を移動してて狙えないよう!」


コリーも先程から狙撃で狙おうとしているが、弱点は常に体の中を動いていて狙えそうになかった。


「ならば最大の火力をぶつけるのみです!」

「ラストダンサーの全火力で、奴を撃滅するまで!」

「全武装、フルファイア!」

「全力全開の光で! 吹き飛べぇえええっ!」

『ブレスで消し炭にしてやるわ!』


神癒奈とフィアネリス、エイルと桐枝、リオーネが持てる全ての力をなり損ないにぶつけた。だが、なり損ないがその攻撃を取り込んだかとおもうと、内部で何かが蠢き始める。


「いけない! 総員回避するんだ! 今すぐに!」

「っ⁉︎」


ユリウスの指示を受けて、全員が回避した。その直後、先程した攻撃がそのまま帰ってきて、あたり一面を破壊し尽くす。


「なっうわぁあああああっ⁉︎」


爆発を受けて、桐枝が吹き飛ばされ、天界の空から地上へと落ちていく。


「桐枝さん!捕まってください!」

「うんっ!」


すぐさまフィアネリスが飛び込み、桐枝の手を掴み、元の場所へと持ち上げる。

全員がなり損ないを再び見やるが、こうなるとすると、どう攻撃すべきか悩んだ。


「まずい、このままだと神の座が⁉︎」


巨大化が止まらないなり損ないが、神の座を崩しては飲み込もうとしていた。アレを失えば、元の世界に戻すことができなくなる。


『させはしないっ!』


リオーネが巨大な竜の体でタックルをして神の座から引き剥がす。だが、彼女に触手がまとわりつき、飲み込もうとした。


『なっ…やめなさいよ! 離せ!』

「こんにゃろおおおおっ!」


リオーネを縛り付ける触手を、桐枝が切り裂いて彼女を解放する。その直後、切り離された触手は影として散り、消えた。

今の現象を見て、フィアネリスはピンときた。


「そうか、斬撃です! 奴を切って、縮小化させていくのです!」

「そう言うことなら! 焔月式抜刀術、弐式!」


神癒奈が空中に飛び上がってなり損ないに向けて連続の斬撃を叩き込んだ。

一瞬で巨大な体の一部が削り取られ、一時的に核が露出する。


「見えた!」


その一瞬の隙を逃さず、コリーは対物ライフルで狙撃した。その狙撃は綺麗に核を撃ち抜き、そこから出血させる。


「痛いヨォオオオオ!」

「…フェイタルポイント、確認!」


致命的な一撃を受けたが、まだ暴れる気力があるのか、なり損ないは周囲を破壊し始めた。


「いい加減、消え去りたまえ! 光と共にあれ、アリアンヌ!」


ユリウスが飛び上がると、聖剣アリアンヌによる光の斬撃を複数叩き込み、巨大な体の一角をまた消し飛ばした。


「強烈な毒で、溶けて無くなってしまえ…!」


エイルが改良されたバトルアックス"アンダーカバーⅡ"を手に取ると、なり損ないの足元でバトルアックスを振り回し、さらにそこからブーメランのように投げた。

ザパッ! っと切れる音が聞こえ、同時にエイルの毒の血がなり損ないを蝕む。


「アァアアアア!」


すると、なり損ないが全身から棘を生やして攻撃してきた。全員は回避しようとするが、回避に遅れたエイルとフィアネリスは棘に体を貫かれてしまう。


「かはっ⁉︎」

「うぅっ!」


体に穴が空き、二人は地面に崩れ落ちる。その隙を狙ってなり損ないは触手を二人に振り下ろした。


「フィアネリスさん!」

「エイル先輩をやらせない!」


神癒奈がフィアネリスを、桐枝がエイルを抱え、後ろに下がらせる。


「痛い…痛い…です」

「アンプルならちゃんとあるから心配ないっすよ!」

「けどまだ、戦わないと…」

「無理は禁物っすよ! 回復するまで休んで!」


重いエイルの体を下ろすと桐枝はアンプルをエイルに打ち込んだ、それで体は少しずつ回復するが、エイルはそれでも戦おうとした。


