6-4 拠点探し
意志の通じなかったモンスターだったのは残念だったが、ひとまず初めての鬼退治は無事に終了した。
リゾートに戻ってウサギも少し落ち着いたようだったが、アオイからは離れようとしなかった。
「すっかりアオイに懐いたな」
翌朝、ぴょこぴょこアオイの後をついて回るウサギにみんながホッコリしていた。
私にも抱っこはさせてくれるがその時はふるふる震えてしまうのでもっと慣れるまで抱くのは我慢することにした。
でもアオイがこんなに私のことが好きなのだからきっとこのコもいつか心を許してくれるに違いない。
「名前も考えておきなよ。帰ったら命名式やるぞ」
「わかった! いい名前考えとくよ!」
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朝ごはんは京都のおばんざいだ。
小鉢に少しずついろんなおかずを添えて、炊きたてごはんに味噌汁と漬物。
最後はお茶漬けで締める。
もう完璧ですよこれ。
「アオイは仕事どうなってるんだ?」
「モンスター退治のことを話したらオフにしてくれたよ」
「大丈夫なのか?」
「まあもともと仕事詰め込んでるわけじゃないしね。女優の仕事中だと無理だったかもなあ」
いまはレコーディングも終わった直後でそこまで忙しくないらしい。
このあと、リリースタイミングになると番組出演や取材ラッシュにツアーのリハーサルも始まってかなりの繁忙期となる。
そして実際にツアーとなれば他の仕事はセーブされてライブに集中。
体調管理に気を使うくらいでまた少し余裕ができるらしかった。
今度しっかり仕事のことも聞いておかないとな。
しっかり仕事をするからこそしっかり遊べる。
そのへんは田城社長にはもちろん、必要としてくれるメディアの皆様や、なによりファンへの当然の礼儀だしな。
京都リゾートはとても居心地が良かった。
みんなにはリゾートで遊んでもらっておいて、私は市内の不動産に出向いてこの山の所有者を探すことにした。
幸いにもあのあたりは民有林で話があればすぐに売るというステータスだったらしい。
このあたりは間違いなく豪運が効いたんだろうな。
進められるだけの手続きをしてあとは不動産会社に委ねてリゾートに戻ったのだった。
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「ということで、近いうちにこのあたりの山は私たちのものになります」
みんな拍手して大喜びだ。
ウサギも飛び跳ねている。
うーん。かわいい。抱きたいが我慢。
「あとは転移用に大都市にはマンションの一室くらいは用意しておこうと思う。ほかのエリアは山の中にこんな感じのリゾートをいくつか作ろうかな」
スタンディングオベーションである。
舞台や劇場以外でも起きるんだなこれ。
実際、山は安かった。
それにしてもこうなると不動産に強い仲間が欲しいな。
ん? あれ?
いるじゃんか。卓司が。
確か超難しいとされる宅建士の資格も取っている不動産フェチだとか言ってたぞ。
宮古島のほかにもあれこれやってると言ってたな。
ラインで相談したらすぐに対応してくれるという。
サイドビジネスで親族に不動産会社もやらせているそうで、京都の山を言い値で買ったことを伝えたら怒られてしまった。
すぐに東京で打合せをしてくれることになる。
みんなには夜ごはんまでリゾートで遊んでいてもらうことにしたが、リルだけが着いてくるというので連れて行くことにした。
「あるじをひとりきりにしたら、しもべとしてだめだとおそわったのー」
「あのな、リル。そもそも主と下僕じゃなくてオレたちは仲間だからな」
「そういうだろうけどだめだぞっていわれてるのー」
うーむ。
まああるじ呼びもかわいいからいいか。
大きくなったらまた話し合おう。
太陽プロに転移して、田城社長と卓司に改めて状況を伝えた。
「モンスター退治って本当だったのか」
「シシさんまたすごいことしてるね」
「たまにあるみたいなんですよ。全部が全部、悪意を持って来るわけじゃなくてランダムで迷い込むみたいなんですけどね、今日のは完全な悪いモンスターでした」
「雪男とかネッシーとかさ。ああいうUMAにも中にはホンモノもいるってことかな」
「あー、たぶんね。嘘もあるだろうけどなかには迷い込んだやつを目撃したとかだったのかもなあ。迷いドラゴンもあり得るみたいだし」
「迷信っていうのもホンモノはあるんだな」
「というわけでさ、ともかくも不幸な事故を防ぐのにランダムで鳴るアラートに備えて全国に飛ぶ必要があるんだ。その時に安全に転移に使えるホームが各地に欲しい」
「わかりました! 任せてください!」
「シシから預かってる資産も順調に転がってくれてるから予算の心配はしなくていいぞ」
「それは助かります。管理任せっぱなしですみません。ありがとうございます」
「どのあたりにします?」
「日本中に行けるようにまんべんなく拠点を作りたいんだ。ヘリコプターよりは速く飛べるからそれくらいの位置関係でバランスよくだな」
「どこからツッコんでいいのかわからんな」
「空を飛ぶってとこですよ社長」
「だよな。空を飛べるのか」
「うん、なんか飛べた。で、上モノはコピーで作れるからさ。ひと目につかない土地だけあればいいんだ。京都の拠点なんて誰も立ち入らない山の中だし。そういうのがむしろいいかも」
「水道電気とかどうしてるんだ?」
「そこはほら。マジカルパワーでなんとでもなりますから」
手から水を出して空に浮かべてシンクへ流す。
「やばい力ですね」
「大都市はどうせ落ち着かないから腰を据えないし、転移の中継専用にする。それこそ投資用マンションが各地に一室あればいいかな」
「関西で言うなら京都の山奥をメインホー厶にするから周辺の各県にはワンルームがあればいいみたいな感じか」
「そうですね」
「りょーかいです! すぐに探してみますよ」
話はまとまり、卓司はすぐに各所に連絡を始めてくれた。
ひとしきりの指示を出し終えたタイミングで改めて話をする。
「少し大事な話なんですけど……。魔法、たぶんふたりもそのうち使えるようになると思います」
「?」「え!」
「なんかこう、絆というか。繋がりというか。そういうものが強い人には神気というのが伝播するみたいなんですよ」
「ほう」
「マジすか! 嬉しいな」
「ふたりはたぶんうつっちゃうでしょ」
「そんな風邪みたいな言い方するようなことかな」
「これまではあまり気にしてなかったんですけどね。怪物とか関わってきちゃったしこうなるとなにかに巻き込んでしまうような気もして」
「オレは嬉しいよ。魔法なんて使えたらすごいじゃないですか。それもシシさん譲りなんて」
「オレもだよ。シシとの絆でもらえるなんて光栄だよ。手伝いもしたいしな」
「そう言っていただけるなら少し気持ちが楽になりました。ありがとうございます」
不安に思っていたことを伝えたら気持ちはむしろ嬉しい方に傾いた。
改めてこのふたりが仲間なんだと思えた。




