6-6 神獣の力
ウチの神獣ふたりが人化能力を得た。
練習してよく頑張ったのだ。
今はリルがラビたんに言葉を教えている。
「アオイ、あるちー、キハナ、サキナ、ナビー、リユー」
「あるちじゃないよー。あるじだよー。リユじゃなくてリルだよ。もう少しだよー」
シが発音できないらしくチになる。
ルはユだ。
もうヤバすぎだろこれ。
沼にハマるとはこんな感じなのか!?
リルのカタコト言葉もたまらないからふたりを褒めまくる。
なんかウチが途端に家庭らしくなったぞ。
これは癒やされますなー。
「いかんな。こんなにふにゃふにゃになっていいものなのか」
「本当だよ/癒されるね」
「弟と妹ができたみたい♪」
私に限らず、全員骨抜きである。
―――――――
数日後、またアラームが鳴った。
次の予測ポイントは比叡山だった。
「また関西か。あのあたりに歪みの溜まりでもあるのかな」
「そうなのかもねー。でも前に起きたときはもっとひとつひとつのサイズが大きくてなにより全世界規模だったんだよ♪」
「それはエグいな」
「でも気になるな。自然な歪みはこんなハイペースで起きないぞ/なんだろうね。なにか異変が起きてるのかも」
木花と咲那も真面目な顔で考え込んでいる。
「まあでもペースが多いだけだろ?」
「そうだといいんだけどね/そうだな」
「まずは今晩の歪みに備えましょ♪」
種類は前回のオーガを含む複数の反応だ。
過去データの引き継ぎができていれば迷いモンスターの対策もできるのだがそうはうまくいかないようだった。
ナビィの目視による判断で対応するしかない。
とりあえず現場に近い京都リゾートにまた戻り、待機することとした。
今回の歪みは比叡山の山深いエリアで起きる。
とはいえ京都の時ほど奥深い場所ではないようだ。
あとで転移ができるように一旦現場を視察することにした。
認識阻害をかけてから、空を飛んで現地を見てみると、山中ではあるものの、少し山を下れば有名な延暦寺やドライブウェイもあるようなエリアだった。
もたつけば人々に被害が出る恐れがあり、今回はより迅必な処処が必要になると判断した。
視察を終えてみんなが待機している京都リゾートへ。
ひとまずのんびり過ごしてからその時を待つ。
「そろそろ時間だ。転移するぞ。着いたら木花、咲那、バリア頼む」
「はい!/まかせろ」
全員を連れて転移し、私の合図で女神の強力なバリアが現場周辺を包みこんだ。
「まずはオレが出て会話を試す。ナビィは肩に乗って判断してくれ。戦いになっちゃったら木花と咲那も状況で出てくれ」
「はーい♪」
「任せとけ/はい!」
「あるじー、ぼくもいくよ」
「あるちー、いく」
「アオイも行く」
リルとラビ、アオイが立候補する。
「お前たちはまだダメだ」
「「「えー」」」
「明日から訓練してやるよ。試験に合格してからだ。それまでは我慢な」
「アオイもだいじょうぶなのになあ」
「リルはラビを守る大事な役目もあるぞ」
「そっかーわかったよあるじー」
「わかったよあるちー」
しぱらくすると、空気がビリビリと振動しだした。
そして少し離れた場所の時空が歪む。
現れたのはオーガを含む魔物たち。
「ナビィ、どうだ?」
「 前よりエリアが広いねー♪ 目の前にいるのはオーガ、オーク、ゴブリンだよ♫ 基本的には意思疎通は無理だと思うな。 見えないけど奥にいたヤツが山奥に移動しようとしてるよー♪」
「わかった! とりあえず目の前だな。『おーーい! こっちだこっち! 味方だぞーーー!』」
両手を挙げてニコニコ笑って声をかけてみる。
―――だめっぽいな。怒り狂って押し寄せてくる。
しばらくボコボコに殴られながら声をかけ続けてみたが収まる様子がない。
「だめかー」
「ふざけんな!/もう無理です!」
「いや、なんのダメージもないからだいじょ……」
言い終わる前に、木花と咲那が一瞬で駆けつけてすべて消し炭にしてしまった。
「おー、すごいな! なんだその魔法!」
「女神の怒りだ/怒りです」
「怒りってなにそれ。魔法ですらないだろ。なんかズルくないか」
「女神だからな/許すまじです」
うーむ。怒らせたら怖いな。気をつけよう。
「あるじー」
「あるちー」
待機していたリルとラビが駆け寄ってくる。
「あー! まだ魔物はいるから来ちゃだめだ!」
慌ててモンスターモニターで調べてみると奥にいた魔物がこちらへ近づいているのがわかった。
「やべっ! 来た!」
山奥から駆けてくるのは巨大な狼。
魔狼というやつらしい。
猛スピードで押し寄せた魔狼たちは…………
そのまま伏せをしてリルの前に畏まる。
「え?」
「???」
「あー、フェンリルだからだ/神獣だもんね」
「あらまあ♪」
魔狼たちはそのままお座りをしてリルに甘えた声を出す。
「あるじー、この子たちともだちになりたいってー」
魔狼10匹が仲間になったのだった。




