ちょっと今日はダメ!……ホントにイヤ!!
石坂さんと別れてまた学内をウロついた。しかし今度はテンションギリギリで爆発寸前のソウ状態になっていた。文系校舎の廊下を歩いてると、向こうから俺の彼女がやってきた。会った瞬間「あっ」てなって、ずっと会ってなかったからなんかちょっと気まずい感じだった。彼女は自治会の役員をしてるから最近学祭の関連で忙しかったみたいだけど、それにしても前言ったみたいに俺からの連絡をシカトしまくってる。
彼女とは去年知り合った、っていうか部の代行としてサークルの全体会議に出たときに俺の方から声をかけた。話してるうちに俺らが同じ学年同じ学科、しかもクラスも同じってことがわかって授業なんかのローカルな話題でいきなり盛り上がって親しくなったってわけだ、というのは表向きで実は前もって自治会名簿で所属・学年を調べた上で接近した。なんでかっていうとその頃自治会内部の情報がどうしても欲しかったからだ。それから友達ヅラして自治会の様子をそれとなく聞き出してたけどある日、
「吾妻くんは自治会のことが知りたいから、あたしに話しかけてくるんでしょ?」
っていきなり言われた。俺はアセったね、完全に相手をナメてたから。よく考えたら俺は彼女が持ってる情報が欲しいけど彼女は俺の持ってる情報なんて要らないだろう。取引すらできない。うろたえてると、
「いいよ、吾妻くんって頭いいみたいだから、いろんなことアドバイスしてくれるなら。」
ってニッと笑ったんだ。そのニッてのに俺は自分とおんなじデビルの匂いを感じた。そしたらそれまでなんとも思ってなかったのにいきなり「好きだ」って言っちまった。ビックリしたのは相手で、最初はビビッて逃げ腰だったけどいろいろあって付き合うことになった。アドバイスもちゃんとしてやった。自治会の役員になるときも二、三の知恵をつけてやった。ただ俺は「恋人」っていうよりも彼女に対しては「パートナー」って感じが強い。「恋人」よりちょっとクールな関係だ。
で、文系校舎で会ったとき、俺は辺りを見回して人目につかないトコをさがした。トイレしかなかった。そこに彼女を連れ込む。
「ちょっと、なに!?」
「誰かに見られたらマズいじゃん。」
「いいじゃん見られても! なんで隠さなきゃなんないわけ?」
「なんだよ! お前だって友達とかに見られたら面倒だから知られたくないって言ってたじゃねぇかよ。」
「そんなのウソだもん! ほんとはアンタに合わせてただけだもん!」
「ああ!? いまさら何いってんだ?」
「みんな日曜日とか遊園地とかでデートとかしてるじゃん!! あたしらそんなのぜんぜんしたことないんだよ!? あたしだって普通に手つないでデートとかしたいよ……」
汚ったねぇー、じゃあお前のデビルはニセモノだったってのかよ? なんか騙された気分だぜ、ガッカリだよ。って、気がついたら彼女はベソをかいていた。それ見たらさー、なんつーかなあ、メチャメチャかわいかったんだよな。それで全部ふっ飛んだ。なんか自分に欠けてたもんがわかったって感じだった。「やっぱ愛だよな」とか思ったね。文芸部のゴタゴタなんかもうどーでもよくなった。そんで彼女をギューっと抱きしめた。彼女は「?」って感じだったけど、そのときどっかのマヌケがトイレに入ってきたけど俺は見向きもしなかった。そいつはすぐに出ていった。
「……見られた。」
「いいよ別に。」
って言いながら彼女を個室に連れ込んで鍵を掛けた。彼女が
「なんで急に……」
って訊こうとしたけど俺はいきなりキスした。最初はゆるく抵抗してたけどすぐにおとなしくなった。口を離したときはいい感じになってて、頭と頭をコツンとやってくすぐったい感じになって笑いあった。でも彼女の首筋にキスしながらスカートの中に手を入れようとしたらまた抵抗しだした。
「ちょっとゴメン、マジやめて、ちょっと!」
そんなコトいってもこっちはもう止まんなかった。
「ゴメンな、俺文芸部辞めるからさ、今度2人でどっか行こうぜ。いままでやんなかった分だけデートとかやりまくろう。」
「こんなとこで、やめてってば!」
「ゴメンゴメン、いや俺マジで……」
「ちょっと今日はダメ!……ホントにイヤ!!」
つって俺は突き飛ばされた。
「なんでダメなんだよ!?」
「今日生理だから!!」
生理って……そんなわきゃねぇだろ? 俺いまパンツの中まで手入れてたんだぜ? ウソじゃん!! そんなのバレバレじゃん!! ……バレてもいいってコト? バレないようにウソつくのもメンドくさくなったってコト……?
彼女はそそくさと服を直している。なんかすっかり冷めちまった。ふくらんでたモンもしぼんじまった。「コイツとももう終わりだな」とか思った。一応彼女の身支度が終わるのを待って2人でトイレから出た。白けた雰囲気になって、窓ん外から階下のバザーなんかの人ゴミが見えたりして「アリンコが、なにやってんだ?」とか思った。そしたら急に彼女が俺の肩をバッチーンって叩いて、
「今度部屋に行くから!! じゃね!!」
って言いながら笑って走ってった。「今度っていつだろー、ホントに来る気あんのか?」とか考えてるとだんだん腹が立ってきた。やっぱこの怒りはあのクソヤロウどもにぶつけるしかないな。




