4-5 ノーカット企画
ACEのコンセプトは固まった。
2カ月あるので先に卓司のプロジェクトを先に動かすことを検討する。
今日はその打合せだ。
家では女神と精霊がいるから仕事にならないので最近馴染みになった飲み屋でサシで打合せをした。
「コンセプトは決まってるからな。あとはシチュエーションだな」
「普通のスタジオでも面白くなる仕掛けだよね。なんか凝りすぎても嘘っぽい気もするんですよね」
「おー、分かってるな卓司! そうなんだよ。最初はオレもあれこれ考えすぎててさ。何週かして戻ってきたところなんだよ」
「だよねえ。ボクもあれこれ考えすぎてました。それはそれで楽しかったんですけどね」
「なんか場所に凝るとさ、どっかで見たことのある単なるドキュメンタリーになるんだよな」
「そうそう。それならテレビでやればいいってことになる」
「……シリーズにしてみるか?」
「どういうこと?」
「最初は普通の白ホリのスタジオでやろう。そのほうが企画のわかりやすさが伝わる」
「それはそうかも!」
「第二弾でハウススタジオかな。そこでちょっとアクセント作れたらいいってくらいでどうかな」
「そうしましょう。いつもなら紙の完成形しか見られないところを動画で生見せすることに意味があるしね」
「私服でノーメイクの入りは問題ないよな? なんなら下地だけはして衣装を私服に見立てるのもアリだけど」
「それは止めようよ。どうせならガチでいきたいな」
「有り難いよ。クライアント関係は気をつけろよ」
「それは普段から気をつけてますからね。私生活そのまんまで大丈夫ですよ」
「スタイリスト、ヘアメイクは逆にいつもの指定がいい。顔出しできる人ならね」
「そういえば打合せも撮ろうっていってたましたよね。今日も撮ればよかったなあ!」
「……悪い卓司。実は動画回してるんだわ」
「え?」
私はそれとなく置いてあったカバンに潜ませていたアクションカメラを指差す。
あとは引きの絵を撮るカメラも2台。
ついでに私の胸元にも。
「田城社長に今日から回さないと意味がないって言われてね」
「マジっすか! それ単なる隠し撮りじゃないっすか。ヤバい話しなくてよかったーーー」
「そのときはピー音入れることにしてた。それもリアルだし」
「めちゃくちゃヤバい企画じゃないですかこれ。ドッキリ要素強すぎるでしょ」
ふたりでほろ酔いで楽しく打ち合わせができた。
ついでに第一弾も撮れてしまった。
―――――――
「この企画のいいところは編集しなくていいことだな」
「確かにっす!」
コイツは会社の部下だった椎野。
見た目はチャラいのに中身は真逆。
真面目で武士みたいなヤツだ。
ならなぜそんな金髪のツンツン頭なのか。
ネックレスも指輪も派手派手だし。
紙は本社案件なので誰かアシスタントを付けると言われたので彼を指名した。
アシスタントって言っても彼はもう部長だし編集長だけど。
特殊企画なのでほかのなんちゃって編集者は付けられないしな。
私の一番弟子なら間違いない。
「シシさんこんな企画温めてたんすね。やらせてほしかったなあ」
「シイノはもう編集長だしなにより部長だろ。企画を投げる側なんだからな」
「オレは誰かの下が合ってるんですよ。シシさんにはずっと残っててほしいです」
「ダメだな。オレはもう半分抜けてる」
「シシさん会社作ったんでしょ。なんで連れて行ってくれなかったんすか?」
「オレが抜けたらお前があの会社支えなきゃダメだろ。引き抜きなんてできないよ」
「万が一事故ったら行っていいっすか?」
「わざと事故らないならな。シイノのことはちゃんと狙ってるから安心しろ」
「うす! やる気出ました!」
シイノと一緒にカメラマン、スタイリスト、ヘアメイクと打合せをする。
もちろん今回も動画は回している。
当然今回は事前にそのことを伝えてあるのでトラブルはない。
改めてノーカット企画において顔出しが条件になること、紙はダイジェストで動画コンテンツがメインになることなどを説明する。
同時に大事なギャランティのことも。
企画が企画なのであとから揉めないようにそのあたりはきちんとしておきたい。
単純な紙の仕事ではなく、なにより本番のみの仕事ではない。
動画もついてることももちろん、何より顔出しだしね。
紙+動画+出演料、合わせてかなり高めの設定だ。
みなさん、何の問題もなく了承してくれた。
どころか、めちゃくちゃ面白がられて感謝された。
もちろん金額にはピー音がかぶるけどね。
撮影が楽しみだなー!




