第十八話 怪鳥の巣
二週間後。
「おはよう、メリア。もう体調は大丈夫なのか?」
「うん!結構かかっちゃったけど、無事に治ったよ!ありがとう!」
すっかり元気になったメリアを連れ、宿酒場の主人へ礼を言った後、俺達は町を出ることにした。
町はすっかり活気を取り戻し、深かった霧もすっかり晴れていた。
宿酒場の主人以外に誰が褒めてくれる訳でも無いが、しかし、こうして町の活気が戻ったところを見ると、冒険者として仕事をすることのやり甲斐を感じるというものだ。
メクジラ町を出た俺達が次に向かうは、メクジラ町から少し北に位置する「オオクリ村」。
メリアの邪気は祓われたように見えるが、念のため、教会の人に見てもらうことにした。
そしてオオクリ村には、優秀な僧侶がいるそうであり、俺達はその僧侶を探して、旅に出る。
シン様の予言が正しければ、メリアの寿命はあと二週間。
問題の邪気は祓われたように見えたが、シン様から直接メリアの運命が変わったことを宣告されていない以上、まだ懸念点が無くなったとは言えない。
不安の種は、きっちり取り除いておかなければ。
メクジラ町の門をくぐり、オオクリ村へ向かうため、俺達はメクジラ街道を進む。
行商人や運送に携わる者も多く、旅の者同士、交流は欠かせないものだ。
「へー、あっちの方、今荒れてるんですね」
「そうなんですよ。ついこの前から、オオクリ村付近で『ダイバード』の巣ができたとかで……えらい遠回りをさせられてしまいました」
今話している人は、オオクリ村へ行商をしに行く予定だったらしい。
しかし「ダイバード」という魔物が付近に住み着いたことの影響を受け、急遽目的地をメクジラ町に変更したそうである。
「通行止めだったりします?」
「ええ。今は村も孤立していて、大変みたいですよ」
「マジですか」
「冒険者の方々。腕に覚えがあるなら、ダイバードの駆除をお願いしますよ。報酬は、ギルドのオオクリ村支部に行けばもらえるハズです。ギルド直々に冒険者を募集していたようですから」
「そうなんですか。もし見かけたら、何とかしてみますよ」
「ありがたい……無理にとは言いませんので、ぜひ、よろしくお願いします」
オオクリ村へ入る前に、どうやら俺達は「ダイバード」という魔物を倒さなければならなくなってしまったようだ。
ダイバード。
ただの大きい鳥型の魔物として知られており、巣の近くを通りがかった人に対して敵対的な行動をとるそうだ。
大きな羽を使って風を起こしたり、鋭いくちばしで荷物を壊したりと、被害報告は様々らしい。
遭遇さえしなければ放っておいても問題無いのだろうが、しかし村が孤立しているとなると、おそらく村へ入るために必要な道の近くに巣が出来ていると考えるのが妥当だろう。
それは即ち、オオクリ村へ入るためにはダイバードを駆除しなければならない、ということになる。
このままメリアを放っておくのも心配だ、せっかくなら、そのダイバードとやらの駆除にも協力するとしよう。
それから三日後。
俺達はダイバードが多く目撃されている地域へと足を踏み入れた。
空を見ると、確かに怪鳥の姿がいくつもある。
「【ランガル】。【レーザーライフル】」
俺はランガルを生成して乗り込み、空を飛び回るダイバードに狙いを定めてレーザーライフルを発射する。
一羽、撃墜。
しかし、それに気付いた他のダイバードは、こちらをかく乱するように飛び回り、弾速が速いレーザーライフルでも、狙うことが困難になってしまった。
「【ギガロビーム】!」
メリアも地上から狙い撃とうとしているようだが、やはり上手く狙えないのか、太いビームは怪鳥達の横を通り過ぎていく。
ここで、あまりにもこちらがちょっかいをかけるものだからと、ダイバード達は高度を落とし、こちらへ距離を詰めてきた。
しかし、奴らが距離を詰めることは、こちらにとっても好都合だ。
「【低反動バルカン】!」
俺は頭部に隠されたバルカン砲を構え、対空砲の要領で発射。
ビームは避けられてしまったが、弾数が多いバルカンは避け切れなかったのか、何羽かのダイバードは、そのまま大穴が空いた身体で地上に落ちていった。
俺のバルカンをすり抜けて地上近くまで降りてきたダイバードは、「ギガロビーム」を撃ったことで目立ってしまったのか、メリアを狙って突撃する姿勢に入る。
「はっ!」
「させんぞ!」
しかし、アリサとぺグリルがそれを許さない。
アリサは滑空するダイバードの進路を阻むように飛び上がり、大上段から一刀のうちに斬り伏せる。
そしてぺグリルはメリアの側に立ち、突撃してくるダイバードの胴体を爪で切り裂いた。
こうして俺達は、辺りのダイバードを一掃した。
しかし、肝心の巣をまだ見つけられていない。
このまま放っておけば、またすぐに大量発生して問題になるだろう。
俺達は巣を探して、林道を抜けていく。
すると、「クワーッ、クワーッ」という、おそらく鳥類のものであろう鳴き声が聞こえた。
鳴き声に引き寄せられるがまま、その先へ向かうと、そこには数十羽のダイバードと、こんもり盛られた草木で造られた巣があった。
これを駆除するのは少し可哀想な気もするが、村が孤立するレベルの被害が出ているのだ、仕方がない。
そして何より、こいつらはメリアを狙ったのだ。
個人的に、許しておくものかという思いである。
「【レーザーライフル】!」
俺はレーザーライフルを構え、巣を狙って撃つ。
それと同時に、ダイバード達がこちらへ一斉に突撃してきた。
「【ギガロビーム】!」
「【低反動バルカン】!」
それに合わせて、俺はバルカンで、メリアは「ギガロビーム」で迎撃。
数十羽もいたダイバードは、あっという間に塵と化してしまった。
「これで一件落着、かしら」
「そのようじゃのう。良くやったぞ、我が主人とメリア」
「うんっ!お疲れ様、お兄ちゃん!」
「お疲れ、メリア」
俺は残っていたダイバードの生首を持ち、駆除完了の証拠品として持っていくことにした。
それから二時間後。
俺達は名の知れた僧侶がいる、オオクリ村へ到着したのであった。




