7-6 新しい拠点
敵の攻撃プランがわかった。
敵はまず私たちの世界の四国を異世界と繋いで落とし、そこから世界の半分を異世界に繋ごうとするらしい。
それを許せば異世界と私たちの世界が融合してしまい、いま異世界と繋がっているツバメ世界が弾け飛んでしまうのだ。
「世界の半分? 四国も渡す気はありませんよ」
「よく言ったシシ」
「頼むぞ」
「ちょっと責任重すぎですけどね。なんせ救世主とか言われてもまだ成り立てですので」
「大丈夫でありますよ。こっちで解決できるかもしれませんですし。それにいざとなればこっちからもシシさんに増援を送りますです」
「え?」
「異世界を通じてのシシ世界への移動を敵が黙って見逃すはずがない」
「ん? そんなことをしなくても直接送り込みますでありますよ」
「「「え?」」」
「ツバメ世界とシシ世界のダイレクト移動ができるように研究中でありますです」
「いや無理だ。自然の歪みでつながらない限り異世界移動はできるはずがない!」
「そんなことが出来るのか?!」
「たぶんもう物なら届けられますですよ。いまは人間サイズの送迎ができるようにアレンジしている状態でありますので」
「「「マジ?」」」
「まああり得ませんが万が一にも私が失敗したとて、悪魔だか魔王崩れが束になっても神獣はもちろん、トミーやネモを止めようが無いと思いますですけどね」
「「それはそうだな」」
向こうにはまだ強者がいるみたいだな。
てかこの話が本当なら天才どころじゃないな。
ていうか、しゃべり方が残念すぎる。
なんとかならないのかな。
「ちょうどいいであります。テストであります。そうですね……うん、今晩深夜0時ちょうどにこちらからシシさんの世界に花火を打ち上げてみますですか。落下傘でプレゼントも送りますからどこに打ち上げるか決めてくださいであります」
「マジですか……なら瀬戸内海の無人島とかかな」
私は最近購入したばかりの無人島の緯度と経度を伝えた。
「まだピンポイントは無理なので多少のズレはご了承のほどお願いしますですよ。その代わり花火のサイズだけは大きくするでありますね」
「わかりました」
「では神さま、創造神さま、これで失礼するでありますね。テストの成功を楽しみにしていてくださいであります!」
こちらの返事を待たずに通信は切れた。
「なんかすごい人でしたね」
「相変わらずの天才ぶりだな」
「とんでもないやつじゃ」
お、創造神さま、いつの間にか老いキャラに戻しているぞ。
気づかないフリしてあげるか。
「余計なお世話じゃ!」
あ、心読まれた。
―――――――
「………というわけだ」
「噂には聞いていたが/すごい人ですね」
「花火上がるかなあ」
「いやその前にさ。四国攻防戦だよ? アオイわかってるか? 異世界だぞ。ツバメ世界だぞ。悪魔に魔王だぞ。宇宙ごと吹き飛ぶんだぞ?」
「いやまあそれはそうだけどさ。なんかスケール大きすぎてよくわかんないよ」
「確かにね/ピンと来ない」
「木花と咲那まで!」
「いや違う。負ける気がしないんだよ/そこまでの敵でもないんじゃないかなあ」
「え、そうなの? あー、確かにオレならチョロいとか言ってたかも」
「ポイントは向こうの搦手だろ/だとしたら策の立てようがないというか」
ウチの参謀女神が言うには、こういうことだ。
敵自体は大したことがない。
正面から勝てないから裏技を使ってる。
歪みの装置がある場所はすでに見つけている。
歪みの発生装置を壊せば終わり。
「異世界にはヤバい味方がたくさんいるんだろ/そいつらに潰されて終わりなんじゃないかなあ」
「む。確かに。言われてみればそんな気がしてきた」
「できることは戦力強化だけだよ/いつも通りにトレーニングだ」
「そうだね♪」
「んー、なんか張り切って損した気分だ」
