第十六話 衝撃の事実
「そんな、そんなことって……!」
「仕方がない事なんです。運命なので……」
「抗う術は、無いんですか」
「無いことも無いですが……」
「教えてください!」
メリアはやっと、長く患っていた病気から解放されたのだ。
それなのに、あと一ヶ月で死んでしまうなんて、可哀想でならない。
そして何よりも、俺は大切な妹を失うという事実に耐えられそうに無い。
ここで俺が運命を受け入れる訳にはいかないのだ。
「……貴方の妹さん、メリアさんは……邪気に蝕まれて死にます」
「邪気っていうのは……?」
「その名の通りです。メクジラ町は現在、私にも分からない邪気に蝕まれています。貴方達がそのまま出て行った場合、メリアさんはこれから起こるであろう《《何か》》をきっかけに、邪気をその身に宿し、それに蝕まれて死んでしまうのです」
「じゃあ、その邪気を何とかすれば……」
「救えると思います。邪気を払うか、そもそもメリアさんがそれを浴びることが無ければ、メリアさんは一ヶ月後に死ぬという運命から逃れられる訳ですから」
「分かりました。ありがとうございます!いろいろ教えて頂いて!」
「いえ。せっかく、メリアさんの寿命を伸ばしたのですから。ちょっとしたオマケのようなものです。レベル10000に到達した、人間の限界を超えた貴方なら……未来を、閉ざされた運命を変えられるかもしれません」
「変えてみせます。妹のために……そして何より、妹を失いたくない、俺のために!」
真っ暗だった景色の中に、少しずつ光が差してくる。
「そろそろ、お目覚めの時間のようですね」
「もう朝ですか。……じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
そして俺は、使命を胸に目を覚ます。
「うぅ~ん……?」
目を開けると、そこには渦中の存在、メリアの顔があった。
「あっ、おはよう、お兄ちゃん」
「……っ!おはよう、メリア!」
俺は目の前の、運命に死を定められた妹を抱きしめる。
「お、お兄ちゃん……?どうしたの、お兄ちゃんの方から抱きしめてくるなんて、珍しいね」
「いや……ちょっと……目の前にメリアがいるのが、すごく……嬉しくて……!大切で…!」
「お兄ちゃん、泣いちゃってるよ?悪い夢でも見た?」
俺は気付いたら泣いてしまっていたようであった。
悪いのは夢では無い。
むしろ、今の現実だ。
何とかして、現実が悪い夢になってしまわないよう、メリアを助けなければ。
「何かあったようじゃの、我が主人よ」
「うん、ちょっとね……」
「さ、今日は調査の予定だったわよね。早速、表に出ましょう。昨日の状況が変わっているかもしれないわ」
「そうだね。行こう」
俺は涙を拭い、皆と町へ出る。
一ヶ月後にメリアを殺す邪気をばら撒く存在が、この町にはいるハズだ。
俺達は町を歩き、調査を続ける。
しかし、町を歩く人に話しかけようにも、虚な目でブツブツと何かを呟きながら歩くのみで、こちらの言葉には反応すらしていないようであった。
宿や店などもほとんど鍵が締め切られており、それこそ空いているのは、俺達が泊まっていた宿酒場くらいのようだ。
昼頃。
俺達は宿酒場へ戻り、店主に話を聞いてみることにした。
「……近頃、妙な噂を聞いたんです」
早速、店主が口を開く。
「妙な噂?」
「最近、メクジラ湖で巨大な海竜のようなものが目撃されたそうなんです」
「巨大な海竜とな」
「その魔物が何かしている、と考えるのが妥当かしら」
「それから、町の皆がおかしくなっていって……霧も深くなって、もう外に出ることさえ一苦労なんです。最近は商人が迷ったとかで仕入れも上手くいかず、食材もギリギリでやってるんですよ……」
「そんな事情があったんですか……」
「お客様がた、冒険者ですよね」
「はい、そうですけど……」
「お願いします。あの海竜を……何とかしてくれませんか」
「依頼料はいくらになりますか?」
「金貨10枚でいかがでしょう?」
「よし、その依頼、受けましょう。ちょうど、俺達もこの町の状態を何とかしようと思ってたんです」
「ありがとうございます!霧が深い、生臭い、人もいないの状態では、商売あがったりだったので……助かります」
そう言って、店主は俺達の前にフィッシュパイを差し出した。
「あれ、食材ギリギリだったんじゃなかったんですか?」
「これはサービスのようなものです。この町を救ってくださる方々が目の前にいらっしゃるんです、ケチってなんかいられませんよ!」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
それから俺達は机を囲んでフィッシュパイを食べ、午後の探索に出かけた。
目的地はメクジラ湖。
海竜を倒すべく、俺達は腹を膨らませて向かうのであった。




