5-3 妨害工作
そして放課後。
練習のあと、全員でミーティングを行った。
伊藤主将が真剣な顔で告げる。
「今日からはケガに注意してくれ」
「え? 当たり前だよね?」
「……練習中やない。登下校や」
「……マジか?」
「8人になってから途端に静かになったけどな」
「また妨害があるってことか?」
「ましてやシシが入ったんやぞ」
「!」
「そうか!」
「みんなでシシを守ろう」
私はそれに異を唱える。
「多分それは違う。危ないのはみんなだよ」
主将を除き、みんなはきょとんとしている。
「……シシの言う通りや。甲子園出場のために世界の宝であるシシを怪我させようなんて度胸のあるやつはおらん」
全員が理解した。
「シシにケガなんてさせなくても誰かひとり欠ければオレらは終わりや」
「確かに」
「それで試合放棄が決まるな」
「こんな心配しなきゃいけないなんて」
私が告げる。
「みんな。今日一日だけは気をつけてくれ。ウチのプロダクションに相談する。とりあえず今日は送迎を用意するからみんなで帰ろう」
イラついてきた。
こんないい奴らなのにっていうのは当然だ。
それ以上に許せないだろ。
敵を調べ上げてやる。
―――――――
田城社長は知り合いに頼んでロケバスを用立ててくれた。
道中、改めてここまでの経緯を聞く。
監督がケガをした日について。
引き抜きの時期と転校先。
1年生の退部について。
そして校内の敵対人物について。
「どういうことや?」
「恨みの線だよ。他校の仕業だというのも分からなくはないけれど、ウチを潰せば必ず甲子園に行けるわけじゃないだろ」
部員は絶句する。
そしてお互いの視線が泳ぐ。
何か心当たりがあるようだな。
「大事なことだ。聞いていいか?」
「ひとり思い当たる厄介なやつがおる。いま3年生の敦賀さんや。野球部の先輩なんやけど、2年の途中で退部した問題児やった」
「俺たちの代に上手いやつが多くてレギュラー落ちして辞めたんだけど、不良仲間と野球部に露骨に嫌がらせを始めた」
「1年生はそれで辞めるやつが続出したんだよ」
「高校野球は学校の不祥事で簡単に出場停止になるからな。オレのせいや。穏便に済ませようとして増長させてしもたんや」
「……なんとかなりそうだな」
「え?」
「オレが高校野球に挑戦することを発表するよ。そしたらすぐにマスコミが張り付くはずだ」
「!」
「そんなローカルのヤンキーに何もできないさ。1年生も戻るだろ。9人揃わなくて出場辞退なんて心配は少なくともなくなるんじゃないか?」
「そうやな! ありがとうシシ!」
「少し騒がしくなるけどそこは我慢してくれ」
「取材が来るなんてむしろうれしいよ」
テレビへの映り込みを喜ぶ部員たち。
私はすぐに田城社長に電話をして田代理事と会見の段取りを進めてもらうように依頼をした。
――――――――
自宅に帰った私はみんなにこのことを伝える。
「ということで甲子園を目指すことになった」
「楽しみだな/ワクワクするね」
「ナビィも♪」
「とりあえずタイムリープして監督の事故原因を調べてくる」
そして年末の事故当日へジャンプ。
交通事故のあったという現場で張り込みをする。
強めのアラームが鳴る。
見るとヤンキーたちがバイクで待ち構えているのがわかった。
その中に例の先輩がいるのも確認。
「こいつらに絡まれて事故に遭うのか」
周囲を見渡すと防犯カメラを見つけたので調べるとアクティブなものだったので、カメラの向きをヤンキーたちに向けさせてもらい、意図的な事故であることの記録が残るようにした。
近くの交番に不審者の通報をして警察官をふたりこちらに向かわせる。
あと少し離れた場所にいた通行人たちにそれとなく私の存在をバラして一緒に目撃者になってもらうように仕向ける。
やがて監督の運転するクルマがやってくる。
そこへバイクが囲んで通行妨害を仕掛けてきて、クルマはガードレールにぶつかってしまう。
監督にケガはなかったと聞いているので無事を確認しつつ、時間停止をかける。
クルマに放り込まれそうになっている酒瓶をバイクのヤンキーの荷物に戻して、バイクは偶然エンジンが壊れた感じにさせてもらう。
お、警察官も来ているな。
はい、時間停止解除!
激しい衝突音で辺りが騒然とする。
混乱の中、警官にバイクの悪質な行為を証言する。
「あれに映ってないですかね?」
それとなく監視カメラの存在も教えておいた。
監督が謹慎となったのは、被害者を装う少年たちが車内から飲みかけと思われる酒瓶が発見されたことをマスコミにリークしたから。
警察の調べで本人からは酒気帯びは検出されなかったものの、騒ぐマスコミに学校がやむなく対応した結果だ。
おそらくこれで未来は変わる。
過去にここまで関与したのは初めてだが、運命はないと言われていた。
お咎めがないといいのだが。