「シシさんに心配されないようにがんばろう」
「がんばるのー」
「がんばゆ」
「アオーーーーン!」
ということで普通にトレーニングすることにしたのだった。
たっぷりトレーニングをして夕方になる。
「おーい、そろそろ準備始めとけよー。オレは先に瀬戸内海の新拠点に行ってくるからな。拠点作って転移できるようにしたらすぐ戻って出発するからな」
「「「「「はーい」」」」
あるじをひとりにしないリルはいつものように小さくなって胸ポケットに飛び込んでくる。
ハムスターサイズのリルはとにかくかわいい。
はあ、たまらないぞ。
―――――――
「おー、ここが新拠点か!」
「どうです?」
「完璧だ。男のロマンしかない!」
瀬戸内海の新拠点には卓司と一緒にやってきた。
船の行き来はないので認識阻害をかけて空を飛んできた。
広島と山口、愛媛の間に位置する群島の中にある700坪ほどの小さな無人島である。
瀬戸内海にある島の数は700〜3,000というデータがあった。
島のサイズやどこまでを瀬戸内海とするかで幅があるようだが、"それなりのサイズ"としたら700ほどだという。
そのうち人が住む有人島は160前後なので500以上の無人島が点在することになるのだ。
「リクエスト通りに選びましたけど……本当にこんな小さくて良かったんですか? 700坪ですよ?」
「見た目はこじんまりした別荘がひとつだけ建ってるよくある"ぽつんと有人島"でいいんだよ。中身は【拡張】でとんでもないリゾートにするけどな」
「そう言ってましたよね」
「最初は大きな島にしようと思ったけど目立つだろ。かといって認識阻害をかけっばなしにして船やボートに事故られても困るからな」
「確かに」
「じゃあさっそくやっていくか」
まずは建設中だけ島全体に軽い認識阻害をかける。
外側の木々だけを残して内側の木は伐採。
平らに慣らして真ん中に小高い丘を作る。
そこへ見た目は100坪ほどの2階建てのモダンなコンテナハウスを置く。
はい、ぽつんと別荘の完成だ。
家のそばには井戸、ソーラーパネルをセットする。
といってもこれらはダミー。
実際は魔法で水は蛇口から無限に使えるし、制限なしの最新オール電化ハウスである。
島には小さな桟橋を備え付けて、大きめのプレジャーボートをつないでおく。
これも基本的にはダミーだ。
人が住んでて、いま来てますよという防犯のためだな。
たまには動かして遊ぶけどね。
でもこの桟橋を含めて、家族以外はどうやっても家にたどり着けないようにあとで木花と咲那に魔法をかけてもらう予定だ。
庭は広めに取ってあり、大きなプールとサウナ、バーベキューにドッグランをセットする。
はい、ここまでは普通のちょっとお金持ちの別荘ですね。
続いては拡張魔法を使った大型リゾートの建設だ!
まず700坪の島を10万坪に広げる。
庭にはスライダーつきの流れるプールを作り、体育館やショートコースのゴルフ場まで作ってしまった。
もちろん外庭の拡張スペースは海からは見えない。
他にも屋内には立派な温泉施設を作る。
屋内プールはもちろん、トレーニング場やボウリング場までセットしてしまった。
あとは畑や田んぼ、果樹園も作っておく。
地下には100年は暮らせる備蓄を持ち込んでおこう。
島の温度はあとで女神に常夏に固定してもらうんだ。
これで巨大リゾートの完成である。
ここまでは遊び心しかないけれど、今後は四国攻防戦の戦略拠点としての魔改造を行う予定である。
どこまで武装できるかはわからないけれど、徹底的に作り込むつもりでいる。
最後に認識阻害を解いておしまいだ。
ここまで1時間ほど。
卓司は驚きをこえて呆れていた。
さあ、みんなを連れてこよう!
瀬戸内リゾートのお披露目だ!




