十三話 お風呂を作ろう
数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。
拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。
十三話 お風呂を作ろう
ドラゴンの肉を堪能し、重力石という究極のエネルギー源を手に入れた僕たちには、次に解決すべき「異世界転移者最大の課題」が残っていた。
それは、お風呂だ。
この世界の風呂は、魔法で出したお湯を桶に溜めるだけの質素なものか、貴族が香油を混ぜて浸かる豪華だが機能性に欠けるものしかない。
「拓海、そろそろ……前世のような、あの肩まで浸かって『極楽だ〜』って言えるお風呂が恋しいわ」
母さんの切実な願いに、家族全員が深く頷いた。
僕は庭の地下を掘削し、重力石を動力源とした「多機能循環式魔導風呂」の建設を開始した。
熱源 父さんの魔剣からフィードバックした火属性魔導回路。
水質 真央姉さんの風と水の複合魔法による、超微細気泡発生装置。
動力 重力石による水圧制御。打たせ湯やジェットバスも思いのままだ。
大樹兄さんが身体強化を使って一気に岩盤を削り、僕はそこに流体魔鋼を流し込んで、滑らかで美しい浴槽を作り上げた。
数日後、完成したバスルームは、異世界の常識を遥かに超えていた。
壁面は魔力で発光する幻想的な鉱石で彩られ、真央姉さんが精霊の森で摘んできた香草の香りが満ちている。
「チャチャ、一番風呂、行ってみる?」
僕が声をかけると、チャチャはおっかなびっくり足先をお湯につけた。
「あつい。……でも。あったかい。ふわふわ。ボク。とけちゃう」
水嫌いの猫だったはずのチャチャが、ナノバブルの心地よさに目を見開き、ついには重力制御でぷかぷかと湯船に浮き始めた。
順番に風呂を堪能した僕たちは、湯上がりにリビングで冷えた果実水を飲みながら寛いだ。
若返った母さんと真央姉さんは、お肌がツヤツヤだと大はしゃぎだ。
「拓海、これはもう発明だよ。帝国との戦争なんて忘れて、温泉宿でも開こうか」
父さんが冗談めかして笑う。
「いいですね。でも、このお風呂の快適さを知ったら、帝国の皇帝だって降伏しに来るかもしれませんよ」
そんな冗談を言っている間も、僕は密かに風呂の排水システムに「魔力回収回路」を組み込んでいた。家族がリラックスして放出した余剰魔力を再利用し、家の防衛シールドをさらに強化する仕組みだ。
幸せを感じれば感じるほど、この家は強くなる。
「タクミ。あしたも。おふろ。入る。ボク。アヒルさん。浮かべたい」
チャチャの夢見心地な念話を聞きながら、僕は次の設計図を思い描く。
次はサウナか、それとも露天風呂か。
異世界での生活は、戦いも、発明も、そして癒やしも、すべてが家族の絆を深めるための大切なピースになっていく。僕たちの要塞化計画は、いつの間にか「世界一心地よい家」づくりへと進化していた。
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