第八話 アリサの事情
俺達は大蛇の皮を剥がして袋に詰め、森の奥へ。
パワードスーツは歩いている途中でエネルギー切れを起こし、ボロボロと砂の塊に還ってしまっため、そのまま使い捨てた。
「いやあ……びっくりしたね」
「そうね。あんなのがいたなんて……人が森の奥まで入っていかない理由が分かったわ。……奥にはこんなのが当たり前のようにいるのかしら」
「いる可能性は否定できないねー。いざとなったら、また近接戦闘はお願いするよ」
「ええ、勿論。その代わり、遠距離戦と後方支援はお願い」
「任せて!俺、強いみたいだから!」
ファイヤードラゴンと大蛇を倒し、俺は追放によって失った自信をすっかり取り戻していた。
感覚が麻痺しているようだが、アリサは人間界の中でもかなり強い方だ。
そして俺は、アリサの三倍以上レベルが高い。
ファイヤードラゴンや大蛇が、そんじょそこらの冒険者では秒殺されてしまう程に強かっただけで、俺達は決して弱くなど無いのだ。
取り戻した自信を胸に森を進んでいくと、俺達は一つの洞窟に辿り着いた。
もう日も暮れる頃である、今夜は洞窟の入り口にテントを張るとしよう。
「……ねぇ、ベクタ」
「どうしたの?」
「その……ありがとう。私とパーティを組んでくれて」
「こちらこそだよ。一人取り残された俺と、一緒に戦ってくれてありがとう」
「むぅ……。そ、そうね。だったらお互い、空いててラッキーだったわね」
「うん。……何か、事情があるの?」
何かを言い出す機会を失ったように、アリサはモジモジとしている。
「……私も、パーティを追放されたの」
「えっ、アリサもだったの?」
「そう。私、一人だとAランクなのだけれど……私の友達はCランクで。皆の迷惑にならないように鍛えたつもりが、皆とランクが離れちゃって」
「うんうん」
「それで……『自分だけ上を目指したいからって、私達を出し抜いたつもりか』って……卑怯だって……そう言われて、喧嘩して……。私、皆の足を引っ張りたく無いから、寝る間も惜しんで鍛えたのに……!」
「うわぁ」
「私、何か間違ったことしたのかしら……!皆も私と同じくらい鍛えろなんて言ったこと無いし、出し抜くだなんて、思ったことも無かった……!私はただ、皆で冒険をしたかっただけだったのに……!なのに、ぐすっ……!そんなこと、言われるなんて……!」
アリサの瞳からは次第に涙が溢れ出す。
「……アリサ。人様の友達を悪く言うのは良くないと思うけどさ。……そいつら、半端なくクズだと思うよ」
「へ……?」
「友達が役に立ちたいって努力したのに、それでもって他の人に努力を強制してる訳でも無いのに、勝手に嫉妬して、裏切って……。とんでもない話だよ」
仲間のために頑張って強くなったのに、その強さに嫉妬してパーティを追放されるなんて、なんと残酷で、道理にそぐわないことか。
「そ、そう、かしら?」
「そうだよ。アリサはもっと怒って良いって。俺、腹立ってきたもん」
「そう……。……ありがとう、ベクタ。私のために怒ってくれて」
「当然だよ。そいつらはアリサにとって友達かもしれないけど、大切な仲間を傷つけた奴らだから。……それと、ごめん。友達のこと、ボロクソに言っちゃって」
「っ……!ベクタ……。ありがとう。大丈夫よ、今はもう、友達じゃないから」
「そっか」
「ベクタ。……今日は……一緒の布団で寝てみない?」
「へ?布団一枚で?」
「布団一枚で」
「は、入るかなあ」
「くっつけば良いでしょ?」
「はぇ!?く、くっつく!?」
「うん、くっつく。……ダメ、かしら?」
「いやー、そのー……えー……」
女の子にこんなことを言われるなんて初めてである。
何がどうしてそうなった。
俺は今、非常に動揺しています。
「ダ、ダメなら良いけど……」
「いや!……その……お願いします」
何だか妙にかしこまってしまった。
こんな機会、二度と人生で訪れる保証は無いのだ。
ここはお言葉に甘えさせてもらうことしよう。
その晩、俺とアリサは水浴びを終えた後、本当に一つの掛け布団を共有し、眠りについた。
しかし、少なくとも俺は鼻をくすぐるアリサの香りにドキドキしてしまい、一睡も出来なかったのな実情である。
そしてアリサも、俺と同じ理由か、はたまた何か考え事でもしていたのか、眠れない俺のお喋りに付き合ってくれた。
翌朝。
「ふぁぁぁ……。ずっと、起きちゃったわね」
「そうだね……眠い……」
俺達は眠い目を擦りながら、掛け布団を袋にしまい、準備を整える。
未開の領域であるアンネローザ大森林、その奥の洞窟。
果たして、中には何があって、どんな魔物がいるのやら。
大いなる眠気と少しの緊張を胸に、俺達は洞窟の探索を始めるのであった。




