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元、三人組。

「なんか、チーよりよっぽどあいつのがしっかりしてないか?」

「あ、れ……言ってませんでしたか? 杏ちゃんは、私たちよりひとつ年上なんです」


おもわず、紫苑はこぶしで手のひらを打つ。


「そっか……そうだろうな。なるほど──」

「高校も進学校で、すごく、賢くって」


紫苑は、怪訝におもって真名の表情をのぞき込んだ。


「どうした? 真名も、どっかむずかしい大学にでも行きたいのか?」


はっ、と真名が紫苑を見返す。

しばらく、奇妙な沈黙がつづいた。


「いいえ、そうじゃなくて…………私ももうすこし賢くて、もっといろんなことを知ってたら、何かおもしろいアイデアとか、だれもが読みたくなるようなストーリーを考えつくことができるのかなって」


真名が、お腹の前できゅっと両手をにぎり合わせる。

紫苑は親指の爪をくちびるに押し当てた。

なにかが、わかりかけた気がする。


「ストーリー、か──」


とたん、真名が紫苑の腕に手をかけた。


「ごめんなさい! 不満、とかじゃないの。今の、聞かなかったことにしてください」


そのあわてた声に、紫苑はおもわず真名の頭に手を載せる。

椅子から見上げてくる揺れる瞳に、紫苑はいくどかうなずいた。


「心配しなくても、誰にも言ったりしない。そもそも、俺はおまえたちの仲間じゃないんだ。仲間には言えないことがあるなら、俺が聞くよ。──それに、俺もすこしふしぎにおもってたんだ」


見返してくる真名に、紫苑は身をかがめて顔を近づけた。

ぱち、と真名がまたたく。


「おまえたちの名前、三って数字が入ってるだろ。でも、四人組だっていう。……最初は三人組だったんだよな?」


こく、と真名がちいさくうなずいた。


「四人目が、杏なんだな?」


こんどは、真名は紫苑を迷ったような目で見つめ返しただけで、うなずこうとはしない。

紫苑は、もういちど真名の頭を撫でた。


「チーは中学のころ、真名といっしょにマンガが描きたいって言ってたんだよな? だから、東京に引っ越すのは嫌だって言ってた、だろ? なのに、そのおまえが、トーンしか貼れないってのは妙だとおもってたんだ」


紫苑は知っている。

紫苑自身もそうだが、従妹の千夜も、絵を描くのは好きだし、得意だし、自信も持っている……

ところが、マンガを描くには決定的に足りない能力がひとつあった。

それが、ストーリーを生みだすこと──すなわち、何を描くのかという、基盤となる部分だ。


「真名が得意なのは、元々、絵を描くことじゃなくてストーリーを考えることなんだろ?」


はい、と小さな返事が返る。


「チーとおまえは、お互いの得意な部分を合わせてマンガを生みだせる、理想的なコンビだったわけだ? けど、里沙、杏、と仲間が増えるにしたがって、対等だったバランスが崩れてきちまったんだな」


真名は、こぼすようにほほえんだ。

そして、首を振る。


「千夜とふたりでやってたころとは比べものにならないくらい、描くものも、めざすところも、レベルが上がったってだけなんです。里沙ちゃんも上手いし、杏ちゃんが加わってパティスリーは大手と呼ばれるようなサークルになりました。おかげで、作品はたくさんのひとに読んでもらえてるし、プロデビューも夢じゃないようなところまできてて……」


あくまで、真名は現在の四人組に不満はないと言いたいらしい。

が、紫苑はなんだか釈然としなかった。



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