第九話 未踏の洞窟
洞窟の中に入ってみると、思っていたよりも広く、俺とアリサが二人で並んで歩いても幅に余裕ができる程であった。
俺は松明を持ち、アリサは常に剣を構えながら、先へ先へと進んでいく。
中にはヒカリゴケやゲジゲジなど、暗い洞窟にありがちなものが見られた。
「洞窟なんて久しぶりに入るわ……ちょっと怖いかも。……くっついても良いかしら?」
「松明持ってるから危ないよ」
「そ、そう……。そうね。やめておくわ」
どーしちゃったんだろーこの人……。
「アリサ。昨日からどうしたの?」
「どうって?」
「何か……様子が変わった気がして」
「そう?何でも無いわよ?」
「何でも無いかぁ……?」
「何でも無いわよ」
「そっかぁ……」
俺の勘違いだろうか。
様子がおかしいような気がしたのだが……。
「ベクタ!何か来るわ!」
何かがアリサの気配察知に引っかかる。
「アリサ、お願い!」
松明は一本しか無いため、俺が身を引く訳にはいかない。
俺はアリサの後ろに隠れた。
「ええ!【シルヴァスラッシュ】!」
ギリギリまで敵を引きつけ、アリサは「シルヴァスラッシュ」を放つ。
「グゲェーッ!」
その斬撃に巻き込まれ、無惨に命を散らしたのは、一体のゴブリン。
すると洞窟の奥から、ギャーギャーと騒ぐゴブリンの声が聞こえた。
ここはゴブリンの巣窟らしい。
「アリサ、俺も戦うよ!【パワードスーツ】!【ストーンゴーレム】!」
俺は二着のパワードスーツと小型のゴーレムを三体生成する。
二人でパワードスーツに着替えて構えると、奥の奥からゴーレムが十数体やってきた。
「【シルヴァスタブ】!」
「いけっ、ストーンゴーレム!」
アリサが「シルヴァスタブ」で同時に三体のゴブリンを貫き、その勢いに乗って回転切りを繰り出し、さらに四体のゴブリンを葬り去る。
俺はストーンゴーレムに命令を出し、戦闘に参加。
ストーンゴーレム達は手当たり次第にゴブリンの顔面を粉砕した。
そして、アリサとストーンゴーレムが取り逃がした三体のゴブリンは、俺が直接始末する。
生身では一対一でも良い勝負だが、パワードスーツを着れば、三体くらいなら何とかなるだろう。
俺は拳を振り回して二体のゴブリンを殴り飛ばし、こちらへ飛びかかってきた一体は、ヘッドバッドで粉砕した。
「よし!これで大丈夫ね!」
「俺達、息バッチリだね!」
「へっ!?そ、そうね……!」
やはりアリサの反応がおかしい。
「俺、何か変なこと言ったかなあ」
「へ?いや、そんなことは無いわよ?」
「そう?」
「ええ、全然!」
「そうかぁ……」
何なんだろう、このぎこちない感じ。
やっぱり深くまで切り込んだ話をするべきでは無かったのだろうか?
うーん……。
後で謝っておくべきだろうか。
「ベクタ、あれ見て!」
アリサが指差す先には、この洞窟にあるハズも無い、金属製の扉。
明らかに何かが封じられているようで、扉には無数のお札が貼られていた。
「これは……随分と物々しいっていうか……」
「このシール何かしら?切り刻んじゃいましょ!」
「え?ちょっと?アリサさん?」
「【オーロラストライク】!」
しかし、お札が貼られているものの恐怖を知らないのか、アリサはお札を「オーロラストライク」で全て吹き飛ばしてしまった。
明らかに油が足りていないような音を立てて、金属の扉はゆっくりと開く。
「入る、かぁ……」
「ええ!行きましょ!」
やる気満々のアリサを横目に、俺は心配しかしていなかった。
しかし、《《こういう》》場所にこそ、エリクサーは眠っているかもしれない。
俺は慎重に、アリサは元気よく扉の先へ進む。
するとそこには、鎖に繋がれた、紫色の肌をもった、明らかに目覚めさせるべきでは無い、巨大な狼が眠っていた。




