第二話 ステータス
俺とアリサは冒険者ギルドを出て、近くの広場へ向かう。
「じゃあ……それぞれ、お互いの《《ステータス》》を後悔しようか」
「いいわよ。私のステータスはこれね」
と言ってアリサが見せてきたのは、空間に投影された、「|個人の能力を示す数字と文字の羅列」。
能力を数値化した際における、総合的な目安となる数値、通称《《レベル》》は3141。
筋力や運動神経の高さは勿論、まだ若いというのに、剣術の熟練度もかなりのものである。
そして、「魔術」や「スキル」を使うためのリソースである「魔力量」も、そこそこ高い。
また特殊な技を持っていることを示す「スキル」の欄には三つの技が光っている。
さらに、「パッシブスキル」という身体や精神が特殊であることを示す欄には、「気配察知:C」という、気配に敏感な体質であることを示す文字列が並んでいた。
一方で魔術の出力を示す「魔導出力」はそこまで高くないようだ。
故に魔術師向きではなく、前線に向いたステータスに仕上がるよう、近接戦闘向けのトレーニングを積んできたことが伺える。
「すご……」
「どう?求人票に書いたから知ってると思うけど、私は剣士なの。さ、貴方のステータスも見せて?」
「ああ……はーい」
そう言って、俺もステータスを空間に投影し、アリサに見えるように向きを変える。
すると、アリサはいきなり目を丸くして、俺の顔を見た。
「9999……!?」
「うん。多分上限なんだよね、9999って。俺はこれ以上成長できないみたい」
多少の知識増加や筋肉の増減などはともかく、何かを大きく削ってレベルを下げない限り、これ以上目覚ましい成長はできない。
魔術師としての能力は上限に達しているものの、現状、俺はその能力の高さを活かせずにいた。
しかし、これ以上能力が上がらない以上、スキルの少なさを力で補うにしても、限界がある。
それがレベル9999に到達した者の宿命であり、故に俺はパーティを追われてしまったのだろう。
「レベル9999なのに仲間がいないなんて、珍しいわね」
「クビになっちゃったんだよね、俺」
「あら……それは……良くないことを聞いてしまったわね、ごめんなさい」
「いいって。それに俺の場合は能力がゴーレム魔術と、それを支える技術にばっかり偏ってたから、冒険者としてやっていくには不向きだったみたいなんだよ」
レベル上限にもなって、肉弾戦はその辺の冒険者より少し強いくらい。
得意のゴーレム製作の魔術も、チームメンバーには要らないと切り捨てられてしまった。
最大レベルという事実を踏まえて俺を見ると、「これ以上成長することさえできない、どうしようもない奴」なのが恥ずかしいところである。
「へぇ~……。あっ、確かにゴーレム魔術に使いそうな部分のステータスだけ凄い高い」
「でしょ?」
「じゃあ、何で貴方は冒険者をやっているの?」
ゴーレム作りが得意なら、ゴーレム職人をしていた方が良いんじゃないかとでも言いたげな表情で、アリサはこちらを覗く。
俺はそれに対して、妹の病気を治すためにエリクサーを探しているのだと返すと、アリサはまたしゅんとした表情になってしまった。
「ま、そういう訳で、俺はエリクサーを探すために冒険者をやってるんだよ」
「へぇ~……。じゃあ冒険、頑張らないとね」
「うん。だから、改めてよろしく」
「ええ。よろしくお願いするわね」
妙に大人びた目の前の少女は、こちらに右手を差し出してくる。
俺も合わせて右手を差し出し、強く握った。
ここで突如、脳に妙な記憶が流れた。
《《ロボットゲーム》》の大会、その決勝戦。
試合に勝利した俺は、《《コックピット型》》の操縦席から出て、対戦相手と握手をする。
《《画面》》には《《巨大なロボット》》が写り、かつて俺だったハズの人間が、お守り代わりに持ってきた《《プラモデル》》を片手に、ステージを去っていく。
俺の背中にはただ、歓声が降り注いでいた。
どれも聞き慣れない単語であるハズなのに、すんなりと脳で理解できる。
「……ハッ」
「どうしたの?三十秒くらい、口を開けて固まっていたけれど……」
「いや、何か……変な記憶を思い出したんだよね」
「あら、そう……。何かあったら言って頂戴ね。私で良ければ話聞くわ」
「そんな、良いの?」
「良いに決まってるじゃない。私達、もう仲間でしょ?」
「……うん」
それから俺達は二人で宿に泊まり、夜を越える。
……この言葉に、特に深い意味は無い。
そして翌日、早速旅へと出るのであった。
エリクサーを探し、妹を救うために。




