二十二話 究極のスイーツ
数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。
拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。
二十二話 究極のスイーツ
スカイホエールのBBQパーティーが一段落し、天翼族の里に穏やかな午後の光が満ちていた。
脂の乗ったお肉の後は、やっぱり「別腹」が必要だ。
「拓海、見て! 天翼族の長老からお礼にって、こんなに立派な『天空苺』をいただいたわよ」
母さんが抱えてきたのは、一粒がリンゴほどもある、真珠のような光沢を放つ真っ赤な苺だった。空の高い場所で、純粋な魔力と雲の水分だけで育つという伝説の果実だ。
「これ。ボク。知ってる。すっごく。甘い。でも。ちょっと。酸っぱい。お菓子に。ぴったり」
チャチャが期待に胸を膨らませて、苺をクンクンと嗅いでいる。
「よし、じゃあカレンさんとリ口ちゃんも手伝って。これを使って異世界の究極スイーツ……『天空苺の魔法パフェ』を作ろう!」
工程1 重力制御のホイップクリーム
まず、アイテムボックスから秘蔵の「魔導牛の生クリーム」を取り出す。
「カレンさん、重力制御をお願い。気圧を0.8に下げて、一定の振動を与えて。手で混ぜるより、キメが細かくなるんだ」
「お任せください、拓海様! 帝国の振動暗殺術、今ここでクリームの泡立てに全力を注ぎますわ!」
カレンが精密な魔力振動をボウルに送り込むと、一瞬でシルクのような滑らかなホイップが完成した。
工程2 苺の細胞活性化
次は僕の番だ。叡智のオーブを使って、苺の細胞一つひとつに魔力を浸透させる。
「真央姉さん、冷気で表面だけをミリ単位で凍らせて。食感を『サクッ』と『ジュワッ』に分けるんだ」
「了解! ダイヤモンドダスト・コーティングね!」
真央姉さんの繊細な風魔法が、苺を美しくクリスタル状に整えていく。
工程3 盛り付け
リ口ちゃんが、母さんに教わりながら慎重に盛り付けを担当する。
「リ口、そこは重力石の端材で作った『浮遊ソース』をかけて。苺がグラスの中で浮いて見えるようにするのよ」
「はい、ママさん!……わあ、綺麗……宝石みたい」
完成したのは天空苺の魔法パフェ。
出来上がったのは、何層にも重なる赤と白のコントラストが美しい、空の上でしか作れない芸術品だった。
一口食べれば、苺の濃厚な甘酸っぱさが弾け、その後に重力制御でふわふわになったクリームが舌の上で溶けていく。
「幸せ……! 前世のデパ地下スイーツなんて目じゃないわね」
母さんがうっとりと目を閉じる。
天翼族の長老も、初めて食べるパフェに震えていた。
「な、なんだこの多幸感は……。スカイホエールで満たされた胃袋の隙間に、神の慈悲が入り込んでくるようだ……」
「タクミ。ボク。おかわり。苺。もっと。のせて。山盛り。希望」
チャチャは顔中をクリームだらけにして、幸せの絶頂にいた。
スカイホエールの件で完全に戦意喪失していたヴァルガン宰相の元に、僕たちが転送した「焼きクジラ」と「苺パフェの試作品(保存用)」が届いていた。
「……う、美味すぎる。なんだこれは。我が帝国の宮廷料理人がゴミのようだ」
ヴァルガンはパフェを一口食べるごとに、野望という名の毒が浄化されていくのを感じていた。
「……将軍、もういい。あの家族を攻撃するのはやめだ。これからは『定期購入』の交渉に行かせろ。帝国全土の予算を、彼らの『おやつ代』に充てる」
「は、はい!?」
武器では屈服しなかった帝国が、ついに苺の甘みによって「顧客」へと変貌しようとしていた。
僕たちの異世界生活は、美味しいスイーツと共に、世界を平和へと導き始めていた。
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