8-⑩ 市街戦
ナビィと木花、咲那が珍しく深刻そうな顔をしていた。
「どうした?」
「ちょっとややこしそうかも/かなり面倒だな」
「どういうことだ?」
「エリアが都会なんだよねえ♪」
「どこ?」
「大阪の道頓堀」
「はあ? 道頓堀なんてどうやったって人目につくぞ」
「そうなんだよ/ちょっと困るよね」
「えーっと、認識阻害とか認識変更?」
「誰かヒーローなのかはごまかせるね♪ でもモンスターの数と出現エリアの広さによるけど、騒ぎ自体は隠せないかもね♫」
「時間停止を重ねるとか?」
「繁華街って作りがそれなりに複雑でしょ。山みたいに見たまんまじゃないし、それだといくらシシさんのカバー範囲が広くても隙間ができちゃうみたいだよ」
「そこはやってみなきゃわかんないってこと♪」
「まあやるしかないか」
とにかく人に被害が出ないようにするのが最優先。
まずは長柄総理たちとの協議だな。
―――――――
完成したばかりの作戦本部にメンバーが集まる。
ファミリーのほかには、長柄総理、家入防衛大臣。
自衛隊からは勉強コンビに、整備班改め科学整備班となった花田くんが席についた。
まずは私からモンモニから得た概況を報告する。
「皆さんも支給したモンスターモニターから情報は得ていると思いますが、歪みのエリアは大阪・道頓堀で、時間は明日の深夜となります」
「いきなり厳しいな」
「ええ。深夜とはいえ初めて民間人を巻き込む掃討戦になりますね」
長柄総理、家入大臣も戸惑いを隠せない。
「おそらくモンスター騒動は表に出るでしょうね。些細はあとで考えるとして……ナビィ、モンスターに新種のデータがあるんだよな?」
少し周囲がざわつく。
「あ、ナビィは紹介してなかったか。みなさん、神界のナビゲーターで妖精のナビィがここにいます」
突如として空中に現れたマジックボックス……魔法袋に首脳と自衛隊メンバーは驚く。
ナビィを視認できるのは魔力を得て覚醒した者だけだ。
まだ政府筋には発現していない。
まあきっとそのうちだろうけど。
ひとりクリエイトを発現した花田くんだけがナビィをみて騒いでいる。
「いやーほんまにここに来れて良かったですわー! 毎日がサプライズだらけですわ。ほんまに寝る間もあらへん!!」
ちょっと落ち着こうか。
「……ナビィの見立てではおそらく新種を含む相当数が出現する見込みになります。花田くん、作戦をお願いします」
そう、今回はおそらくテストの総仕上げだ。
「ほな説明しますね。確定してるんがゴブリン、コボルト、魔狼、オーク、オーガ、このあたりの基本セットですわ」
基本セットて。
まあ便利ないい方だな。
「基本セットが意思疎通を図れないのはこれまでの戦いで確定してますさかい、駆除で確定ですわ」
「今回はすべて敵対モンスターですが、覚えておいてほしいことがあります。仕掛けているやつらは悪ですが、送り込まれるのは異世界に生息するただのモンスターたちです。日本で言うクマやイノシシですね。巻き込まれて送り込まれている可能性もある」
「なるほど」
「いつかはコミュニケーションが取れる相手が出てくるかもしれないんですよね。必ずしもすべてを駆逐する戦いではないことは頭に入れておいてください。もちろん、逆に異世界の軍隊を送り込んでくる可能もありますけれどね」
「モンモニをより強化できひんか、異世界の花川さんと開発相談してますんや。今より歪みの波長を詳しく拾えるようにしたらもっと細かく出現場所や種類がわかるようになるかもしれません」
おっと、それはありがたいな。
「さて今回で言えばひとつポイントがあって、魔狼は仲間に下る可能性が高いです。ウチのフェンリルと魔狼チームが現着するまで耐えてもらえたら仲間にできます。ポリカーボネートがあればダメージ回避が可能だと思いますので積極駆除の対象からは外してください。もちろん生命優先ですからいざという時の判断は間違えないようにお願いします」
「わかりました。小隊ごとに適時状況判断します」
「ほな次に新種のデータですけど………」
「ちょっと待ってくれ。新種のデータがあるのか? ツバメ世界のモンスターデータは引き継げなかったと聞いていたが」
「あ、家入さん、それが簡単に解決したんですわ。なんやモードが初期化されてただけやったって花川さんが言うてました」
「なるほど。それはいいな。続けてくれ」
「はい、で、新種なんですけど出てくるんはゾンビで確定ですわ。かなりの量が出てくるみたいですよ」
「いよいよか」
「魔素を撒き散らかすのにはゾンビが最適なんだっけ」
「そうらしいな」
「動きは遅いそうだ。通常兵器でも対処は可能だと思われるが、オークやオーガのことを考えると魔弾装備で対処することになるでしょう」
「噛まれても毒ポーションをすぐ飲めたらゾンビ化は防げます」
「医療ベースを何箇所か用意するか)
「とにかく民間人の対応だな」
勉強コンビも交えて協議が進む。
特殊部隊との連携はかなり進んだ。
攻撃面には不安はない。
自衛隊の通常部隊が機能できるか、そして未曾有のパニックの中で民間人の保護をどのように行うかが最大の課題となった。
―――――――
まずは転移のできるメンバーで大阪の拠点へ入る。
ダイレクト転移ができるようにしてからファミリーを送迎した。
特殊部隊はあとから本隊とともに空路で大阪に入る予定となっている。
「まずは街に出るか」
「そうだな。まずはお好み焼きにするか/えー、たこ焼きじゃない?」
「串カツも美味しいよ」
「かすうどん♪」
「リルはやきにくがいいのー」
「ぼくもー」
「ひとつレアなのが来たな………いや違うだろ。おいちょっと待て。そうじゃない」
さっきまでの深刻な顔はどこに行った?
「まずは視察! マップで見るとかなりヤバいエリアなんだよ!」
渋るメンバーを連れてモンモニが示すモニターの中心地へ向かう。
「マジでここなのか。これは厄介だな」
そこはお菓子の巨大看板の目の前、ひっかけ橋と呼ばれるまさに繁華街のど真ん中だった。
予想時刻は深夜とはいえ、最悪なことに週末だ。
かなりの人が街に残るだろう。
「木花、咲那、ナビィ。この地形はどうだ?」
「最悪だな/ビルが入り組みすぎてるよ」
「モンスターが散って出てきたらいくら湘くんでも時間停止の効果が持たないかも♪」
確かに厳しいな。
なにか策が必要だ。




