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白織夜叉の冒険譚  作者: 蹴 鞠
第1章
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2話 臨時パーティ

白織夜叉の冒険者としての日常。


趣味で書いていたのでしばらく纏めて出せそうです。


王都の冒険者ギルド。


昼下がり。


掲示板の前で、三人の冒険者が頭を抱えていた。


「……まずいな」


「何が?」


「弓使いが足りない」


今回の依頼は、山間部にある魔物の群れの討伐。


前衛二人、魔法使い一人。


そこまでは揃っている。


だが、遠距離から敵を削れる人間がいない。


「誰か、弓を使える奴はいないのか?」


「Dランクならいるけど……今回の相手、ちょっと厳しいぞ」


三人が悩んでいると――。


「……あのぉ」


背後から、柔らかな声がした。


振り返る。


そこにいたのは、小柄な白髪の女性。


長い白髪。


白い猫耳。


そして、大きな白い尻尾。


「弓使いなら……私でもいいよぉ」


「……え?」


三人は固まった。


夜叉は依頼書を覗き込みながら、首を傾げる。


「臨時パーティ……だよねぇ?」


「あ、ああ!」


「じゃあ、一緒に行こうかなぁ」


あまりにも自然な返事だった。


「ちなみに……ランクは?」


「Aだよぉ」


「…………A?」


「うん」


三人の顔が引きつった。


夜叉は気にせず、にこっと笑った。


「よろしくねぇ」


◇


ーーー数時間後。


山道。


四人の臨時パーティは目的地へ向かっていた。


「夜叉さん、本当に大丈夫ですか?」


「うん?」


「いや……今回の魔物、群れで動くって話だから」


「そうなんだぁ」


夜叉はのんびり歩いている。


緊張感がない。


眠そうなわけでもない。


ただ、いつも通り穏やかなだけだった。


「……Aランクって、もっとこう……怖い人なのかと思ってた」


「私?」


夜叉が振り返る。


「怖くないよぉ」


「いや、そういう意味じゃ……」


そのとき。


夜叉の耳が動いた。


ぴくっ。


足が止まる。


「…………」


さっきまでの柔らかな表情が、ほんの少しだけ変わった。


「来るよぉ」


「え?」


次の瞬間。


森の奥から魔物が飛び出した。


一体。


二体。


三体。


さらに奥。


十。


二十。


「う、うわっ……!」


前衛が剣を構える。


魔法使いも詠唱を始める。


だが。


夜叉はもう弓を手にしていた。


「……そこ」


弦が鳴る。


ヒュッ。


一矢。


先頭の魔物の眉間へ。


倒れる。


二矢。


その後ろ。


三矢。


四矢。


五矢。


「え……」


冒険者たちが目を見開く。


夜叉は走っていない。


叫んでもいない。


ただ、立ったまま。


敵の動きを見ている。


「右……」


矢。


「左……」


矢。


「後ろから来るよぉ」


矢。


次々と魔物が倒れていく。


「な、なんだよ……これ……」


前衛の男が呆然と呟く。


夜叉は静かだった。


敵が増える。


それでも。


矢を放つ。


一射ごとに確実に数を減らす。


 そして――。


最後の一体が飛び出した。


大きな魔物。


前衛が迎え撃とうとする。


「危ないよぉ」


夜叉の声。


「……私がやるねぇ」


弓を引く。


空気が変わった。


青い瞳が、魔物を捉える。


狙いは一点。


魔物の胸。


「――そこ」


放たれた矢は一直線に飛び。


魔物の巨体を貫いた。


轟音。


地面が揺れる。


魔物が倒れる。


静寂。


夜叉はゆっくり弓を下ろした。


「終わったねぇ」


三人は言葉を失っていた。


「…………」


「…………」


「…………」


「……夜叉さん」


「うん?」


「今の……全部、一人で?」


「え?」


夜叉は少し考える。


「うん……そうみたいだねぇ」


「そうみたいって……!」


思わず叫ぶ冒険者。


夜叉は困ったように笑った。


「ごめんねぇ。先に倒しちゃったぁ」


「いや、謝るところじゃない!」


◇


討伐を終え、帰路。


三人の冒険者は妙に静かだった。


夜叉はそんな彼らの少し前を歩いている。


白い尻尾が、ゆらゆら。


「……なあ」


「ん?」


「俺たち、今回何した?」


「え?」


「ほとんど夜叉さんが倒してないか?」


夜叉は振り返る。


「そんなことないよぉ」


「ある!」


即答だった。


夜叉は少しだけ笑った。


「じゃあ……みんなが敵を見つけてくれたから、私は撃てたんだよぉ」


「……それ、慰めてる?」


「うん」


「余計に悲しい!」


夜叉はくすくす笑った。


臨時パーティ。


ほんの一日だけの仲間。


それでも――。


「また一緒に依頼、行きたいな」


そう言われると。


夜叉は嬉しそうに尻尾を揺らした。


「うん。予定が合ったらねぇ」


夜叉は、嬉しくなったのか尻尾が揺れる。


けれど夜叉にとって今日一番嬉しかったのは――。


自分の強さを褒められたことではなく。


一緒に冒険した仲間と、こうして帰ってこられたことだった。


読んでくれてありがとう。

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