二十五話 古代図書館
数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。
拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。
二十五話 古代図書館
ギルドとの正式な協力関係が結ばれ、アステリアの街に平和な活気が戻った数日後のこと。
僕の『叡智のオーブ』に、ギルドマスター・モーガンからの「緊急かつ極秘」のクエスト依頼が舞い込んできた。
「拓海くん、これを受けてくれるのは君の一家しかいない。……失われたはずの『古代図書館』の扉が開いたんだ」
場所はアステリアから遠く離れた、霧に包まれた絶海の中央。
どうやら先日の『スカイホエール』の騒動で世界の魔力潮流が変わり、海底に沈んでいた古代文明の遺跡が活性化したらしい。
「古代図書館か……。そこに行けば、前世の知識を超えるような『新しい魔法理論』が見つかるかもしれないね」
僕が設計図を広げると、家族が集まってきた。
「海の底!? 素敵じゃない、拓海。次は人魚さんに会えるかもしれないわね」
母さんは早くも「水中用のドレス」をアイテムボックスから選び始めている。
「俺は深海の魔物と戦えるのかと思うと、腕が鳴るぜ!」
大樹兄さんが拳を合わせ、火花を散らす。
「深海……。光の届かない場所ですね。拓海様、私の『隠密用超音波ソナー』の技術を、家の外壁に移植しましょうか」
カレンさんも、すっかり一家の専属技師としての自覚に溢れている。
「よし、みんな。シートベルトを締めて。……チャチャ、空間の密閉をお願い」
「了解。タクミ。ボク。お水。絶対。入れない。バリア。全開」
チャチャが鈴を鳴らすと、家の周囲に強力な「撥水空間」が展開された。
重力石の極性を反転させ、浮遊から「潜行」へと切り替える。
空飛ぶ家はゆっくりと海面に降り立ち、そのまま飛沫を上げて青い深淵へと潜っていった。
窓の外には、地上の常識を覆す光景が広がっていた。
自ら光を放つ巨大なクラゲの群れ、沈没船を根城にする極彩色の魚たち。
「見て、パパ! あの魚、鱗が真珠でできてる!」
真央姉さんが窓に張り付いて目を輝かせている。
だが、目的地である古代図書館の入り口には、巨大な「門番」が待ち構えていた。
それは、数千年の間、知識を守り続けてきた伝説の魔導生物、『リバイアサン・クラーケン』。
絡み合う十本の触手が、深海の闇の中で怪しくうねっている。
「拓海、あいつ……攻撃してくるつもりだぞ」
父さんが魔剣に手をかける。
だが、僕はクラーケンをスキャンして、意外な事実に気づいた。
「待って、父さん。あいつ……ただお腹を空かせて、イライラしてるだけだ」
「カレンさん、外壁の一部を『熱伝導調理プレート』に切り替えて。母さん、アイテムボックスから『特製大盛りペペロンチーノの素』を出して!」
僕たちは戦う代わりに、家の外壁を利用して、深海の海水で茹で上げた特大の「魔導パスタ」を海中に放出した。もちろん、水中でバラバラにならないよう、真央姉さんの魔法でひとまとめに包んである。
ニンニクと唐辛子の刺激的な香りが、魔法の泡に乗ってクラーケンの鼻先(?)へと届く。
「……!?(なんだこの、脳を直接揺さぶるような香りは!?)」
クラーケンの触手が止まった。
彼は恐る恐るパスタを口に運び……次の瞬間、全身の色が喜びでピンク色に変わった。
「これ。おいしい。おじいちゃん。クラーケン。もう。怒ってない。ボクと。お友達」
チャチャが窓越しに肉球を当てると、巨大なクラーケンは大人しく道を譲り、まるで忠犬のように家の横を並んで泳ぎ始めた。
クラーケンの案内で辿り着いたのは、海底の気泡の中に保存された、白亜の図書館だった。
「さあ、お宝探しを始めようか」
僕たちは、クラーケンに見守られながら、失われた知識の宝庫へと足を踏み入れた。
そこには、僕の『叡智のオーブ』さえも驚愕するような、世界の根源に触れる「魔法の真実」が眠っていたのだ。
「拓海、これを見て……。前世とこの世界を繋ぐ、ヒントがあるかもしれないわよ」
母さんが手にした一冊の古文書。
僕たちの異世界冒険は、美味しい料理と最強の家族の絆を武器に、ついにこの世界の「核心」へと迫り始めていた。
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