第十七話 メクジラ湖の怪竜
「お兄ちゃん、あれ!」
メリアが前を指差す。
俺達は何とか霧の中を抜けてメクジラ湖へ辿り着いたらしく、すっかり霧が晴れた湖が目の前に姿を現していた。
町から霧が晴れた様子は見られない。
霧が晴れているのは、メクジラ湖だけのようである。
「これがメクジラ湖……水質が……終わってる……」
綺麗な湖だと聞いていたが、水面を見てみると、コケやヘドロがあちこちに見られ、とても綺麗とは言えない様子であった。
「汚ったないのう。管理はどうなっておるんじゃ管理は」
「目撃情報によると、この下に海竜がいるのよね。でも……こっちの都合に合わせて出てきてくれるものかしら」
「それなんだけど……良い方法があるんだ。【ランガル】」
俺は「ランガル」を生成し、コックピットへ乗り込む。
「わあ……でっかい……」
「メリアは初めて見るんじゃったかのう。見よ、これが其方の兄の、真の力じゃ」
「【レーザーライフル】!」
そしてレーザーライフルを構え、湖底めがけて撃った。
すると、レーザーが通った地点の水が一瞬で蒸発し、すぐさま水の流れが湖底に向かって沈み込むように変わる。
「ゲヒャォォォォォン!」
それと同時に、流れる水を掻き分け、大きな水竜が姿を現した。
「出たわね、海竜……!」
「【レーザーライフル】!」
「ゲァァァ……」
俺はすぐさまレーザーライフルを構え直し、一発。
桃色の光線は胴体に大穴を開け、海竜はそのまま湖の下へ落ちていく。
「これで一件落着……かしら……?」
しかし、手応えが無い。
すると、湖底の水が流れを変え、ヘドロやコケが集まり、海竜の死体に集まったそれは、みるみる巨大な人型の実体を形成していく。
「ウォォォォォォォン!」
目の前に現れたのは、タコのような、ドラゴンのような、様々な動物の特徴を持つ巨人。
俺達の脳は、まるで目の前にいる存在を理解することを拒否するかのように、掻き乱される。
「……う……あ……!」
「何じゃ、此奴は……!」
「う……何なの、これは……!」
「怖いよぉ、お兄ちゃん……!」
「グゥゥゥ……ウォォォォォォォォン!」
仮に邪神とでもしておこうか、これが海竜の真の姿なのだろうか。
目の前にいるそれは、雄叫びをあげてランガルの胴体を殴りつけた。
「うわぁぁ!」
流石のランガルでも、質量の暴力を活かしたパンチはそれなりに効いたらしく、コックピットまで揺れが伝わってくる。
「ゥゥゥ……ガァッ!」
そして、邪神はすぐさま水の底に潜り、水中から邪気が込められたヘドロを飛ばし始めた。
「きゃっ!」
「メリア!」
それを浴びてしまったメリアは、シン様の予言通り、邪気にやられたのか、その場に横たわってしまう。
「わ、私なら、大丈夫……早く、目の前の奴を倒して……!」
「分かった!」
何とかして、水中でも役に立つ機体を作り出さなければ。
俺は両手に魔力を込め、ランガルを水中用装備へ換装しようとする。
しかし、何も起きない。
何故だ。
確かに「駆動騎士ランガル」の番外編には、「水中型ランガル」という機体のデータがあったハズだ。
しかし、イメージの中でランガルをどう換装しようとしても、何故だかパーツが噛み合わないのだ。
「ベクタ、どうしたの!?」
「水中用の装備に切り替えようとしているんだけど、何だか上手くいかなくて……!あっ!」
「えっ、何!?大丈夫!?」
また一つ、思い出した。
確かに作中には、「水中型ランガル」という機体は存在する。
しかし水中型ランガルは、ランガルをベースとした機体ではなく、ランガルの量産型である「ギル」の水中用モデルである「ブルー・ギル」の改良タイプだったのだ。
「大丈夫……!思い出した!俺の新たなる力!出でよ!【水中型ランガル】!」
イメージの中で、確かにパーツのパーツが噛み合った。
俺はオリハル合金ではなく、チタン合金を魔力から擬似的に生成し、機体を組み上げる。
そして出来上がったのは、紛れもない「水中型ランガル」。
ランガルの名を冠しておきながら、系統としてはギルの血筋にあたる、頭部だけがランガルの機体。
俺はそれに乗り込み、水中へ飛び込む。
「グォォォグゥゥゥ……!」
「お前はここで殺す!メリアとこの町のためだ、悪く思うなよ!」
「グァァァァァ!」
写真は大口を開けて、こちらへ突撃する。
腹部を食い破るつもりなのだろう。
しかし、こちらは未来のロボットだ。
負ける訳が無い。
「【徹甲魚雷】!」
ポッドから放った四発の魚雷が、邪神の四肢を削り取っていく。
「ゴワァァァァ!」
「トドメだ、喰らえ!【水中用レーザーライフル】!」
水中でもレーザーの威力が減衰しないよう、特殊な加工を施されたレーザーライフルを構え、一発、二発、そした三発目の光線を放った。
「グゲ、ガァ……!」
それぞれレーザーは頭部、胸部、腹部に大穴を開ける。
邪神はこちらに一矢報いようと手を伸ばすが、それも敵わず、その場にプカプカと浮くばかりになってしまった。
俺はすぐさま地上めがけてブースターを吹かせる。
「メリア!大丈夫か!」
そしてメリアの元へ駆け寄り、容態を確認した。
「う、うん……でも、ちょっと……具合悪いかも……」
「無理もないよ、ちょっと前まで寝たきりだったんだから……ほら、俺がおぶってやるから、背中に捕まって」
「うん……ありがと、お兄ちゃん。……大好き」
俺が見てみる限り、メリアに放たれた邪気は、邪神を倒したことで消えているようであった。
しかし、そもそもヘドロに込められていた雑菌が悪さをしたのか、メリアは体調を崩してしまったようだ。
俺達はすぐさま宿酒場へ戻り、延泊を申し出る。
主人に海竜と邪神を倒してきたことを伝えると、彼は大いに喜んでいた。
俺達の宿と食事代はしばらく無料にしてくれるそうだ。
メリアの体調も良くないのだ、こういう時はお言葉に甘えるとしよう。
こうして、俺達はしばらく宿屋に泊まり、メリアの体調が良くなるまで看病を続けたのであった。




