十四話 アイテムボックスを作ろう
数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。
拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。
十四話 アイテムボックスを作ろう
お風呂で心身ともにリフレッシュした翌朝、僕たちはある「物理的な限界」に直面していた。
「拓海、昨日持ち帰ったドラゴンの残りの肉と、重力石の予備パーツ、それに母さんが買ってきた冬物の衣類……もう物置がパンパンよ」
母さんが困り顔で、今にも荷物が溢れ出しそうなクローゼットを指差した。
そう、この世界には「魔法の鞄」は存在するが、容量が少なかったり、中の時間が止まらなかったりと、性能がいまひとつなのだ。
「よし、それなら『家族共用型・超空間ストレージ』を作ろう」
僕は重力石の欠片と、チャチャの「空間凍結」の力を応用した新しいデバイスの設計を開始した。
今回のコンセプトは、個々が持つのではなく「一つの空間を家族全員で共有する」ことだ。
空間拡張 重力石のエネルギーで、内部にサッカー場一つ分の空間を確保。
時間停止 チャチャの能力を回路化し、中の物の鮮度を永久に保つ。
自動整理 叡智のオーブによる検索機能。念じるだけで欲しいものが手元に。
大樹兄さんに、流体魔鋼を薄く引き伸ばしてカード状の端末を五枚作ってもらった。
「これ、ただのカードにしか見えないけど、本当に中に入るのか?」
兄さんが半信半疑で、手近にあった巨大な鉄の訓練用ダミーをカードにかざす。
シュンッ!
一瞬でダミーが消え、カードの表面に『訓練用ダミー×1』という文字が浮かび上がった。
「うおっ! 重さも全然感じないぞ!」
「これなら、お買い物も楽ちんね!」
母さんが喜んで、早速キッチン中の食材を収納していく。
「拓海、これって……離れていても中身を共有できるのか?」
父さんの鋭い指摘に、僕は頷いた。
「そうだよ。例えば父さんが遠征先で手に入れたレア素材をボックスに入れれば、家のキッチンにいる母さんがすぐにそれを取り出して料理できるんだ」
「それ、最高じゃない!」
真央姉さんが目を輝かせる。
「私が街で見つけた珍しいスイーツを入れれば、お家で待ってるチャチャがすぐに食べられるってことだもんね」
「ボク。おやつ。いつでも。食べられる。タクミ。天才。神様。仏様。タクミ様」
チャチャが僕の足元でゴロゴロと喉を鳴らし、尻尾で僕の足をぺしぺしと叩いた。
アイテムボックスの完成により、僕たちの機動力は飛躍的に向上した。
重い荷物を持つ必要がなくなり、食料の腐敗も気にしなくていい。
さらに僕は、このボックスに「緊急脱出機能」を組み込むことを思いついた。
万が一の時、家族をこの亜空間に一時的に避難させ、重力石の推進力で空間ごと転移させる……。
「便利になればなるほど、やりたいことが増えるね」
僕は、カードを家族一人一人に手渡した。
「さあ、これで準備は万全だ。荷物の心配がなくなったところで、次は家をもっと空に近い場所に浮かせてみようか?」
僕の提案に、家族全員が「また始まった」と言わんばかりの苦笑いを浮かべた。けれど、その瞳には新しい冒険へのワクワクが宿っていた。
アイテムボックスという名の「無限のポケット」を手に入れた僕たちは、異世界の常識をまた一つ、軽やかに塗り替えていく。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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