第六話 帰路
ファイヤードラゴン戦の翌朝、俺はアリサに見守られ、テントの中で目を覚ました。
それから俺達は、帰り道を歩きながら話を続ける。
「おはよう、アリサ」
「元気になって良かったわ。昨日はありがとう」
「いえいえ」
「それにしても……圧倒的だったわ……。まだ余韻が抜けないもの」
「そりゃ、ランガルを作った人に感謝だね」
「あのゴーレムは何?見慣れない造りだったけれど……」
「それがさあ……今から話すことは、おとぎ話みたいなものだと思って聞いて欲しいんだけど」
俺は月の女神シン様と話したこと、「前世」の記憶が蘇り始めていること。
そしてレベルが10000に到達し、それはおそらく前世の知識が一部引き継がれたことによって、この肉体における限界以上の力が発揮されているであろうという考察、それら全てを、包み隠さず話してみることにした。
「へぇー。ランガルって、ベクタがベクタになる前の記憶にあったゴーレムなのね。その『シン』っていう神様の名前も初めて聞くわ」
「俺も正直、困惑しててさぁ……妙に実感が湧く記憶ばっかりだから、多分事実なんだとは思うけど……何だか、自分が自分じゃないような感覚なんだよね」
「その『前世』っていうの、私にもあるのかしら」
「さあ?あるかもしれないし、無いかもしれないとしか」
「そう……。もしあったら、どんな私なんだろう」
「いつか、分かるかもね。前世があったら、だけど」
「きっとあるよ。もし無くても、俺がランガルを作れたのは、この世界で頑張ったおかげだし。無かった無かったなりに、現世で信念を貫けば良いと思うよ。好きなものとか、得意なこととか」
「それもそうね」
話しているうちに、俺達はギルドアンネローザ支部へ辿り着く。
ファイヤードラゴンから採れるだけ採ってきた鱗や角をギルドに提出し、ファイヤードラゴン討伐の証拠として認めてもらい、依頼は終了。
金貨が20枚は入った袋を渡され、手切れ金と合わせて、懐が一気に暖かくなるのを感じる。
この世界における金貨は、一枚で前世でいう一万円札のようなものだ。
銀貨は百円玉、銅貨は一円玉といった具合である。
そして銀貨と銅貨には大きいものも存在し、それぞれ大銀貨は千円札、大銅貨は十円玉のような役割を持っている。
つまり、物価は前世とかなり異なるが、単純計算で少なくとも40万円は持っている計算となる。
Aランクの剣士とBランクのゴーレム使いで構成される二人パーティにしては、かなり稼いでいる方になるだろう。
「アリサ。一つ、お願いがあるんだけど……」
「何かしら?」
「明日、アンネローザ大森林に行ってみない?」
アンネローザ大森林。
この辺りは名前がつけられた地域であるにもかかわらず、あまり人による探索が進んでいない地域である。
もしかしたら、この辺りにエリクサーが湧いている場所があるかもしれない。
俺が探しているエリクサーは、自然界において奇跡的に条件が整った湧き水がその名前を冠する「ナチュレエリクサー」。
湧き水に含まれる栄養が万能薬の効果を持つことはまさに奇跡であり、故に入手が困難なのである。
一方、人工的に生み出されたエリクサーである「ベイクエリクサー」も、この世に存在しないことは無い。
しかし、その技術はロストテクノロジーと化して久しく、現在まで保存されているものも、貴重品として扱われていると噂で聞いたことがある。
大方、俺のような一般人には、どこにあるのかさえ分からない程に厳重なセキュリティを敷かれているのだろう。
魔王城であれば、或いは隠されているかもしれない、そう思って、俺は前のパーティで魔王討伐を目指していたのだ。
「アンネローザ大森林……割と近くね。でも、かなり広そう……何日か分の食料と水を用意しておいた方が良いかしら」
「まだ未開の地域も多い森だからね。準備は念入りにしないと」
俺達はギルドの建物内にある売店で準備を済ませ、この日は休むことにした。
そして翌日。
「う~ん!良い朝ね!冒険日和って感じだわ!」
「そうだね。エリクサー……あるといいなぁ……」
俺達はアンネローザ大森林へ足を踏み入れるのであった。




