十二話 パパと大樹の冒険
数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。
拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。
十二話 パパと大樹の冒険
女性陣が華やかに街を闊歩し、温かな夕食の約束を交わした翌日。父さんと大樹兄さんは、僕の部屋にやってきた。
二人の顔は、かつての平穏なサラリーマンや学生のそれではない。完全に「冒険者」の目になっていた。
「拓海、昨日母さんたちが買ってきた魔導合金のネジを見て思いついたんだが……」
父さんが地図の北、雲に隠れた『虚空の尖塔』を指差した。
「あの塔の頂上には、古代文明の遺物である『重力石』が眠っているという伝承がある。それがあれば、お前が設計している浮遊要塞の動力源になるんじゃないか?」
大樹兄さんが拳を合わせ、火花を散らす。
「母さんたちが家の守りと生活を整えてくれたんだ。次は俺たちの番だろ。男手二人で、最高級の素材をぶんどってきてやるよ」
僕は二人の決意に応え、開発したばかりの試作装備を差し出した。
「これを使って。父さんには、魔力を感知して自動で刃の軌道を補正する『エイム・アシスト・ソード』。兄さんには、踏み込んだ衝撃を爆発力に変える『インパクト・ガントレット』だ」
「助かるよ、拓海。……チャチャ、留守中の家の警護は頼んだぞ」
父さんが声をかけると、日向ぼっこをしていたチャチャが片目を開けて短く鳴いた。
「パパ。アニキ。いってらっしゃい。お土産。忘れないで。美味しい。お肉。期待してる」
こうして、父さんと大樹兄さんの「男二人の素材狩り」が始まった。
「はっ!」
父さんの魔剣が閃く。襲い来るガーゴイルの群れを、エイム・アシストの精密な軌道で次々と核だけを撃ち抜いていく。
前世では営業スマイルを絶やさなかった父さんだが、今の剣捌きは冷徹なほどに鋭い。
「大樹、左から三体! 拓海のガントレットを試せ!」
「任せろ!」
大樹兄さんが地面を蹴る。爆発的な推進力で肉薄し、巨大な鉄の扉を模したゴーレムに拳を叩き込んだ。
ドォォォォン!
ガントレットに蓄積された運動エネルギーが一気に解放され、ゴーレムが粉々に粉砕される。
「最高だな、これ! 拓海のメカニック魂、熱すぎるぜ!」
二人は軽快なコンビネーションで、数多の冒険者が挫折した難所を突き進んでいく。
かつて、日曜日の午後に公園でキャッチボールをしていた時のような呼吸の合わせ方で、彼らは異世界の魔物たちを圧倒していった。
最上階に鎮座していたのは、重力を操る古の竜『グラビティ・ドレイク』だった。
「父さん、体が重い……!」
「慌てるな。拓海が言っていたはずだ。『物理法則が歪むなら、こちらの魔力密度で上書きしろ』とな!」
父さんが魔剣を掲げ、家族を想う強い意志を魔力に変換する。
それに応えるように、大樹兄さんがガントレットを最大出力で解放し、重力圏を力技で突破して竜の眉間に一撃を見舞った。
「今だ、父さん!」
「おおおおお!」
父さんの一閃が竜の喉元を裂き、ついに『重力石』がその姿を現した。
数時間後。
泥だらけになりながらも、どこか誇らしげな顔で帰宅した二人。その手には、怪しく紫に輝く巨大な魔石が握られていた。
「ただいま、拓海。約束のモノだ」
父さんが重力石をテーブルに置く。
「お土産。忘れてない。竜の。お肉。持ってきた」
大樹兄さんが仕留めたドレイクの希少部位を差し出すと、チャチャが待ってましたと言わんばかりに尻尾を振って駆け寄ってきた。
「おかえりなさい。二人とも、いい顔してるわね」
母さんが微笑みながらタオルを差し出す。
真央姉さんも、買ってきたばかりのハーブティーを淹れて二人を迎えた。
僕は、届けられた重力石の凄まじいエネルギーを計測しながら、確信した。
この家族がいれば、どんな未来だって自由に設計できる。
「さあ、最高の素材が揃った。今夜は竜肉のステーキパーティーだ!」
一家の絆は、冒険を経てさらに強固なものとなり、僕たちの家はまた一歩、世界の理を超えた存在へと近づいていくのだった。
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