9-1 新世界
総理大臣の緊急会見により、世界は転移モンスターを現実の脅威として認識した。
地震や津波と同様に、緊急モンスターアラートが日常的に運用されることとなった。
モンスターモニターは秘匿対象からは外されて、その仕組みは同盟国以外にも開示された。
今後の展開によっては、次に魔素についての情報開示を検討している。
それにより魔弾装備、魔法と段階的に情報を開示せざるを得ないというのが現状の見解である。
もちろん、高知港に降り注いだ雷が認識されている以上は魔法の存在を先に開示するケースも想定している。
そもそも自然の歪みは日本を含む各国で年に一度あるかないかの現象だった。
ツバメ世界と異世界がこの世界と鏡合わせの位置になったことでその頻度は上がったが、それでも日本以外は月に一度か二度くらいだということだ。
今は異世界からの攻撃を受けている日本、それも四国にのみ人為的な歪みが頻発している状況である。
同盟国首脳にはこれが異世界からの攻撃であり、世界の危機であることを共有しているが、それ以外のややこしい関係国からは、日本による自作自演説や日本のキメラ開発説まであらゆる陰謀論も飛び交っているらしい。
まあ異世界からの干渉だとは思わないからな。
秘密を探ろうとする四国へのスパイたちの潜入も後を絶たないし。
私と女神の神眼や予知で尽くを未然に防いではいるけれど。
―――――――
「結局、直前攻撃はランダムだな」
作戦本部での会議には長柄総理、家入長官、田城副長官、花田くん、勉強コンビが参加している。
なお、木花・咲那とナビィはご意見番として参加しており、私の隣でお菓子を食べている。
家入さんの発言に田城さんが返す。
「攻撃ならあれが一番面倒なのになんで連投してこないんでしょうね」
「なんや理由があるんでしょうなあ。緩急つけてもしゃあないし、人為的な歪みを生むのに莫大な魔力を要するとかでっしゃろか」
「当たりかもしれないね/魔力の地脈の都合だろう」
「あんまり良くないよね♪」
む。聞き捨てならんぞ。
「ナビィ、どういうことだ?」
「魔素は時間をかけて地脈から地上に湧き出してくるものなのね♪ それを無理に抜き出してるなら地脈が不安定になるんだよ♪」
「なんかヤバくないかそれ」
途端にぶつんと世界が切り替わり、神界に強制転移させられた。
「うむ、その通りじゃよ」
「えーと、えらいタイミングで呼びましたね、創造神さま」
「その話をしたかったからな、ちょうどよかったんじゃ」
「てことは当たりだな/危ないんだね」
「そうだよ。やつら異世界との交じりが進まないから最悪の手段に出ようとしてるかもしれないんだ」
「時空神さま……。そこまでの話なんですね」
「四国への攻撃が尽く瞬殺されてるからな。このままではシシ世界との融合は困難で、ツバメ世界の破壊ができないと悟ったのだろうね」
「花川氏の見立てでは歪みの人工発生装置は地脈に打ち込まれていて移動できないそうじゃからの。打つ手を無くしたやつらは、この際無駄になりそうな人工装置ごと地脈の破壊をしようとしているんじゃな」
「めちゃくちゃヤバそうじゃないすか」
「ヤバいどころじゃないぞ/すべて吹き飛ぶよ」
「自爆テロってことか」
「わかってやっているかは知らんがな。地脈を破壊するなど何が起きてもおかしくないと気づきそうなもんじゃがな」
「止めるには?」
「乗り込むしかないじゃろうな」
「罠かもしれないけどな。行ってみるしかない」
「このままにはできんからな。ツバメ世界から先行部隊が出るからあっちが成功すればシシの出番はなくなるがの」
「まずは待ちですか」
「心積もりはしておいてくれ」
「人工装置はツバメ世界にあるんですよね」
「花川くんのドローンが見つけたんだからおそらくはそうじゃろう」
「侵入者をトラップ転移するような仕組みがあれば異世界に設置されている可能性も否定できないな」
「わかりました」
「では戻すぞ。面倒をかけるが3つの世界を頼んだ」
「はい。いつも通りです。できる限りを尽くします」
次の瞬間、私たちは作戦会議室へ戻っていた。
「ん? どうしたシシ」
「あ、すみません。いま神界に呼ばれてました」
「「「「「!」」」」」
呼ばれた理由を伝える。
自爆テロに移行した可能性。
あるいは罠の可能性もあること。
「そんなことになっていたのか」
「もはや我々の手には負えないレベルだな」
「相手の目的がどうあれ攻撃が終わらないんですから自衛隊の皆さんにはこれからも世界を救っていただかないと」
「このまま種類が増えたとしても想定モンスターであれば今の装備で対応は可能です」
「レジェンド級でも出てこない限りはな」
「四国の退避もほぼ完了しましたからね」
「海戦はまだ未経験だが、小型艇から護衛艦、潜水艦まで異世界武器を装備したから大丈夫だ」
頼もしいな。
私が異世界へ遠征に出たとしてもこの国は大丈夫だろう。
いつ呼ばれてもいいように、しっかり準備をしておこう。




