8-⑱ 平穏。そして異変
本年も宜しくお願いいたします。
お楽しみいただけたら幸せです。
700人の執事とメイドが爆誕した。
仕えてくれる対象は私、木花&咲那、アオイ、リル、ラビ、田城さん、卓司の7人。
単純計算でひとりあたり100人のお手伝いさんが付く計算になる。
いや明らかに多いし。
人化して過ごすことも多くなりそうなので、庭に新しく魔狼ちゃんたち用の寮を建てることにした。
寮とはいっても700人近くが住むし、今後も魔狼は増えるだろうってことで、ちょっとした大型ホテルになってしまった。
その管理も含めて約100人の7交代として、週イチ勤務でシフトを組んで、空き時間はトレーニングをすることでまとめたようだ。
100人体制でもとんでもないけどね。
子どもの魔狼ちゃんは戦闘訓練より日頃の雑務中心らしいけれど、週に一度は戦闘訓練を受けるそうな。
さすがは戦闘種族だな。
ということで、首脳陣にも魔狼ちゃんの人化と独立した遊撃隊として戦闘訓練をしていることを報告した。
場合によっては自衛隊特殊部隊に分散配置して斥候、アタッカーとして活用することも提案してみたが、そのプランはぜひ採用したいとのことだった。
―――――――
その後、四国からの退避は順調に進み、関西地方、中国地方、九州地方へと分散避難が進んでいた。
途中、四国でのアラートは10回起きたが、その都度、コピー要塞を配置することですべて無傷で対応できた。
帳を下ろしてあるので、世間バレも起きていない。
「うーん。思ってたより順調だな」
「ですよね。ボクたち出番ないですもん。異世界兵器がヤバすぎますよね」
「ありがたいよ。ツバメ世界には感謝だよな」
民間人の退避がかなり進んだので、四国本土にも拡張コピー要塞を配置していくことになり、田城副長官、卓司と一緒にタンドラに乗って設置候補エリアを見て回りながらそんな話をしていた。
「でもそろそろ違う手を打ってくる頃だぞ/ここまでシシ世界が手強いとは思ってなかっだろうし」
うわ、女神のフラグ発言だよ。
面倒が起きなきゃいいけどな。
視察の後、設置場所を正式に決定した。
明日コピー要塞を配置することで解散となった。
―――――――
「じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃい」
「ひとりでいいのか?/淋しくない?」
「リルがいるから大丈夫だよ。みんなアオイを手伝ってあげて」
「ありがとう。シシさん優しいなあ」
「あなた、付いていきます♥」
「ダーリン、私を置いていくなんて♥」
「そういうのは大丈夫」
「わかった/泣かないでねー」
「がんばれー」
「帰ったらキスしてね♥」
「抱いてね♥」
「キスもしないし抱かないよ」
いつもの寸劇を済ませて無人島リゾートから転移する。
一度視察しているので転移も使えるし簡単なものだ。
4県すべてにコピー要塞を設置して認識阻害をかけておく。
これでお仕事は終了だ。
「リル、せっかくだからドライブして戻るか」
「いいね! あるじ!」
タンドラを出して海沿いを走る。
海風が気持ちいい。
異世界から攻撃を受けてるなんて思えないな。
そこへアラートが鳴る。
「ん、来たか」
クルマを道端に寄せてモンモニを確認する。
「なんだこれ。……いつものアラートと違うぞ! 時間はあと5分後だ! ナビィ!」
「面倒になってるね。何か仕掛けられてるよ!」
直後、本部から連絡が入る。
スピーカーをオンにしてタンドラを走らせる。
「シシ、田城だ」
「場所は高知港で歪みまで5分。そっちもですか?」
「ああ。同じだ」
「港なら目の前です。木花と咲那はなんて言ってます?」
「明らかに異常。なにかの罠かもしれないから単独行動は避けろと言ってる」
「でも避難エリアど真ん中ですよね」
「そうだ。避難者を乗せるフェリーが集まっている」
「放置はできませんよ。とりあえず向かいます」
「こちらからも向かってる。そっちが先着だ。絶対に無理するな」
「了解」
こんな直前までアラートが鳴らなかったことはない。
木花と咲那の言う通り、なんらかの仕掛けがあるのは間違いない。
歪みの中心地はまさにフェリーターミナル。
避難誘導に自衛隊と警察があたっているが異世界騒ぎを知らされていない通常部隊だ。
当然、通常装備すらない。
モンスターが現れても対処不可能だろう。
「油断した。こんなアタックがあるなんて」
「あるじ、いこう」
タンドラから飛び出してイヤモニを装着。
「シシ現着! 港の警備をしてる自衛隊の指揮官の名前は?」
「中川だ。いま伊藤隊長から連絡がいってる」
認識阻害をかけて瞬速で自衛隊のテントに飛び込む。
そこでは指揮官と思われる男が困惑した表情でまさに通信中だった。
「何を言ってるんだ! モンスター? 夢でも見てるのか? 気でも触れたか」
まあそれが普通だよな。
認識阻害を解いて声をかける。
「危機管理省の獅子川です。中川さんですね?」
「わ、なんだ! ここは一般人は立ち入り禁止だぞ!」
「危機管理省だと言ったはずです」
「え、あ、あれ? シシ選手!?」
「内閣危機管理省の特別長官も兼務してます。すぐに緊急配備を敷いてください」
「は? 特別長官だと? なんだそれは。聞いてないぞ。あー、これシシTVのドッキリかなにかだろ?」
「時間がない。伊藤隊長に繋がってますよね。指示に従ってください」
「何を言い出すんだね。そもそも伊藤隊長より私の方が上官にあたるんだよ。突然そんな事を言われても無理だよ」
「緊急時に危機管理省が防衛省を管理下に置くのはご存じでしょう!」
「もういいからさ。ドッキリなんだろ? それよりサインをもらえないか?」
アラートが鳴ってる。
こいつダメなやつだな。
イヤモニに指示を出す。
「田城さん、現場指揮官の権限を剥奪します。もう時間がない」
「わかった。やれ」
「中川さん、内閣危機管理省の特別長官としてあなたの現場指揮権を剥奪します。文句はあとで総理大臣に言ってください」
そういうと周りの自衛官に指示を飛ばす。
「内閣危機管理省の獅子川だ。ここの指揮権は私に移管された。あと一分でモンスターが転移してくる。すぐに民間人の避難誘導に当たれ!」
だが自衛官も突然のことに動き出しが鈍い。
顔を見合わせてざわつくばかりだ。
「そりゃそうか……仕方ない。リル! 人化を解け!」
リルがフェンリルへと姿を変える。
小さな男の子がゾウより大きな巨大な狼に変貌した。
隊員たちは悲鳴をあげて驚き、中川さんはその場で尻もちをついてしまった。
「こいつは味方だ! 突然だが頼む! モンスターが現れるんだ!………国民を守るのは君たちの使命だろ! 今すぐ! 動け!」
神気をまとう指示に自衛官は気を取り直し、すぐさま緊急通報を飛ばした。
サイレンが鳴り響き、隊員たちが避難誘導を開始する。
たがもう時間だ。
景色が歪み、モンスターがその姿を現したのだった。




