7-5 天才科学者
気の抜けたような声は噂に聞く天才科学者・花川さんのものだった。
ツバメ世界には神界へダイレクトコールをする技術があるようだ。
こっちはアナログなマジックボックス&ナビィ経由のお手紙なのになあ。
「どうした花川くん」
「あ、創造神さまでありますか?」
「だからいまは時空神だよ。いい加減覚えてね」
「そうでありました」
「まったく相変わらずじゃのう」
「あー、神さまでありますな。神さまこそいつまでそんな老けキャラを続けるつもりなんでありますか?」
「そ、それを言うな! 創造神には威厳が大事なんじゃ! ってそんなことはよい。で、なにか分かったのか?」
「はい、相手の狙いが分かったでありますよ」
「なんと! さすがじゃな!」
「……普通にしゃべらないでありますか? なんか調子が狂うであります」
「それを言うならこっちもだよ」
「それそれ。それでいいのであります」
なんだ? いきなり意味の分からないやりとりだな。
「ねえ、時空神さま。創造神さまってもしかしてキャラ変してます?」
「あーそこは気づかないフリしてあげて。創造神になるときに威厳を出すとか言って老人キャラに変えたんだよ」
「なんすかそれ!」
「ツバメの功績でランクアップしたからね。よほど嬉しかったんだろうな。実際の彼はもっと若いイケメンだよ。話し方ももっと穏やかだしな」
「なんか意外と神さまって……」
「そんなものだよ。かくゆう私も創造神から時空神になった時にキャラ変したしな。神だって人間と変わらないさ。生まれた場所の違いしかない。暇だからいろいろ遊びもほしいんだよ」
「そんなもんなんですねぇ」
「だからシシからの土産物や食事に一喜一憂するのだよ」
「あー、なんか納得できますねそれ」
その時だ。
「な、なんだって!?」
創造神が驚いた声を上げた。
「どうした?」
「相手の戦略がわかったそうだ」
口調がすっかり元のイケメン神モードに戻っている創造神さまが続ける。
ついでに変身も解けてるぞ。
本当に超イケメンだ。変えなくていいのになあ。
「花川くん、詳しく頼む」
「了解であります」
―――――――
花川さんの説明によるとこうだ。
関西に集中していた歪みは異世界のテストだった。
歪みを強制発生させる装置が作られていた。
新たに世界を混ぜるにはいつくかの段階が必要。
テスト段階を終えて今後は本格的な作戦が始まる。
―――――――
「なんと、物理的な装置を作っていたとは」
「失われた超古代魔法などかと思っていたのだがな」
「どうやってそんなことを突き止めたんですか」
「ん? その声はどちらさまでありますかな」
「あ、失礼しました。私、獅子川 湘と申します」
「あー、噂の新しい救世主・シシさんでありますね! 私、キヨヤマ国の科学大臣の花川でありますよ」
「ご高名は伺ってます。宜しくお願いいたします」
「こちらこそであります」
「挨拶はその辺でいいだろう。続きを頼む」
「どうやってお調べになったのですか?」
「狙われたのが関西だと聞いてこちらの世界でもそのあたりを重点的に調べていたでありますよ。世界と異世界はシンクロした世界でありますから、必ず異世界の関西にほど近い場所で起こした事象だと分かっていましたです」
「なるほど………嘘です全然わかりません」
「なんとなくでいいでありますよ。まあ簡単に言えば私たち……ツバメの世界と異世界は表裏で並んだいわば鏡合わせのような位置関係にあるとイメージしてほしいであります。そしてその異世界とこれまた鏡合わせの位置関係にシシさんの世界があるのでありますよ。つまりは三面構造でありますな」
「あー! なるほど、少しイメージできました!」
「そちらで起きた歪みの影響は、異世界を隔てて小さいながらこちらの同じ位置関係にもにもほんの少し届いたでありますよ。なのでその波長を拾えるようにこちらの世界のモンモニをアレンジしたのでありますね」
「わからないけど天才すぎる」
「シンプルに起点となる異世界の同じ地点を探りましたです。こっちは異世界移動は電車に乗るより簡単でありますからな。異世界の同一地点に私のスーパーアイテムでありますナノサイズのスパイドローン【ナノナノエアー】を大量に送り込んだでありますよ」
ナノナノ? なんだそりゃ。
とりあえず聞き役に徹するしかないな。
「残念ながらナノナノエアーは侵入後に気づかれて破壊されたでありますが、敵の本拠地は見つけましたですよ」
「それはどこだったんだ?」
「異世界の四国でありました。こちらの四国はダンジョンエリアですので隠れ家には適しておりますです。ゆえにテスト終了後、シシさんの世界で最初に異世界と混じるのは四国でありますよ」
「バレたのなら本拠地は変えるのではないか?」
「歪み発生装置は大型で魔力地脈に直結する仕組みでありましたです。収納スキルを使っても動かせませんです」
「なるほど。よくやってくれた」
「そして原則として世界の融合は50%超えで成立するであります。シシさん世界の四国から始まり、世界の半分が同化したら負けでありますね。ツバメ世界は宇宙ごと吹き飛びますです。そこがデッドラインでありますです」
「難しい話でしたけど、最後はシンプルですね。私たちでそれを阻止すればいいんですね。世界の半分なんてとんでもない。四国だって渡す気はありませんよ」
私は力強い宣言をしたのだった。




