第五話 ランガル、発進
俺は「前世」で、ロボットアニメを好むオタクだった。
好きなロボットアニメを原作としたゲームの大会で優勝し、そのままメカニックになった日本の人間、それが「俺になる前の俺」だ。
そして俺になる前の俺は、実際の戦争で人型ロボットが導入された時、そのマシンガンから降り注ぐ薬莢に頭を打たれて死んだ。
そうだ、俺はメカニックだ。
ゴーレム魔術を使えば、大好きだったロボットくらい作れるハズだ。
俺は自身を鼓舞し、魔術に全神経を注ぐ。
脳内に出来上がっていくイメージは、あの頃、社会現象にもなったロボットアニメの主人公が乗った機体と、数々の武装。
「出でよ!【ランガル】!」
魔力を使って生成されていくのは、この世界において最も硬いとされる金属であるオリハルコンを擬似的に再現した、オリハル合金。
それを基本の素材とし、一瞬の間に出来上がっていく。
それは、本来この世界に存在しないハズのゴーレム。
もとい、俺が幼い頃から憧れていた、ヒロイックなロボット。
「ガ、ガギャァ……?」
ファイヤードラゴンの注意が、こちらに引かれる。
俺はランガルのコックピットに乗り、ゲームと同じ操縦席に手を乗せた。
「……う、うぅん……これは……?ゴーレム……?」
その隙にアリサは体勢を立て直し、俺の後ろへ退く。
「いくぜ!ランガル、大地に立つ!だ!」
俺はレーザーライフルの照準を、ファイヤードラゴンの腹部に定めた。
「ギャォォ!カァァァァァァァ!」
放たれるブレスは、ランガルにとって何の障害でも無い。
「喰らえ!【レーザーライフル】!」
俺の声に合わせて!レーザーライフルが起動する。
そして、「ボヒュゥゥーーーン!」という音と共に、銃口からレーザーが放たれた。
「ギェァァァァ!」
光線はファイヤードラゴンの腹部を貫き、そのまま後ろの岩肌を焼き払う。
「トドメだ!【レーザーブレード】!」
そして地に落ちていくファイヤードラゴンへ追い打ちをかけるように、俺は刃がレーザーで構成された剣を振り、首と胴体を真っ二つに斬り裂いた。
「す、凄い威力……。これが、Sランクパーティのゴーレム使い……!」
その瞬間、ステータスを記されたウインドウが表示され、「限界突破」と「レベルアップ」の文字が目に入る。
現在、俺のレベルは10000と表示されている。
本来、生物の限界とされていたレベル9999を越え、俺のレベルはとうとう五桁台の10000に突入したのだ。
これは俺の憶測でしかないが、おそらく前世の知識を無理やり現世の肉体に詰め込んだ分がオーバーしてしまい、このようなカタチになったのだろう。
「ふぅ……これで一件落着、かぁ……」
安心して力が尽きたのか、ランガルは魔力を失って消滅し、そのまま俺はコックピットから放り出される。
そのまま落ちていく俺。
しかしアリサが駆け寄り、身体を受け止めてくれた。
「ベクタ!」
「アリサ……。へへ、やったよ、俺……」
「凄かった……!あのカッコいいゴーレム……!光線も、剣も……!」
「良かった……ランガルのカッコよさが分かる人が、この世界にもいて……」
「あのゴーレム、ランガルっていうのね!カッコ良かったわ!強くて、スタイリッシュで……!」
「でしょ……ふぁぁ、ぅ」
ここで、俺の意識は途切れた。
たった今思いついた魔術を、最大出力で使ったせいだろうか。
恐ろしい程の眠気に襲われてしまったのだ。
そして、目が覚めると。
「……おはよう、ベクタ。もう朝よ」
設営されたテントの中で、こちらの顔を覗き込むように見つめる、アリサの顔があった。




