9-9 遭難した
ダンジョンコアを破壊したら別の場所に飛ばされた。
やられたな。なんかの仕掛けがあったのか。
神眼でも見抜けないことなんてあるのかよ。
で、どこだよここは。
見渡す限り大草原だ。
そして周りには誰もいない。
「みんなバラバラに飛ばされたか、オレだけ飛ばされたか」
後者はマズい。
次元を斬れるのは私だけだ。
マップを開いたが赤青緑、なんの反応もなかった。
スケールを広げると赤い点はいくつか見つかった。
あ、マジックボックス!
「ナビィ!」
だめか。
だとするとキツいな。
と、しばらくしてナビィが顕在化した。
「ごめん、なんか気絶してたぁ」
「! 大丈夫なのか!?」
「もう平気! なんかリセットかかったみたいな感じ」
「何が起きた? コアを壊した瞬間に強制転移させられたみたいだ」
「わからない。なにか仕掛けられてたのかもね」
「ここはどこかわかるか?」
「まだわからない。 あ、手紙が来たよ♪」
手紙を取り出してみると木花と咲那からだった。
『こっちは作戦本部に転移した。どこにいる』
よかった。最悪は回避できた。
『みんな無事でよかった。こっちも無事だが位置は不明。広い草原に転移したのでこれから探索する。何か分かったらまた連絡する』
よし、これでいいな。
「とりあえず何か見つかるまで移動してみる」
「了解だよ♪」
「クルマでいいよな」
「文明によるかな」
「なるほど、了解だ」
タンドラを収納から出す。
超光学迷彩を起動して、無音仕様にしてけば大丈夫だろう。
ついでに退避させていたクマ吉も出してやる。
「主、何か起きたのでごさるか?」
「みんなは無事だ。オレたちだけが飛ばされたらしい。とりあえずクルマで移動するから乗ってくれ」
タンドラに乗り込み、草原を走りながらナビィと話し合う。
「リセットっていうのは?」
「神界とシシ世界から新しいワールドに強制移行したからだと思う」
「なるほどな。おそらくは異世界だよな。あるいは飛び越してツバメ世界か」
「ツバメ世界も異世界も行ったことがあるからね♪ 知ってるとこが出てきたらわかると思う♪」
「わかった。とりあえず走り回ってみるよ」
「どうだ? クマ吉!」
「異常なし!気持ちいいでこざるな!」
クマ吉は天井についている自動迎撃バルカンの射手シートに登って周辺を見張ってくれている。
センサーがあるからあんまり意味ないけどな。
一生懸命に役に立とうとしているのがいじらしくかわいいから好きにさせている。
しかしあのしゃべり方は謎だな。
教えてもいないのになんでこうなったし。
しばらく走り続けるとマップに反応があった。
赤い光点と緑、黄色の光点が入り乱れている。
「これさ、人がモンスターに襲われてるってやつ?」
「あー、そうだね♪」
異世界テンプレか。これで進捗だな。
「クマ吉! 飛ばすぞ。落ちるなよ!」
「かしこまったでござるよ!」
うーん。かわいいのになあ。
口調だけ残念すぎるだろ。直したい。
タンドラのアクセルを踏み込み一気に加速する。
さすがは異世界仕様だ。
……なんかややこしくなってきたな。
もともとまとめて異世界って呼んでだけど、こうなると厳密にはツバメ世界仕様なんだよな。
なんてことを考えてたら、かなりの距離があったはずだがあっと言う間に現着した。
改めて言おうか。
さすがはツバメ世界仕様だ。
モンスターはキングが率いるオーガでざっと20体。
ふーん。こんな草原にもいるんだな。
襲われているのは貴族とおぼしき馬車で、騎士たちが馬車を守るようにモンスターと対峙している。
数人が倒れており、立っている騎士も深い傷を負っている。
まともに戦えているのはひとりだけだ。
明らかに劣勢だな。
「行くぞ」
飛び出してタンドラは収納。
ナビィとクマ吉もマジックボックスに強制収納だ。
ややこしくなりそうだしな。
駆け寄りながらリーダーとおぼしき騎士に声をかける。
「おい! 手助けは必要か!」
「頼む! 数が多すぎて手に余る!」
「はいよっ!」
魔法はどうなんだろ。
まだここがどこかわからないからな。
打撃が無難だな!
如意棒使うか!
乱戦の中に飛び込み一閃。
キングオーガを瞬殺した。
その後は舞うように群れを殲滅していく。
一瞬でオーガの群れを一掃した。
何が起きたのか理解できずに唖然とする騎士たち。
あれ? やりすぎたのかな。
リーダーの騎士が被っていた甲冑を外してこちらへやってくる。
リーダーはとても綺麗な顔立ちの女性騎士だった。
「ど、どなたかは存じぬが助かりました」
「いえ、間に合ってよかったよ」
「お名前を伺えますか?」
「えーっとそちら様は?」
「これは失礼した。私はジャポン王国のヒイノ。騎士団長だ」
ん? ヒイノ? ジャポン?
どこかで聞いた名前だな。
あー! ツバメ伝記!
異世界のヒロイン枠の人だ!
ここはツバメ世界の異世界で確定だ。
「ヒイノ……確かツバメさんの?」
「ご存じですか。祖母は英雄神の仲間です」
「え?」
「?」
……そうか、思っていたよりツバメ世界との時間のズレが大きいんだな。
もう少し近い時代かと思っていた。
普通に考えたら英雄神はもちろん、仲間たちは半神だし神獣だ。
人間とは違って長寿なのをちゃんと理解していなかったな。
まあ神様とフェンにしか会ってないから仕方ない。
ということは、科学文明と融合して二世代分は進んでいるってことか。
だとしたらなんで馬車なんだろ。
「えーと、私は旅の人間でシシといいます」
「シシ殿、先ほどは本当に助かった。御礼はまた後ほど。仲間を治してまずは姫に状況を伝えさせてください。少々お待ち願います」
ヒイノがエリアヒールをかけた。
次々と立ち上がる騎士たちは口々に感謝と感嘆の言葉を伝えてくれた。
マップで見たがまだ完治はしていないようだ。
ヒイノさんも疲れてるんだな。
手伝うか。
マッピングしてと。
「ヒール」
周りを白い光が包み、全員が完治した。
ん? なんか絶句してるな。
え、魔法はセーフだろ??
「エリアヒールの上級まで!?」
「け、賢者様か?」
「いやあれほどの剣士で回復魔法まで使えるとは」
「! 勇者様か」
「きっとそうだ」
ザワつく騎士たちの合間を縫ってヒイノが綺麗な女性を連れてやってきた。
「シシ殿、こちらジャポン国の第二王女、ヒナ姫です」
「初めまして、シシと申します」
「ヒナです。シシ様、危ないところをありがとうございました」
「あー、たまたま通りかかっただけです」
「シシ様は私の命の恩人です。どうか王国までお越しいただけませんか。お礼をさせてください」
「それはありがたいです。いや、お礼は結構なんですが……」
「??」
「実は迷子でして」
「ならばぜひ。シシ殿に同行いただけるなら道中も心強い」
「ふふふ、迷子だなんてシシ殿はなんだかかわいいです」
よし、とりあえず王国には行ける。
あとはもう少しこの世界のことを把握してからミッション再開だ。




