6-1 神界リターン
野球騒ぎもようやく落ち着いてメディアも自宅への張り付きを控えてくれるようになった。
単なる高校生なのでとしきりに田城社長が訴えてくれたおかげでもある。
これからは事務所の寮に戻ると宣言もしてくれたから自宅は安全だろう。
合わせて宮古島のホームでは念のため、55歳のシシをデフォルトに戻すようにした。
ということで、久しぶりにオフをみんなとのんびり過ごせてリフレッシュできた。
リルはよほどさみしかったのか、しばらくは片時も私から離れなかった。
うーむ。とんでもなくかわいいな。
試合中はずっと宿舎だったからな。
球場には入れなかったからね。
思う存分に甘えさせてあげた。
そしてその日の夜。
創造神さまに神界に招かれた。
今回はアオイも一緒だった。
「ここが神界かあ。すごく気持ちいいところだね!」
アオイが大きく深呼吸をしていると、そこに創造神と時空神、フェンが現れる。
「あー! お父さーん」
リルはフェンとじゃれている。
よかったな!
「ようきたの」
「うむ、よくきた」
「創造神さま、時空神さま、私の新しい仲間のアオイです。アオイ、創造神さまと時空神さまだよ」
「はじめまして。アオイです」
「いい魂を持っているな」
「ふむ。きれいなものじゃ」
「わあ、神様に褒められたー!」
「私と扱いが違う!/ずるいと思うんだ」
「まあまあ。女神の心がきれいなのは当たり前なんだろ。あいさつの褒め言葉だよ」
拗ねるふたりをなだめつつ、神様へ問いかける。
「で、今日はどうしたのですか?」
「ちと提案があっての」
「提案?」
「おぬし、鬼退治をする気はないかえ?」
「鬼退治?!」
「まあモンスター退治じゃな。まれに違う世界がこの世界と混じることがあるんじゃよ。迷い込んだそれに対処してはどうかと思ってな」
「どこから聞けば……なんで私が?」
「今まではよほどの時を除いて介入しなかったが今はなんせ半神のシシがおるからな」
「それはまあそうですよね。でもモンスターってヤバくないです?」
「ヤバいぞ。じゃがまあシシなら余裕じゃな」
「本当かなあ」
「あるじなら大丈夫だよー」
「うむ。余裕であるな」
まあフェンがそう言うなら大丈夫なのかな。
「リルだけでも大抵の輩は瞬殺だぞ」
「え! それは頼もしいな!」
「時空の歪みが発生する前にアラートが鳴る便利なものがあるので渡しておこう」
てっきり神器みたいなものかと思ったが渡されたのは現代風の機械でまるでケータイのようなものだった。
「これはモンモニ……モンスターモニターというものじゃ」
数日前から遅くとも1日前には時空の歪みが生じる予測ポイントと予想時間、出現するモンスターのデータが届くそうだ。
かつて大規模な歪みが起きた時に人間が作ったものらしい。
「すごいな。こんなものが作られていたのか」
「その時のことはまあ今度また教えるよ。まずは預けるぞ」
「便利だぞ。私の手間も省けるというものだ」
「ありがとうございます。私の力が及ぶ限りはがんばります」
「木花と咲那がシシに預けた力は神を超えるものじゃ。何の心配もいらんよ」
「さすがにそれは言いすぎでしょう。ところで質問があるんですけど、『迷い込んだ』という言葉に意味はありますか?」
「さすがじゃな。その通りだ」
「時空の歪みに迷い込むものが必ずしも悪意にまみれたものとは限らんよ。異界のモノがこの世に迷い込んでくるというのが正しい説明となる」
「それに『対処せよ』ということですね。……必ずしも打ち倒す前提ではないということなのかな」
「神はそこまで干渉せんよ。まあせいぜいは声が届く者にアドバイスするくらいかな。すべてはそこに生きるものたちの決めることじゃ」
私は少し考える。
「――私のものさしが正しいかはわかりませんが、私なりの判断で対処しようと思います」
「それでいい。では任せたよ」
「美容グッズも待ってるぞ」
神様たちとの面会を終えて、私たちは宮古島へ帰還した。
「モンスターか。ピンとこないな」
「そうだろうね/私がついてるから安心しろ」
「どんなのが来るのかなあ」
「ぼくがたおすよー」
「とりあえずモンモニはコピーしとけば♪」
ナビィのアドバイスでモンモニを人数分コピーしておく。
あとは試しておきたかったこと。
アオイへの「譲渡」だ。
神界にも行けたのだから神気はもう備わっているはずだ。
まずは身を守るための「肉体強化」。
その次に「転移」と「収納」は持たせておきたい。
毎日ひとつずつ試してみたら、いずれも渡すことができた。
このあともゆっくりいろんなものを試してみようと思う。
女神はまあ大丈夫だとして、アオイには自分の身を守れる強さを持たせてあげたいのだ。