「フィアネリスさんっ! アンプル今打ちますから!」

「神癒奈さん…それくらい、自分で打てますよ、それよりも貴方は、戦闘に戻ってください」


フィアネリスは自分でアンプルを打ち込むと、神癒奈を送り出した。それに対して神癒奈は頷くと、再び戦闘に戻った。

巨大だったなり損ないは小さくなってきていて、核が露出しつつあった。その中には、怪物と化した達海が蹲っていた。


「何度だって撃ち抜いてやる!」


コリーがひたすら狙撃をして、核にヒビを入れていく。同時になり損ないは苦しみ、バタバタと暴れる。その時だった


「ソウダ…こんな、椅子があるからぁっ!」

「っ! だめぇええええっ!」


達海のなり損ないが、神の座に近づくとその座を自らの触手で破壊しようとした。


「させるかぁあああっ!」


それを、ライがバリアで防ぐ。幾層にも重ねられたバリアが、なり損ないの攻撃から神の座を守った。

同時にカウンターが発動し、なり損ないが吹き飛ばされる。


「叩き切れ…エルメイル!」


桐枝が横薙ぎに剣を振るうと、なり損ないの体が両断された。


「痛い痛い痛いィイイイッ!」


ダメージでなり損ないが怯み、後ろへ下がるが、ここで、いつのまにか仕掛けてあった赤い糸がなり損ないに絡みついた

影の体とはいえ、毒が体を蝕み、溶かしていく。


「傷は負っていても、糸を出すくらいならできるから…」


エイルは痛みで汗を描きながらも糸を操作する。これによって、なり損ないの動きが止まり、最大の攻撃チャンスができた。


「神癒奈君! トドメを!」

「神癒奈さん!」

「神癒奈!」

「神癒奈ちゃんっ!」

「神癒奈…さん!」

「神癒奈先輩!」

『神癒奈っ!』


「…っ! はいっ!」


全員からの想いを受け取り、神癒奈は最後の一撃を入れるべく飛び上がった。


「っ……神、様!」

「あなたの歪んだ転生も、ここまでです! 焔月式抜刀術、壱式改!!」


神癒奈は自分の中の全エネルギーと神としての権限を刀に付与し、鞘に収めた。そして目標の核を見つけると、空中を蹴って神速の速さで刀を抜く。


『閃火!』


文字通り、一閃し、達海の入ったコアを真っ二つに両断した。


「神様……そんな…そんな…嫌だ…僕はまた…死ぬのか⁉︎ こんな死…受け入れられるか!」

「……自死のほうが、よっぽど受け入れられませんよ」


カチンと刀を鞘にしまうと、達海の入った二つに割れたコアは、バラバラに爆散した。


「……やりました」


振り向いて神癒奈は、凛とした表情で皆に言う。


「…うむ、よく、やり遂げた、さぁ、最後の仕上げと行こうじゃないか」

「…はいっ!」


そうして神癒奈は神の座へと座る、瞬間、彼女から強い光が出た。


「凄い…ここにいれば、世界がどうなってるのか、手に取るようにわかります!」

「世界を元に戻すことは、できるのですか?」

「…やってみせます!」


そう言うと神癒奈は、神の座にて自らの神格を発揮し、全ての世界にアクセスした。

そして意識が、世界の広がる場所へ吸い込まれていく…。


ーーー


「……ここは?」


目を覚ますと、そこは、自分の持つ神域だった。

数々の世界が星の光として瞬く中、そこの中心に神癒奈は座り込んでいた。


「……星の光が…みんな、消えようとしてます」


絶望に染められたのか、数々の世界の星が、チカチカと明かりが消えつつあった。このままいけば、星の光はどんどんなくなり、何もなくなるだろう。


「っ……もう、絶望の好きには、させない」


そう言うと神癒奈はとんっと浮き上がり、そのまま空へ向かって飛翔し始めた。そして、胸の内に秘めた自分の神格を取り出すと消えゆく星たちに掲げる。そして神癒奈は目を閉じ、心の奥底から声を出した。


