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8-⑫ 戦闘開始



時刻は22時。

あと2時間で歪みが始まる。


エリアからの民間人の退避は完了した。

神眼で確認したが、病院以外に民間人はいない。


続いてエリア内で活動していた通常の自衛隊員、警官がエリア外への移動を開始した。

現場に動きが出たのでメディアの遠方からの生中継リポートが活性化したが、本部のモニターで見る限りはエリア内を詳細に捉えることができたメディアは皆無だった。


自衛隊と警官隊の退避を完了したのを確認して、木花と咲那が帳を下ろす。


「うん、できたよ/終わったぞ」  


「ありがとう。最後にも一度神眼っと……うん大丈夫だ。残ってる人はいないな」


認識阻害バリアと同時に、一部エリアには花田くんの作った指向性の「見せまへんスクランブル0号機」の運用テストも行われている。

未知の魔素特性を活かして、映像などにスクランブルをかかるような仕様だとか。

仕組みは全くわからないけれど、やっぱり間に合わせてきた。

本当に天才だよ。


「木花、咲那、最後に病院にバリアをかけていこう」


「わかった/いこう」


私はタンドラを収納から出して乗り込む。

異世界から譲渡された装甲車を参考にしてめちゃくちゃカスタムした自信作だ。

早く乗りたかったんだよな!


見た目は普通の大型SUVだがとんでも構造だぞ。

ボディには反射/吸収切り替え式のポリカーボネートをセットしていて攻撃ダメージは一切ない。

前方、後方には魔弾対応の無反動ガトリングが付いている。

上部についているガトリングはふたつで、それぞれ回転式で死角がない。

ゲームみたいなリモコンによる遠隔射撃のほかに、自動迎撃システムが付いている。


異世界装甲車に採用されている反転システムもパクっていて、横転しようが逆さまになろうがすぐ元に戻る。

もちろん理解不能なスタビライザーで車内は常に通常姿勢だし。

うん、無敵だろこれ。


中は拡張機能が付与されており、500㎡の広さがある。

武器弾薬倉庫はもちろん、四輪異世界バイクが2台置ける車庫付き。

生活空間も完璧でリビングやベッドルームが4つ。風呂、トイレ、キッチンまで揃っていて、豪華なホテルコテージといったところか。


するとファミリーたちも乗り込んできた。


アオイ、卓司、リル、ラビ、ナビィにリーダー。

なぜか花田くんも乗り込んでくる。


「えらい作り込みましたなあ! なるほどなるほど。異世界装甲車のラグジュアリー版っちゅうことですか!」


呼んでないぞ。

でも褒められたら嬉しいな。


無人の市内を気持ちよくドライブ。

病人と医師が残っている大型病院全てにバリアをかけていった。


戎橋の作戦本部へ戻り、最終打合せを行う。


特殊部隊は航空隊、海上隊も加えて再編した5人一組の20チーム。

モンスターが発生するポイントで迎撃を行う。

私たちもチームを分けて、よりモンスター密度の濃いエリアを担当する。


シシ

木花・咲那

リル、リーダー

アオイ、ラビ組

卓司、魔狼ちゃん隊


私と木花咲那は臨機応変に動く遊軍。

リルとリーダーも各地で魔狼を従えていく遊軍で動いてもらう。


「防御スーツは完璧です。慌てずチームで迎撃してください。緊急バリアの魔石を忘れずに。ポーションは無限にありますからケガをしたら躊躇せず使ってくれて大丈夫です」


「花田式サンバイザーも忘れんといてくださいね。暗視だけやなく視認できひん状態でも味方が識別できる仕組みになってまっせ。乱戦になっても誤射の危険性はかなり防げますわ」


なんだそれは。すごすぎるだろ。

聞いたらボディスーツに組み込んだポリカーボネートの反応を拾っているらしい。

うーむ。君天才にもほどがあるな。


15分前に各自が散って担当配置につく。


私とリル、リーダーはもっとも濃い中心点の本部前に構えている。



そして深夜0時。


目の前の景色が不意に歪み、モンスター群が姿を現した。


「基本セットだな。リル!」


リルが咆哮を上げる。

途端に魔狼はリルの前に集まり伏せて降伏の姿勢を見せた。

よし、魔狼は無力化できるな。


『こちら卓司。こっちにも咆哮が届いた。こちらの魔狼とは戦闘にならなかった! そちらに向かったぞ』


同じ報告が各所から届く。

リルの咆哮はエリア全体に響き渡り、一発で全ての魔狼を傘下にした。

すげーな!


そしてモンスター群に目を戻すと―――大量に湧いたモンスター基本セットは全て全滅されていた。


リーダーによる瞬殺だった。


「あー、ぼくの分がない!」

「まだまだいるぞ。ほら行ってこい!」

「うん、あるじいってくるねー!」 


リルは瞬速で消え去り次のポイントに向かっていく。

リーダーも新たな魔狼たちを従えて後を追っていった。

魔狼ちゃん隊、また増えるんだな。


さあ私も動くか。


「田城さん、ここは大丈夫です。行ってきます」

「わかった。気をつけろよ……って感じでもないな」


私は笑顔を返して空に舞い上がる。

まず道頓堀川の状況を確認した。


川にもゾンビが湧いており、それを両岸の川上、川下から2チームが順に殲滅させていた。


(おお、魔弾ライフル、無敵すぎるだろ!)


空から見ると見える範囲のモンスターはほぼ倒されていた。

次々と作戦終了の報が届く。


(なんだ、今回は出番もなさそうだな)


やがてエリア内のモンスター反応はすべて消えた。


ここまで10分。


過去最大のモンスター襲撃はいとも簡単に解決してしまったのだった。

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