とにかくエロ本を出すのはやめろ。部の品位が落ちる
しかたがないので2年のネーチャンたちを出そうってことになった。どうせ物資搬入の力仕事ではあんまり戦力にならない。すると酒を飲んでたアル中どもがまたゴネ始めた。
「教室移動班から人間出さなくても、いま力仕事やってない連中がいるだろうが。」
といってマンガ描いてる連中を指さした。
「いや、こいつらマンガ描いてんですけど。」
「ウチは文芸部だぞ。マンガはもともとウチの活動の本分じゃないし、サブでやってることだったらメインの仕事の人手が足りないときはそこからヒトを出すのがスジってもんだろう!」
あーあって感じだ。こいつはウチのアキレス腱に触れちまった。こればっかしは2年のネーチャンたちも黙ってられなかったらしくて俺の方についた。部長は真ん中でニヤニヤして黙ってる。ムカついたから後で文句言ったら、実は困ってたんだそうだ。そういえばこいつがニヤニヤしてるのはいつものことだった。
「しかしマンガはウチの稼ぎガシラですからねぇ。」
「そうそう」みたいなことを後ろからネーチャンたちが言う。
「だから文芸部なんだから、あんまり小説以外のことに比重を置くのはどうかって言ってるんだよ。」
「でもマンガ本を出すことは部会で決まったことですから。」
「それはお前らが勝手に決めたことだろ。」
ふざけんな! 部会の参加は義務とか自分たちで言ったくせに、勝手にサボったのはてめぇらだろう。そんならこっちだって言うけどな、
「正直言っていまの状況ではマンガ本が稼いでくれるから小説の本も出せるんですよ。マンガ本だったら学祭で売れ残ってもコミケ(マンガ同人誌即売会)で売れますけど、小説は売れ残ったら在庫が増えるだけですからね。それに実際、小説本はいくら売れても2ケタにもいきませんし、作るのだって原稿をワープロに打ったりでかなり手間がかかるんです。予算も人手も限られてるわけですから、いまのマンガの比重を全部小説に割いたらやってけないと思いますよ。」
「それでも俺たちの頃はちゃんとやってたぜ。それにマンガをやるなとは言わんけど、いまはそっちの方ばっかりに力を入れすぎてないかって言ってんだよ。それにマンガっていったってどうせエロマンガまがいの低俗なもんだろ?」
「エロも出しますけど、アニパロ(アニメのパロディ)とかオリジナルの創作も出してますよ。」
「だからなんでマンガは3種類も出すのに小説は1種類しか出さないんだよ! 小説なんかSFも純文もいっしょくたにしてるじゃねぇか! それは小説というジャンルを差別してるってことじゃないのかよ?」
「差別はしてません、しかし小説は金になりません。少ない予算でヤリクリしてるわけですからしょうがないと思います。」
「いくら売れるからって低俗なもんに走って、文芸部としてのプライドはないのか? エロ本なんか出すから大学当局の評価が低くなって予算カットされたんだよ。」
「サークルが最近やたらめったに増えたからじゃないですか?」
「ちがう!」
「大学からサークル全体に来る予算自体も縮小されてるらしいですけどね。」
「そんなこと誰に聞いた?」
「自治会の総会で。」
「……とにかくエロ本を出すのはやめろ。部の品位が落ちる。」
「まあ気持ちはわかりますけど、ただウチで出す本は性描写だけにならないように心掛けてるし、エロという形を借りていったい何が表現したいのかということに重点を置いてるんですけどね。ウチの本が売れる理由にはそれも充分にあると思うんですけど。」
「内容なんかどうでもいいんだよ。学祭なんかで売ってたら小学生でも手に入れられるんだし、この間の学祭じゃそのことが問題になったじゃねぇか!」
「問題になったのはウチじゃなくて、よその似たような本を出してるサークルですよ。それにアレだって、別に直接子供に売ったわけじゃなくて、買った別のやつが子供に見せてるのを親に見つけられたんですよ。ウチだってもちろん子供には売りません。ただ、俺は子供に見せても心配はないと思ってますけどね。先輩だってガキのころ兄貴とか親父のエロ本隠れて見たことないですか? それで変質者になりましたか? バカなPTAのおばさんみたいなこと言わないでくださいよ。」
それにウチでエロ系のマンガ描いてるやつらなんてオタク街道まっしぐらの童貞野郎ばっかだし、内容的にも大したことないしな。