ー全能の神、神癒奈が告げます、絶望に取り込まれた世界よ…もう一度、輝ける世界に戻って!ー


その声が響き渡ると、空の中央にあった月が強く光った。その光が神癒奈のところまで降りてくると、彼女の神格をより強くし、他の世界の光を、取り戻していく。だが、その時、邪魔が入った。


「あぁっ! ぐっ……! アズウルの、絶望が…!」


神癒奈の体を包み込むようにアズウルの絶望が流れ込んでくる。あらゆる者の絶望する姿が神癒奈の脳裏に流れ、同時に彼女の身体を絶望に染めようとするが、神癒奈は自身の神力でそれを押し留めた。


「負けて、たまるか! 絶望の、集合体に…!」


だが、ジリジリと絶望は彼女の身体を飲み込もうとしていた。腕や足が黒く染まり、どんどん彼女を闇の奥へ誘い込もうとする。しかしそれでも彼女は挫けず声を上げた。


ー聞いて、下さい! 世界は、絶望の一色で塗られたものなんかじゃありません! 喜びも、感動も、幸せだって、あるんです! 絶望が影を作るならば、その影を写す光となる希望だってあるんです!ー


侵食が身体に到達し、彼女の体の自由が奪われようとしていた、もう少しすれば、彼女の全てが絶望に飲まれるだろう。

…それでも、彼女は諦めずに世界に声を上げた


ーそうです、絶望なんかに負けちゃダメ! 私たちは、暗く澱んだ世界ではなく、光あふれる世界で、絶望に溢れた今ではなく、まだ見ぬ希望に溢れる明日に進んでいくんです!ー


その言葉を言った途端、神癒奈の神権が発動し、身体にまとわりついた絶望が祓われる。同時に、宇宙 に向かって光が放たれ、世界が改変され、さまざまな世界の絶望が祓われ、かつての元の世界に戻って行き、星々の光が全て取り戻された。


「やりました…!」


本来の目的であるたくさんの異世界の救済をやり遂げ、神癒奈は笑顔になる、その時、星の声が聞こえた。


『ありがとう! 世界を守ってくれて』

『助けてくれた! 貴方に感謝を!』

『全能神の娘よ、光を取り戻してくれて、ありがとう』


「…いいんです、これで、また普通の日常に戻れるなら」


星々の声に神癒奈は答えるが、その時、ある星がこんな提案をしてきた。


『礼に、君に、世界を変える力を与えよう』

『神の座などいらない、真の全能の力を』

『貴方になら託せられる、この力を、世界を救う力として』


「力? それってどういう…?」


すると、数多の星の光が強くなり、その星の光が眩く輝くと、それらの星の光が月に集結し、そして、月から神癒奈へと力が託された。


「これは…!」


神癒奈は、自分の神格がより強くなったのを感じた。同時に、幾多の星々と力が繋がった感覚も感じ取った。


『本物の全能、お前に託す』

『その力で、今も戦ってるあの人を助けてあげて!』

『あの人はまだ、絶望と戦ってる!』


「あの人って…」


星が光で照らすと、そこには、永戸とアズウルが、戦っている姿が目に映った。


「永戸さん!」


暗闇の中で、戦う彼の姿を見て、神癒奈は良かったとホッとするが、同時に心配になる。彼が、アズウルの攻撃に押されていたのだ。


『行きなさい、彼の為に』

『あの人のそばにいてあげて』

『あの人に力を!』


「はい!」


星々の願いに答えると、神癒奈は飛び上がって星空を駆け抜けていった。たった一人の、大切な人を助ける為に。

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