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白織夜叉の冒険譚  作者: 蹴 鞠
第1章
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5話 親子


夕方。


王都へ戻る街道を、四人の冒険者が歩いていた。


夜叉、レオン、カイル、リゼット。


今日の依頼は、街から少し離れた森に出た魔物の討伐だった。


無事に討伐を終えた四人は、帰り道の途中にある小さな休憩所で足を止めた。


「疲れたぁ……」


夜叉が木のベンチに座る。


白い尻尾の先がが、ふわりと地面へ触れる。


「今日は結構走ったからな」


カイルが隣に腰を下ろす。


「レオンも疲れただろ?」


「まあな」


レオンは水筒の水を飲む。


リゼットも腰を下ろしながら、小さく息を吐いた。


「でも、以前よりずっと連携が良くなりましたね」


「そうだな」


カイルが笑う。


「最初なんて、夜叉さん一人で全部片付けてたからな」


「えぇ〜してないよぉ」


「してましたよ」


「そう?」


夜叉は首を傾げた。


四人で笑う。


少し休んでから、また歩き出す。


その途中。


ふと、レオンが尋ねた。


「そういえば……」


「ん?」


「夜叉さんって、ご家族は?」


夜叉の足が、ほんの少しだけ止まった。


「家族?」


「はい」


レオンが慌てて付け足す。


「いや、答えたくなかったらいいんですけど」


「ううん」


夜叉はゆっくり首を横に振った。


「いるよぉ」


「そうなんですか?」


「うん。お母さんがいるよぉ」


リゼットが少し夜叉を見て。


「お母さん?」


「うん〜」


夜叉は嬉しそうに笑った。


「鞠凪っていうの」


「……鞠凪?」


カイルが聞き返す。


「夜叉さんと同じ種族ですか…?」


「ちがうよぉ」


「そうですか……」


レオンが少し気まずそうにする。


カイルが少し考える。


「王都にいるのか?」


「今はねぇ……」


夜叉は空を見上げた。


「いないんだぁ」


「え?」


「長い依頼に出てるの」


「長期遠征ですか?」


リゼットが尋ねる。


「うん」


夜叉は頷いた。


「新しい土地を開拓するんだってぇ」


「開拓……?」


「まだ人があまり入ってない場所だから、魔物もいっぱい出るみたい」


「じゃあ、かなり危険なんじゃ……」


「そうかもぉ」


夜叉はあっさり答える。


「お母さん、魔物からみんなを護衛するのが仕事みたい」


レオンが目を瞬かせる。


「……護衛?」


「うん」


「お母様も冒険者なんですか?」


「そうだよぉ」


夜叉は少し笑った。


「いつもは普通に依頼を受けてるんだと思うけど、今回だけ長い遠征に呼ばれたの」


「なるほど……」


リゼットは納得したように頷く。


けれど。


少し気になることがあった。


「夜叉さんは、お母様と仲がいいんですね」


鞠凪のことを話す夜叉は少し楽しそうだったから。


「うん」


即答だった。


「すごく仲良しだよぉ」


その声には、隠しきれないほどの温かさがあった。


「帰ってきたら、いっぱい話したいなぁ」


「寂しくないんですか?」


「ちょっとだけ」


夜叉は尻尾を揺らした。


少し寂しそうに。


「でも、お母さんも頑張ってるからぁ」


「……夜叉さんらしいですね」


リゼットが微笑む。


するとカイルが突然、何かを思い出したように言った。


「そういや夜叉さん」


「ん〜?」


「前にギルドで、新人冒険者に告白されてた黒髪のすっげぇ綺麗な人がいたんだけど、確か鞠凪さんって言われてた気がすんだよ」


夜叉が振り返る。


「もしかして、それがお母さん?」


「うん。たぶんそれだよぉ」


リゼットが思い出す様に俯く。


「いつも目を閉じてる人?」


「そうそう」


「……あの人がお母様?」


「うん」


リゼットが少し驚く。


「なんだか……とても穏やかな方でしたね」


「そうなんだよぉ」


夜叉は嬉しそうに笑う。


「すっごく優しいの」


「へぇ……」


カイルが感心する。


「でも夜叉さんと親子って言われると、ちょっと意外だな」


「そう?」


「雰囲気が全然違うから」


「よく言われるぅ」


夜叉は笑った。


「でも、お母さんなんだよぉ」


その一言だけは、とても嬉しそうだった。


◇


王都が見えてきた。


四人は再び歩き始める。


しばらくすると、レオンが尋ねた。


「夜叉さん」


「なぁに?」


「お母様は、任務が終わると帰ってくるんですよね?」


「うん。たぶんねぇ」


「その時は……会ってみたい…です!」


「いいよぉ」


夜叉は頷く。


「紹介するねぇ」


「本当ですか?」


「うん」


そして少しだけ笑う。


「お母さん、きっと喜ぶと思うよぉ」


「……そうですか」


レオンも笑った。


その横で、カイルがニヤニヤする。


「お前、ふられたのに夜叉さんの家族にまで会う気かよ」


「違う!」


「まだ何も言ってねえだろ」


「お前が変なこと言うからだろ!」


「ふふっ」


リゼットが笑う。


夜叉もつられて笑った。


「二人とも仲良しだねぇ」


「幼なじみだからな」


カイルが答える。


「ずっと一緒なんですよ」


レオンも笑う。


夜叉は二人を見て。


「そっかぁ」


少しだけ嬉しそうに呟いた。


「私も……みんなと、長く一緒にいられたらいいなぁ」


三人が、一瞬だけ黙る。


そして。


「そりゃそうだろ」


カイルが答えた。


「はい」


レオンも頷く。


「ええ」


リゼットも笑った。


夜叉は少し驚いたように目を瞬かせて。


それから、いつものように穏やかに笑った。


「……うん」


夕暮れの街道。


四人の影が、並んで伸びていた。


読んでくれてありがとう〜


お母さんのお話

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