第四話 出撃
「フゴゴゴ……グガァ……」
ラッキーなことに、ファイヤードラゴンは眠っているようだった。
「ツいてるわね……!やっ!」
先手必勝と言わんばかりに、アリサは剣を抜き、突っ込んでいく。
「あっ、ちょっと!」
本来であればパワードスーツを作って着せてあげたかったところだが、俺の声はアリサに届いておらず、アリサはそのままファイヤードラゴンと距離を詰め、高く飛び上がった。
「喰らいなさい!【シルヴァスラッシュ】!」
アリサの剣は銀色に光り、ファイヤードラゴンの首元へ斬撃を叩き込む。
「ヴ……グァ?ファァァ……」
しかし何事も無かったかのように、ファイヤードラゴンは大あくびをしていた。
「そんな……『シルヴァスラッシュ』が通じないなんて……!?」
レベル3000を超えるアリサのスキルをものともしないファイヤードラゴン……もしかしなくても、とんでもなく強い個体なのかもしれない。
「アリサ!一旦退こう!このファイヤードラゴン、多分思ってる数倍は強い!」
「嫌よ!必ず倒すって決めたの!それに、まだスキルは二つある!それだけでも試させて!」
「起きたらヤバいって絶対……!」
「これならどう!?【シルヴァスタブ】!」
続いて繰り出したるは、銀色の光を纏った突き攻撃。
しかしこちらも鱗に弾かれ、まるで通用していないようであった。
「嘘……!」
「アリサ!」
「待って!まだ最後のスキルを試していないわ!」
「いやいやいやいや!絶対このドラゴンヤバいって!」
それでも、アリサは諦めない。
「必殺……!【オーロラストライク】!」
アリサは右脚に魔力を集中させ、首元に飛び蹴りを打ち込む。
「ファァ……。フガッ」
アリサの必殺技と思しき、「オーロラストライク」。
しかし、やはりそれも通用していないようだった。
アリサは決して弱くない。
そのハズなのに、どのスキルもノーダメージであると言わんばかりに、ファイヤードラゴンは再び大あくびをした。
しかし、その際に鼻ちょうちんが破裂したことが原因か、ファイヤードラゴンは遂に目を覚ます。
「アリサ!離れて!」
「へ?」
「グゥゥゥ……グガァァァァォォォォォン!!!」
「きゃぁぁぁぁっ!」
アリサはファイヤードラゴンの咆哮による風圧で怯んでしまい、動けない。
「アリサ!アリサ、戻ってきて!」
「ええ、今戻る……」
アリサが俺の元へ戻ってこようとバックステップをしようとするが、そこで黙っているファイヤードラゴンではない。
「グゥァァァ!」
「ぎゃっ……!」
振り回した尻尾が彼女の胸に直撃。
「アリサ!」
そのまま勢いよく、アリサの身体は岩肌に叩きつけられた。
「が、は……」
彼女は力なく、その場に横たわる。
レベル3000を超える彼女を一撃で動けなくできる程のモンスター。
おそらく、推定レベルは5000程度。
人間のレベル6000なら俺だけでもどうにかできないことは無いが、ファイヤードラゴンのレベル6000は、追放前の四人パーティでようやく倒せるくらいである。
どうする、俺。
ここでアリサを置いて逃げる訳にはいかない。
かと言って、俺がどうにかできるでも無い。
パワードスーツを着て動いたところで、元々肉弾戦が強い訳ではない俺の力は高が知れている。
俺の力は前衛がいてこそ発揮されるものであるが故に、その前衛と連携が取れていない以上、実質的な俺の実力はレベル9999とは程遠いものになってしまっているのだ。
何とか、何とかする方法は無いか。
ファイヤードラゴンは、今にもアリサに向けて炎を放とうと口内に炎を溜めている。
「とりあえず……出てこい!【ストーンゴーレム】!」
俺は巨大な石の人形を作り出し、ファイヤードラゴンの注意を引かせる。
「グァァァァァ!」
しかし、ついでのように振り回した尻尾で、あっけなく破壊されてしまった。
尚も注意はアリサに向いたまま。
何とか、何とかしなければ。
「ああ……どうしよう、どうしよう……!」
「ギャァォォ……」
ファイヤードラゴンがブレスを吐かんと、遂に息を大きく吸った、その時。
時間が止まったように、全ての動きが《《スローモーション》》のように見えた。
すろー……もーしょん……?
妙に引っかかる、聞き覚えの無い、しかし脳をよぎった単語。
その瞬間、シン様が言っていた「ゼンセ」の記憶らしきものが、断片的に蘇った。
その中で目の前に映っていたのは、ヒロイックな見た目をしたゴーレムのようなもの。
前に見た記憶の断片では、ロボットと言われていた。
名前は……「駆動騎士ランガル」。
続けて見えた記憶。
そこには、《《量産機》》である「ガルバット」が、目の前でマシンガンを撃つ景色。
その薬莢が脳天に降り注ぎ、意識を失う瞬間。
俺は封じられていた、本来触れるべきではない思い出したのだった。




