6-⑩ 1987年夏
懐かしい家族との想い出に浸りながらタイムリープをする。
荷物をピックアップしておこうと飛んだ先は東京の自宅だった。
――だが、またかなりズレた。
これは完全に私のミスだ。
3日過ぎたと聞いたので少し前に戻ろうと思ってしまったのと、いつか死んだじいちゃんとばあちゃんにも会いに行けるのかもと思ったからだ。
とうやらタイムリープはとても繊細なものらしい。
ということで。
金髪の美人と手を繋いだ私の目の前にはおじいちゃんとおばあちゃんがいる。
「し、湘?」
「しょうちゃん?」
「おじいちゃん! おばあちゃん!」
この状態のヤバさの前に、死んでしまった大好きなふたりが目の前にいる喜びのほうが勝るのは仕方ないと思う。
さっき父と母との再会を我慢したばかりなこともある。
私は木花と咲那を小脇に抱え、泣きながらふたりにしがみつく。
「会いたかった! 会いたかった!」
わんわん泣く孫と金髪美女という訳のわからない組み合わせの状況である。
あとから思えばさぞかし混乱したであろう。
にもかかわらず、優しく孫を抱きしめることを厭わなかったふたりはやはりすごい。
ようやく落ち着いた私にふたりは優しく問いかける。
「落ち着いたか? で、湘。この方は?」
「………あ、紹介するよ! 大事な彼女だよ」
「あらまあ、お名前は?」
「木花と咲耶だよ」
「え?」
「あ、えー、苗字が木花で名前が咲耶」
「そう、木花さんだね。よく来たね」
「咲耶ちゃんね、よろしくね」
おー、うまく両方に呼び分けてくれた。
呼ばれる方はこういうの大事だよな。
「あ、よろしくお願いします/宜しくお願いします」
さすがに年配には両方敬語なんだな。
2回続けて言ったのはまあ緊張したからだと思うだろう。
「で、湘」
「ん?」
「いまどこから来た?」
だよね。
ここリビングだよね。
玄関から来てないよね。
これは無理だな。正直に話そうか。
「……話していいかな」
「いいよ/仕方ないだろ」
「あのね、おじいちゃん、おばあちゃん。驚かずに聞いてくれるかな。オレ、タイムスリップして来たんだよ」
「あらまあ」
「それはすごいな」
歳を取るとあまり驚かないというがまさにその通り。
ふたりは驚きもせず、なによりなんの疑いもしなかった。
連れてきたのが女神だということよりも、孫の未来が気になるふたりは根掘り葉掘り私のことを聞いてくる。
とりあえずふたりが生きているうちに知ることになる出来事はなんとなく隠したほうがいいような気がしたので、最近のことを中心に話しておく。
ある程度のことを伝えてからふたりに聞く。
「で、今は西暦何年かな」
「1987年の8月2日よ」
うん。オレ17歳だね。
鏡を見ると確かにそんなもんか。
たまたま若いシシにしていてよかった。
小学校までは長い休みはずっとここにいた。
中学からは部活が厳しくてお盆と正月くらいしか来れなくなったけど。
もう少しあとにジャンプしてたら帰省していた家族もろとも本人同士が鉢合わせしていたのだろうか。
「ふたりとも信じてくれてありがとう」
改めてふたりにお礼を言う。
「当たり前だ」
「今日は泊まっていけるのよね」
「あー、そうだね。戻るのはいつでも大丈夫だから今日はそうしようかな」
「湘ちゃんの好きなもの作るわね。じゃがいものお味噌汁とあじの南蛮漬け。木花ちゃんと咲那ちゃんも食べられるかしら?」
「もちろんです!よくシシが作ってくれました/本物の味が楽しみです!」
「じゃあ買い物行ってくるよ。何が必要かな」
「じゃあお金渡すわね」
「いいよいいよそれくらいは……あ! だめだ。オレのお札は使えないかも」
ふたりになにかプレゼントもしたかったのに!
とりあえずお金をもらって女神ちゃんと一緒にスーパーへ向かうことにした。
「これがオレの持ってるお札で、こっちがいま流通してるやつ。全然違うだろ」
「本当だ。人も違うね」
「お金をコピーするのは人道に反するからなー。この時代にいるうちになんか考えようっと」
会えただけでももちろん嬉しい。
おじいちゃんとおばあちゃん孝行のやり直しができるなんて幸せなことだ。
せっかくの機会だ!
お金をかけずに喜ばせてあげたいな。




