9-⑬ ダンジョンもクセだらけ
話を聞いてみるとどうやらかなりたちの悪いダンジョンのようだ。
まずふたり一組でしか受け入れない。
入ると最初の部屋まで1時間ほど歩かされる。
そしてその部屋でモンスターを倒すとなぜかダンジョンの外に転移で返されるそうだ。
倒してるのに進めないとなると……。
「トラップ……ですかね。倒し方とか、倒す順番とか?」
私の声にみんなが反応する。
「……あるかもな」
「順番も何も出てくるのは1種類だぞ」
「倒し方って言われてもな」
「ガラたちがダメなら一度花川くんかトミーくんを呼ぼうか」
おー。ツバメ伝記の大物!
親友の冨川さんだな。
あの人かっこいいんだよなー。
ツバメとの友情ツンデレが楽しすぎた。
ふたりの絆が泣けたなー。
「まあやってみるさ。おいシシ! 行くぞ!」
「いやもっと情報を整理してから……」
なんてことをガラが聞いてくれるはずもなく。
私はダンジョンへ押し込まれてしまったのだった。
―――――――
あたりを見渡すと灰色の壁に囲まれた部屋にいた。
目の前にはひたすらに長い廊下が続いている。
「ガラ、もっと話を聞いてからでよかっただろ!」
「待つのは性に合わん」
「生き急ぎすぎだろ」
「いいんだよ。早く進むぞ」
あ、マジックボックス使えるのかな。
てかナビィは? クマ吉は?
ふたりを呼び出してみるとちゃんと召喚出来た。
「入るときはふたり縛りってだけか。魔法袋の中身には干渉しないんだな」
「みたいだね♪」
ってことなら時短できるな。
私はタンドラを出してガラを押し込み、1時間歩かされると言われた廊下を一瞬で突き抜ける。
目の前にはフロアボスの部屋と思われる扉があった。
「おお、こりゃ楽だな」
「みんなもマジックボックス持ちだよね♪ 応用が足りなさすぎー♪」
「む、確かにそうだな。ま、ともあれ入るか」
「ちょっと待て。やみくもに倒しても意味がない。入ったら時間停止をかけて状況判断するからオレの指示を待ってくれ」
「ふむ。まあいいだろう。任せる」
扉を開けて素早く中に入り、扉が閉まるとモンスターが姿を現す。
湧いてきたのはブラッドベアだった。
「うわ。ここでクマちゃんたちの本隊かよ」
「湘くん! 余計な感情はダメだよ」
「なんだ? なんか縁でもあるのか?」
「ブラッドベアが仲間にいるんだ。あいつらはちゃんと喜び悲しむんだ。感情があるんだよ!」
私に彼らを倒すのは無理だ。
とりあえず時間停止してどうにか離脱する方法を探すしかない……とそう考えたその時。
クマ吉がスッと私の前に出た。
「クマ吉!」
「……シシ殿は優しすぎるのでござるよ」
「どうするつもりだ?」
「だからこそ尽くす甲斐もあるというもの。ここは拙者にお任せくだされ」
そしてクマ吉と私を白い光が包み込む。
このタイミングで絆が発動したのか。
「……同胞の者、すまんな。だがわが主に敵対するなら断じて許さぬ」
そう呟いたクマ吉が本来のブラッドベアの姿に変貌し、その魔力を全身に漲らせた。
ゴーレムは魔力源であるマスターの能力に大きな影響を受ける。
神をも超える力を持つシシがマスターになった時点で、クマ吉の戦闘能力はすでにオリジナルのブラッドベアなど遥かに凌駕していた。
部屋に湧いていたブラッドベアは揃ってその場で頭を垂れてクマ吉に従うポーズを取ったのだった。
―――――――
部屋にはずらりとブラッドベアが並んでいる。
その数は100体。
ナビィに促されて神眼で見てみると、残らず「神僕」となっていた。
なお、クマ吉は「神獣/ゴーレム」になっていた。
「おいおい、とんでもないな」
呆れたようにガラが笑っている。
「クマ吉、ありがとうな」
元のサイズに戻ったクマ吉を抱いてガシガシと頭を撫で倒す。
「いやいや、シシ殿のお役に立つのが勤めでごさるから当たり前のことであるからして」
照れながらも短い尻尾をフリフリしてるし。
かわいいやつだ。
ほどなくして部屋の奥に扉が現れる。
側には宝箱。
よし! ミッションクリアだ。
宝箱の中身は……ナックルダスターだった。
カッコいいな。
懐かしいボクシングマンガで憧れてたやつだ!
ガラも欲しがったのでコピーしてワンセットあげた。
「へえ、エンペラーナックルだってさ。打撃力がめちゃくちゃあがるらしい」
「ワシにぴったりだな!」
そういってガラがナックルダスターを装着してから壁に拳を打ち込むと、ダンジョンの壁が一面崩壊した。
は? ダンジョンって破壊できないんじゃなかったか?
「すごーい♪」
「こりゃいいぞ!」
「ダンジョンに刺激を与えちゃマズいだろ」
「全体に与えるダメージじゃないし、部分的なら大丈夫なんじゃないかなあ♪ わかんないけどねー♪」
いやいや、ヤバいだろ。
……でも気持ちよさそうだな。
アラートもこないし大丈夫なのかも。
ちょっとだけやってみるか。
調子に乗ってふたりでどんどん壁を壊して進んでいったらとんでもなく広い空間に出た。
「なんだここ」
「うむ。明らかに気配が変わったな」
マップにモンスター反応はない。
目を凝らしてあたりを見回してみると遠くになにかが浮かんでいるのが見えた。
「え、あそこにあるのってダンジョンコアじゃないのか」
「あー、ほんとだ♪ 近道したねー♪」
「ほう、あれは壊していいのか?」
「いやガラ、ちょっと待て」
地脈に打ち込まれた人工装置の破壊が本来の目的だ。
いきなりコアを壊していいのか?
周りにはほかに何もない。
私たちはゆっくりとダンジョンコアへ向かうのだった。




