5-5 練習あるのみ
バスケでお付き合いのあるブランドをはじめ、メーカーから道具一式が野球部に大量に届いた。
みんな大喜びだ。
「監督、こういうのっていいんでしたっけ?」
「契約はだめだけど善意の提供だな。甲子園出場が決まったりするとたまにあるけど、いち選手が入部しただけでこれは異常だな」
「まあオレはほとんど道具がなかったからありがたいですけど」
「大人の対応で頼むよ」
ありがたく使わせてもらうことにした。
グローブは特に馴染むまで時間がかかる。
外野手用のオールラウンドなグラブと、ピッチャー用のグラブは使い分けたほうがいいと言われたけれど、別に手元を隠すほどの球種があるわけでもないからなあ。
とりあえず二種類を使い分けることを前提に、フィーリングが合うものを選んだ。
そしてOBからはピッチングマシーンが届く。
これに喜んだのは沢木だった。
「バッティングピッチャーから解放される! オレもいま調子がいいから新しい球種が欲しいんだよ! これで個人練習の時間が増える!」
いつも比較的クール沢木にしては珍しくわかりやすい反応をしていたのだった。
私のスケジュールはなかなかハードだ。
まず朝練はすべて野球部。
放課後は月〜木が野球で、日曜のシシTVに合わせて金曜と土曜はバスケをしている。
タレントとしての仕事はセーブしているが慌ただしいのは変わりない。
それでも毎日が楽しく充実していた。
私のピッチング練習は主に屋内で行った。
リリーフ救援は隠し技だ。
余計な情報をわざわざ与えることはないという監督の判断だ。
ただし一度試合で使ったらあとは隠さずに武器にする意向とのことだ。
沢木がちゃんとした握りを教えてくれたのでストレートの球威と制球力はそれだけでかなり上がった。
球速が160キロを超え出したのだが、さすがにこれは計測器の故障だろう。
バスケのシュート同様、ピッチングも再現性が大事だ。
握り、フォームを何度もトレース、アジャストを繰り返してだんだんと様になってきた気がする。
変化球が面白いように曲がるので、球種を覚えるのがめちゃくちゃ楽しかったが、肘の心配をされたのでひとつだけ使うことにした。
「普通なら落差を求めたくなるけど、オレがバッターなら緩急つけてくれるならそれはむしろラッキーやと思うやろな」
キャッチャーで主将である伊藤の意見だ。
「どういうこと?」
「あんだけ速い球がまともに打てるわけあらへんからな。遅い球を待つ」
「あーね」
「これだけ重くて速いストレートがあるんやからな。ほんまならコース選択だけで余裕や」
「えー、でも変化球も投げるの楽しいんだよ」
「なら速さは活かした高速系の変化球にしたらどうや。左はシュート系ゆうけどな」
「ならそれにする」
「任しとけ。全部捕ったるから安心せえ」
すぐに沢木のところへ行き、アドバイスを乞う。
練習を重ね、高速の横変化を覚えた。
「エグい変化だな。これ伊藤大丈夫か」
「え?」
「普通はこの速さをまともにキャッチングなんて無理だぞ」
たしかに。
いま受けてくれている成田も変化球は捕れない。
実際、主将は影でめちゃくちゃ練習をしていたと後からわかった。
そっか。
捕手は女房とはよく言ったものだな。
主将がケガしたらオレは本気で投げられないんだ。
感謝の念を持ちながら私は練習をするのだった。
――――――――
「しくじった」
「またやらかしたのか/ショウらしいなあ」
「練習に夢中だった」
「別にいいんじゃないの?」
バスケの時にオフにした【味方支援】がいつの間にか発動していたのだ。
新しいチームでの練習だったからか、切れていると思っていたのが自動オンになっていたようで、みんなの実力がかなりアップしていた。
「まあそこまでのズルじゃないよ/神様の友達へのラッキーな特典だな」
「そう思うことにするよ」
開き直った私はひたすらに練習に打ち込む。
夏の甲子園予選までと3カ月弱だ。
高校最後の熱い夏は野球に打ち込むんだ!
「と思ってたのになあ。なんでこうなった」
私は神界に呼び出されていたのだった。




