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そして決闘は終わった。
え?終わったよ?やあん、素敵、かっこいいダーリン!!って煌に駆け寄って抱きついてるもん、今。
君の為なら世界さえ滅ぼしてみせるよハニーって言ってください!!陛下!!って言ってる奴は隣に立ってる人に殴られた。やめろ。本気でできるから。この人、やる気になったらできるから。
瞬殺、ではなかった。
一応お互いに制限はあった。だって勇者と魔王が戦ったら決闘の域超えるよ?とてもじゃないけど観戦なんてできないよ?
現に前の魔王と煌が戦った時、王都中に避難警報鳴り響いてたらしいし。逃げ遅れたにも関わらず、しっかり観戦して感想まで言ってきたびっくりな魔族もいるにはいたけど。
だから命は取らない決闘ってことで、使うのは剣だけ。打ち合うだけ。煌は足も使ってたけど。
竜也はあれだ。正統派の勇者だから剣一本なんだよね。剣使ってるのに足まで使えないっていうか。それってなしだろ!?的な。え?だめなの?みたいな煌に、だめだろ普通!!って言っちゃうような正統派だから。
煌は、ええ?みたいな顔してたけど、しょうがないなって足は使わないようにしてたけど、ついつい出そうになってやりづらそうだった。
それでも勝ちました!
かっこいい!かっこいい!私の旦那様かっこいい!!
え?キャラ崩壊?いい!ダーリンのためなら崩壊する!しても許される!だってバカップルって呼ばれてるんだから、お互いのためなら何しても許されると思う!!
まあ、そんなわけで勝負ありです。
煌が魔王だって分かった途端、揺れた心はまた竜也に固定されたらしいお姉様方は必死で竜也を慰めてた。そしてかっこよかったと褒めていた。そしてそして足を使うなんて野蛮だの、卑劣だの言ってた。
そんなお姉様方にアリアさんが頭を横に振りながら、竜也に治癒魔法をかけていた。
「でも残念だったな」
「何が?」
「魔王の座を捨ててお前と逃避行ができなくなった」
「また機会があるって」
「そうか?」
「そうそう」
「逃避行!?」
がばっとうつむいていた竜也が顔を上げた。
それにうん、と頷く。
「負けたら一緒に逃げる予定だった」
「約束が違うだろそれ!」
「約束と凛なら凛を取る」
「きっぱり言い切るな!無駄にかっこよく言うな!」
叫んで。
はあっと竜也が大きな息を吐いた。そして前髪を掻き上げる。
ほう、っと竜也の仲間達がうっとりしたような息を吐いた。うん。竜也も美形だからね。そういう仕草も絵になるよね。
「凛」
「なに?竜也」
真剣な声に振り返る。
ずっと一緒にいた時のような感覚がして、ちょっと懐かしかった。竜也もそう思ったのか、くすりと笑った。
「好きだよ」
ぴたっと音がやんだ。
そして魔族達が自分達の主を見て、けれど何の反応もないのに不思議そうな顔をした。
でも私は知ってる。私を抱く腕に力がこもったことを。
「私も好きだよ」
「幼馴染として?」
「幼馴染として」
俺もだよ。
言って笑った竜也の顔は泣いているようにも見えた。
「で、凛」
「なに?竜也」
「お前の旦那、心狭くないか」
「愛されてるの」
一拍泊まって、では国に帰りますな時に、じゃあまたねーっと笑って手を振った私がつまづいた。自分の足に。
何これデジャヴ。
でもまた地面に顔面激突は避けられた。ぶつかったのは竜也の胸だ。竜也の胸の中にダイビングした。
大丈夫か?何やってんだよお前。
うっさいな。ありがと。
な、幼馴染同士の会話の後ろで、ピシッと氷が割れるような音がした。
今考えればさっさと竜也から離れればよかったんだよね。いつまでも抱かれたままだったのが悪かった。その状態で会話してたのが悪かった。顔が近かったのも悪かった。
つまり、ダーリンがキレた。
「もう一泊してく?」
「帰るわ!!」
全身びしょぬれの幼馴染。
ダーリンに後ろから抱きしめられてる私。
ほんとごめん。結婚するまで知らなかったんだけど。旅してる間は二人っきりだったから知らなかったんだけど。すっごい嫉妬深いの、ダーリン。
くしゃみをした竜也に、新しい服が差し出された。
終わりです。
…え、と期待外れで申し訳ありません。
まさかこんなに感想いただけるとは思ってなかったので、これはと話を修正してみようと思いましたが、どうしたらいいのか分からず(汗)
とりあえず書いてないところに勇者の葛藤はありました。
幼馴染でずっと側にいて、だから無意識に自分のものだと思っていて。それが別の人のものになったことで何でどうしてな理不尽を感じて。
決闘してみたものの、戦っているうちに気持ちが整ってきて、負けたことによってすっきりして。
その結果がこの大団円です。
残った問題は彼のハーレム体質ですが。そして女性の悪いところを見れない彼の目ですが。そこは知りません。
このままじゃいつか苦労するだろうなあと思います。はい。