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6-⑪ 1987年夏 2



大好きだったおばあちゃんのじゃがいもの味噌汁とあじの南蛮漬を食べて涙が出た。


「あー!これこれ!」

「「おいしーーー!」」


母さんが引き継いでくれてよく食べてたし、母さんが亡くなったあとは私もたまに作るようになった。

でもやはりおばあちゃんが作っているのを見たら感動する。


あとはお正月にまた来よう。

おせちを食べるのだ。

獅子川のおせちと言えばくわい!

ほくほくしつつ歯ごたえも残るあの味。


これも母が引き継いで作ってくれていたが、久しぶりにおばあちゃんの味を確かめたいんだ。


母はくわいは皮むきが大変だと言っていた。

それを聞いてからはおせち作りの時には手伝うようになったのだけど、もちろんおばあちゃんが作っていた頃は包丁も持てない子どもだったし一度も手伝いをしたことがない。

今年はしっかり手伝ってあげたい。


とか考えいたら別にお金をかけなくても、ふたりにしてあげられることはあるんだなと気づいた。


大したものは作れないが、カレーなら得意だ。

材料費くらいはなんとかする!


帰るまでにちょっとくらい資金を稼いでカレーを作ることにした。


―――――――


翌日早朝。


木花と咲那をおじいちゃんたちに預けて、朝からひとり、おじいちゃんの乗っていた原付バイクを借りてアルバイトに向かった。


学生時代、日雇いで働かせてくれるいわゆる"飯場"があったことを思い出したのだ。


たくさんの人がいるプレハブで炊き出しの朝めしを食べて待っていると、梅干しが乗っただけの日の丸弁当を渡されて迎えに来た建設会社のトラックに振り分けられるのだ。


振り当てられる現場によって仕事の内容は異なるのだが、なんの資格もない学生バイトは大抵めちゃくちゃキツい肉体労働の現場がほとんどだった。

梅干しが苦手だったけれど、疲れ果てた身体に梅干しの塩分はとても効いたのでそれから食べられるようになったのを思い出した。

稀に楽な現場もあるのだが……例えば普通免許で運転できるトラックであちこち資材を集めに運転するだけの仕事は当たりだったな。


朝から夕方までみっちり働いて飯場に戻ると1万円が手渡しでもらえるのだ。

当時の時給で考えたらいい値段だし、なによりとっぱらいで夕方にはバイト代が手にはいるのがありがたかったものだ。


ふらっとやってきて名前を言うだけで朝めしと弁当と仕事がもらえるのだから、今思えばかなり不思議なところだったな。

保険もなかったんだろうしかなりグレーというかクロだったろ。

オレたちは日帰りだったけど、住み込んでる人がほとんどだったし不思議な場所だった。

でも通うにつれて顔なじみのおっちゃんが増えたり、気に入って指名してくれる現場が出てきたりしてなかなか楽しかった。


確か指名が入るようになってからその飯場の中抜きがでかいことがわかった。

現場は1人16,000払うけど、バイトがもらうのは1万円だったのだ。

その後は直接引き抜かれたのだけど、1日13,000円とかだったか、双方得したこともあったな。


うーん。懐かしい。


ということで。

弁当をもらってトラックに乗り込む。

ところが豪運な私は現場のトラブルで作業ができず、1時間ほど待機しただけで結局なんにもせずに送り帰されてバイト代を手に入れるというミラクルを起こしたのだった。


―――――――


「ただいまー」


「えー、早いね!/夕方じゃなかったのか」

「まあ、豪運だな」


軽く事情を話してから居間でテレビを観ているおばあちゃんに声をかける。


「おばあちゃん、木花と咲那と一緒に買い物にいってくるよ。今日の夕飯はオレが作るからね! 何かついでに買う物はあるかな?」


「まらまあ、もう戻ったの? 湘ちゃんの手料理が食べられるなんて嬉しいわね。じゃあお金渡すわ」


「大丈夫! バイト代もらったから! ついでの物はない? ふたりじゃ持てないものとかあるんじゃない?」


「それは助かるわね。なら―――」


そう言って頼まれたものには重いものなどなく、オレたちのための食材や着替えなどばかりだった。


そのメモを見ただけでオレは泣きそうになっていた。


本当におばあちゃんは優しい人だった。

いつも朗らかでニコニコ笑っていて。 

太陽のような人だった。


聞いても遠慮するだけだな。

重い物なんかを勝手に買うとしよう。

でもこの時代に水やお茶を買う習慣はまだ無かったよなあ。


そうだ! いいことを思いついた!!!


家のボロいところをクリエイトしちゃえ!

ついでにバリアフリーにリフォームだ。


そんなこんなで急遽予定を変更する。


「木花、咲那。やっぱりちょっと待ってて!2時間くらいですぐ帰る」


そういって私が向かったのはパチンコ屋!

懐かしいレトロ台を楽しみながら2時間弱で1万円を30万円に増やすことに成功した。

うーん。やはり昔の爆裂機は最高だ!


その日は特製カレー(辛さ控えめ、お肉はホロホロに煮込んだ特別バージョン)を振る舞ってふたりと女神には喜んでもらった!

おじいちゃんおばあちゃん孝行は大成功だ。


翌日は予約しておいた都内の温泉のあるホテルにふたりを連れて行き、木花と咲那に一緒に過ごしてもらう。


さあ、その間にリフォームやっちゃうぜ!


まずはパチンコで軍資金の追加。

昨日と同じく爆裂レトロ台で軽く30万ほどを資金に加えてから買い物を済ませる。


家に戻ると全体に認識阻害をきっちりかける。

そしてクリエイトを駆使して家をバリアフリーに仕上げていく。

おじいちゃんの好きな麻雀は最新型を置いてるし、完全防音のカラオケも完備したぞ。


そして外からの見た目は変わらないものの、どんな地震でも崩れない超耐震仕様になっている。

ちなみに言うつもりはないが、核爆発にも耐えられる。

もちろん地下には広大なシェルターが用意されており、ご近所さん100人が向こう10年は余裕で暮らせる備蓄もしておいた。


ざっと半日をかけて納得の家にリフォームした私は、みんなが宿泊しているホテルへ。

楽しく祖父母孝行に参加したのだった。

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