第11話 世に愛されるクズな文豪たち
中学3年生の頃、余ったノートに落書きのような小説を書いたことを思い出した。
タイトルは「羅生門:悪鬼」、羅生門の下で雨宿りをしていた下人が、悪事を働いていた老婆の着ぐるみを剥がし、その後消息を絶つという文豪、芥川龍之介の有名作品「羅生門」に対して翻案作を書いた。
羅生門から行方をくらました下人は悪事の限りを尽くすも、検非違使に捕まり、取り調べのなか、あの老婆の言葉が盗賊に身を落とすか悩んでいた己を決断させたと告白した。
もしあの羅生門の下で、徳の高い人物に会っていたら自分は盗賊の真似事なんかしなかったはずだ……と、男はそう自分を弁護した。しかしそれを聞いた役人に「自分勝手な救いようのない悪人」と言われ、死刑を言い渡された。という小説を書いて仲のいい友達にみせたところ、「すごく面白い」と褒められたことが、今まで生きてきた人生のなかでいちばん嬉しかったのを思い出した。
──そういうことか!?
オレの「今」の最高傑作と、その最高傑作を上書きする方法が頭のなかで、固く閉じたつぼみが一気に花開く感覚が全身を巡る。
「ありがとうございます」
「ん、なにか気がついたようだね」
オレは太宰治に頭を下げて、早く頭のなかに沸き上がったイメージを文章という形に変えるべく、自室へと引き返した。
「唯今先生。なぜ太宰先生たちがクズと呼ばれているのに、文豪と称され、後世の人々に愛されているかお気づきになりましたか?」
「いえ、そこはまだよくわかっていませんが……」
目つきが変わったオレに気が付いたのか、のびのびと執筆し始めたオレにヒョロヒョロの編集者が声を掛けてきた。
「素晴しいひとが、素晴らしい作品を生み出せる、という訳ではないからです」
彼らの作品は、彼ら自身の波乱に満ちた人生経験や苦悩が反映されていたり、深い洞察力と文学的才能を掛けあわせて生み出しているから……。それが人々の心を揺さぶり、共感を呼ぶ。その生み出す“ことば”の積み重ねこそが、彼らが文豪として愛され、後世に名を残す理由である、と。
その言葉に先ほど刺激を受けたカラダにさらに頭をトンカチで殴られたような衝撃を受けた。
みえてなかった……聞こうとしていなかっただけで、答えは最初から自分の中に眠っていたのか……。
そして一か月が経過した。




