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最後まで、Yes。  作者: 上之下 皐月
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第二章 五月その1

五月。

東京では桜などとっくに散っている時期だが、ここ軽井沢ではようやく花が咲き始めたという時期になった。

四月末から氷点下に下がりにくくなり(下がらない訳ではない)、寒さが和らいでいく。

ここの春は東京などの平地と違い、一斉に桜が咲き乱れる訳ではなかった。

まずは茶褐色一色の山のなかにぽつぽつとこぶしが白く咲き始める。

こぶしという花を僕は黒崎に教えられ初めて知ったのだった。

「この花の名前なんだ?」

カーリング場に向かいながら黒崎諒が僕に聞く。

そこには黄色い花。

「…つつじ?」

「…れんぎょうだよ」

あきれられる。

「じゃあこれは?」

またもや黄色い花。枝についているが…。

「黄色い桜」

「アブラチャンだよ」

「??…油ちゃん?」

「そ、アブラチャン」

本当にそういう名前らしい。

「どれも花、だろ?」

「これはなーんだ」

「花だ花!」

「クリスマスローズ。名前くらい聞いたことあるだろ?」

「クリスマスローズが春に咲くのか??」

「クリスマスの寒い時期に咲くのもあれば春に咲くクリスマスローズもあるんだよ」

「ナルホドベンキョーニナッタヨ」

「せっかく周りに植物が多いんだから知らないより知ってた方がいいだろ?」

「知ってて何の特になるんだ?」

「これでクリスマスローズの何たるかを女の子に説明できるだろ?」

『ナルホド一理ある』

黒崎は植物に詳しかった。まぁ地元の人にとっては当たり前なのかもしれないが。

山にはこぶしの白、おそらくれんぎょうなどの黄色、そして淡い桜のピンク。これらが少しずつ少しずつ咲いていく。

春は桜だと思っていたが、山の春はゆっくりと静かに、おしとやかにやってくるのだと僕は知った。


「それじゃスワンから開始!」

部長が号令を出す。

スワンとはカーリングのデリバリーの体勢の後すぐに立ち上りまたデリバリーの体勢になる…を繰り返す動作で共通用語か分からないが先輩達はそう呼んでいた。

これは中々にキツい。

カーリングを始めてから半月。

まだまだ数えるほどしか経験のない僕はまとまに立つことも出来ない。正に醜いアヒルの子だ。

「いつか白鳥に…なりましょう」

友利が隣で言う。

うん、お前はペンギンだな。

成長したら…何になるんだろうか?

そんな事を考えながら、僕の五月はスタートしたのだった。






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