5-9 予選
ついに夏の予選が始まる。
私の参戦で今年はいつもより早く高校野球のニュースが世間を賑わせている。
ホリ高のスターティングはこうだ。
1 獅子川 センター/ピッチャー
2 沢木 ピッチャー/センター
3 伊藤 キャッチャー
4 大木 サード
5 塩田 ライト
6 大崎 レフト
7 福野 ファースト
8 家山 セカンド
9 成田 ショート
私はもっとも打順が多く回る1番。
敬遠されても盗塁で間違いなく3塁に辿り着く。
直後には私を除いて最も打率のいい沢木がおり、ワンヒットで得点となる可能性が高い。
その後には長距離砲の伊藤主将、大木が控える。
うまく行けばここでも大量得点が望める。
そして7番からは相手が苦しむ打線がスタートする。
俊足の福野が真の1番打者で、続く家山と成田は技巧派のアベレージヒッターだ。
そして2巡目の私へ打線が繋がる。
これは相手にとってはめちゃくちゃキツいはず。
必ず優勝してみせる!
―――――――
東京は学校数が多いので東西にわかれてトーナメントが組まれ、私たちのホリ高は東ブロックで130校以上が参加となり、5回戦を勝ってようやく準々決勝進出である。
私たちは2回戦からの試合であったが、準々決勝まで全試合コールドゲーム勝ちという順当な勝ち上がりとなった。
なおここまでの4試合、24回の打席に対して10敬遠。
14打数13安打、10本塁打である。
ほとんどホームランなのだからこの敬遠数で収まっているのが不思議なものだが。
但し敬遠されたら前が詰まってない限り全部盗塁成功させているけれどね!
そして準々決勝。
ついに私への全打席敬遠が行われた。
もはや予選とは思えないメディアとファンの集結で球場は常に超満員である。
敬遠のたびに大ブーイングが起きるがそれを苦にせず相手監督が無情な指示を出した。
ランナーが溜まっていても迷いなく敬遠。
むしろ潔い。
そしてこのあたりになると相手ピッチャーは将来のプロ入りを嘱望される剛腕たちである。
後続もこれでのようにタイムリーを打つことができず、ここまでホームを踏むことはできていなかった。
最終的に満塁になってでも私を敬遠されたことに、それまで凡打で倒れていた伊藤主将が意地のサヨナラヒットを放つという感動的な展開でホリ高はベスト4へと進出したのであった。
そして決勝をかけた準決勝。
甲子園の常連校との対戦についにホリ高のワイルドカードが切られる。
私の先発登板であった。
これまではすべて沢木が完投してたきたが、ほとんどがコールド勝ちだったのを、準々では最終回までもつれ込んでしまった。
その時の疲れを決勝前にリセットする目的で監督がついに判断したのだ。
私のピッチャーポジションがバックスクリーンのスコアボードに表示され、それがアナウンスされると、球場がどよめいた。
その余韻が残ったままでのプレーボール。
そしてその初球。
162キロと表示された球速に球場が静まり返る。
そこからの歓声は球場が震えるほどのとてつもないものだった。
その後も150キロ後半から160キロ前半で高低左右に抜群のコントロールで投げ込まれるストレートには、高校生では手も足も出せなかった。
最速は165キロで、変化球は封印。
7回コールドの完全試合。
世の中がひっくり返ったのだった。
―――――――
そしていよいよ決勝戦。
先発は沢木。
疲れないように一巡メドで3回ずつセンターの私と投手交代するスタイルは相手を翻弄して相手に得点を許さなかった。
最終回裏の攻撃。
それまで連続敬遠されていた私の前にはランナーが3人。
満塁である。
やむなく勝負したその結果は――。
劇的な満塁サヨナラホームランであった。
その瞬間、日本中が湧いた。
世界的なバスケットボールプレーヤーがサヨナラ満塁ホームランで甲子園行きを決めるという完璧な展開はあまりに劇的すぎた。
この時点で野球というスポーツはそのステータスを取り戻したと言えたのかもしれない。
――――――――
「とんでもないな」
「あそこで主役に打順が回ってくるんだね/ずっと敬遠なんて反則だ。最後はすっきりしたぞ」
「まあ大半ホームランだからな。まともに勝負してくれるなんて思ってないよ」
「これ甲子園どうなるんだろうね!」
「勝負しないと世間が許さない風潮あるよな」
あまりにメディアが張り付きすぎて宮古島にも転移できず、私たちは東京の実家から動けずにいた。
ここは卓司の事件で太陽プロのタレントも出入りする場所だとわかっているので、田城社長にも来てもらえばなにかあってもまあ問題はない。
アオイがいることはそれでもバレないほうがいいのでお忍び転移でのお祝いである。
「ねぇ社長、みんなで試合観に行こうよ」
「いや無理だろ。ただでさえ夏の甲子園は人気だからな。今年なんて間違いなく発売と同時に即完だ」
「応援団で木花と咲那は観られるんでしょ。いいなあ」
「地元の人たちも入れるけどまあそこに卓司とかアオイとかACEがいたら驚くわな」
「家で応援だな。その代わりWBCはなんとしても行くからな」
「代表に入れないかもしれませんよ」
「「「「それはない」」」」
まあ私が納得するかどうかってことになってたしなあ。
本当に代表入りなんてしていいのかな。
ま、甲子園終わってから考えよう。
評価が変わるかもしれないしな。
なんてことを言っていたのは何だったのか。
私は夏の甲子園で怪物みたいな成績を残して優勝してしまうのだった。




