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5-2 朝練



その日の放課後、野球部の部室を訪ねてみた。


不在だった。

グラウンドにも誰もいない。


そこに一人の坊主頭の男子生徒が走ってきた。

遅れて残りの部員たちも到着。


「はぁ、はぁ、えっと、シシくん、だよね」


「お、おう」


「さっき、まで、校長先生に、呼ばれてて。はぁはぁ、ま、待たせて、ごめん」


「「「「「「ぜぃぜぃ」」」」」」


「まあちょっと落ち着こうか」


少し息を整えてから1番ガタイのいい部員が改めて話をした。


「ようこそ、オレが主将の伊藤や」


次々と挨拶をしてくれる。


「獅子川です」


「来てくれたゆうことは、一緒に甲子園目指してくれると思ってええんか」


「そのつもりだよ」


全員が黙り込む。

そして爆発させるように叫んだ。


「「「「「「「「やったー!!!」」」」」」」」



部室に移動してまずは話を聞いた。


「ここはそれなりの強豪だよな。何が起きたんだ?」


「強豪校に理不尽な引き抜きされたんや」

「監督も事故で謹慎処分になってしまって」

「そこから有力選手で転向するやつが続いた」

「1年生はほとんど退部した」

「今年は絶対に甲子園に行けると思ってたのに」

「春のセンバツも狙えなくはなかった」

「こんなことになるなんて」


みんな口々に事情を訴えてくる。


「なんか高校野球に似つかわしくない話だな」


「こんなことがあるなんてオレたちも信じられへんのや」


「わかったよ。何ができるかわからないけどチームには参加させてもらうよ。でさ、申し訳ないんだけど………道具に何が必要なのかもわからない!」


「わははは! まかしとけ! 使えるもんはみんなの貸したるからな」


そこに女子マネージャーが飛び込んでくる。


「とりあえずは採寸させて! ユニフォームを急いで発注しないと!」


採寸をされながら、みんなから必要なものを教えてもらう。


今日の練習終わりにオススメの店を紹介してくれることになった。


―――――――


「グローブにもいろいろあるんだな」


「キャッチャーとファーストとピッチャーが特殊かな。まずはオールラウンダーでいいと思うよ」


「シシは左利きだよな。ファーストの選択肢が残るからとりあえずはまだ買わずに部室に左用もあるからそれを使う感じでいいんじゃないか」


「あとは色を揃えてるアンダーウェアとかソックス、大事なのはスパイクだな」


「バットも好みがあるからさ。部室のやつ使って気に入ったのを買うといいよ」


「5打席連続ホームランのときに使ったバットは?」


「言いにくいんだけど、適当にあったものを使った」 


「まじか」

「エグい」


買い物を終わらせてみんなと少し話し込んでから明日の集合時間などを教えてもらって解散した。

そして人数が足りてないのに今でも朝練も頑張ってやってたことを知る。


みんないいやつすぎる。絶対に応援しなきゃな。


翌朝、集合時間より早く着いたのに私が一番ビリだった。


うん。頑張りやさんたちだわ。


まずは柔軟。

キャッチボール。

そこから今日は私の適性を知るための練習となった。


まずはいきなりフリーバッティング。

エースの沢木が軽く投げるボールを打ち込む。

いろいろなバットを試すように言われたが全部ホームランなのでよくわからない。

それでも一番振りやすいものを見つけることができて、それに絞ったら飛距離がエグく伸びた。


「なんかコレっぽい気がします」


「飛距離重視よりバットコントロール重視か」


「それで飛距離が伸びるとか意味わからん」


「あらゆる方向に打ち分ける技術があることを解析結果が証明してるからな」


「次は守備だ」


ここでも私のスキル【予知】が機能する。

打つ前に打球の飛ぶ方向がわかるのだ。


「なんか打つ前にポジション変えてね?」

「変えてるよな」

「なんちゅうカンの良さや」

「バッティングもそうよな」


結局、チームとしてどこを押さえるべきかを考えてポジションを決めようということになった。


異常な打球予測が効くのなら少なくともレフティにとって送球不利があるからサードやショートは無しみたいな考え方はしないことにしたらしい。


ボールの行方がわかるのだから送球を受けるだけの回数が多くなるファーストの選択肢も真っ先に消える。


なら肩を確認しようと外野の守備をさせてみたらそれがピッタリハマる。


なんせ打つ前から打球が飛ぶ場所がわかるのだ。

守備範囲は恐ろしく広い。


そしてなにより。

肩がエグかった。


レーザービームとかいうレベルですらない。


「これ、ピッチャーやないか?」

「沢木の負担が減らせる!」

「センター確定」

「沢木と交代させながらやれるぞ」

「それありがたいかも」


サクサクと戦略が決まる。

最後は打順だ。


相手が勝負さえしてくれたらたぶん私はホームランを打てる確率が高い。

敬遠されたら盗塁で三塁までいけるだろう。

確かめるまでもなく足は速いし、牽制球にも予知が利くだろうしな。


つまりは1番打者だ。


そもそもシンプルにいちばん打席が多く回るのだから。


となると二巡目以降はシシの前にランナーが欲しい。


ホリ高のクリーンナップは3番4番5番ではない。

8番、9番に出塁率の高い選手。

そして2番に強打者だ。


朝練でチームの戦略が決定したのだった。

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