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白織夜叉の冒険譚  作者: 蹴 鞠
第1章
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14話 4人の冒険者


最近。


冒険者ギルドでは、少しだけ妙な話が増えていた。


「あの四人、また成功させたらしいぞ」


「森の奥の討伐依頼だろ?」


「ああ」


「夜叉だけじゃなくて?」


「四人でだ」


そんな会話が、受付のあちこちで聞かれるようになっていた。


白織夜叉。


Aランク冒険者。


彼女については、以前から有名だった。


一人でAランク級の魔物を狩ることもある。


弓の腕も尋常ではない。


だが。


最近、評判になっているのは夜叉だけではなかった。


「レオンたち、最近かなり強くなったよな」


「ああ」


ギルドの掲示板の前。


カイルが依頼書を眺めながら、そんな声を聞いていた。


「……だってさ」


カイルは振り返る。


そこにはレオンがいた。


「何が?」


「俺たち、強くなったらしいぞ」


「自分で言うなよ」


レオンが苦笑する。


その横でリゼットが依頼書を読んでいた。


「でも、事実でしょう?」


「リゼットまで……」


「以前の私たちなら、受けられなかった依頼も増えてるし」


「確かにな」


レオンは掲示板を見る。


以前なら危険度が高すぎて避けていた依頼。


今では、それほど気負わずに受けられる。


森の奥。


大型魔物。


複数体同時討伐。


護衛。


危険区域の探索。


三人だけでも、十分に戦える。


もちろん。


夜叉ほどではない。


けれど――


もう「夜叉についていく三人」ではなかった。


「じゃあ今日は、四人でこれにするか?」


カイルが依頼書を指差した。


レオンが見る。


「……A級指定区域?」


「そう」


リゼットが依頼書を読む。


「森の奥で魔物の生息域が変化している。調査と討伐……」


三人は顔を見合わせた。


「行けるだろ」


「夜叉が起きてきてからだけどな」


レオンが言った。


カイルが笑う。


「だな」


リゼットも頷いた。


「行きましょう」


⸻


森。


眠そうに起きてきた夜叉と合流し。


四人は歩いていた。


夜叉はいつも通り先頭。


その少し後ろを、レオンたち三人が並んで進む。


以前とは違う。


レオンは前方だけでなく、左右にも気を配っている。


カイルは魔物の痕跡を見つけるたびに、その位置を確認する。


リゼットは魔力の流れを読みながら、危険な場所を指摘する。


そして。


最初の魔物が現れた。


大型の牙獣。


以前なら一体でも苦戦する相手。


だが。


「俺が行く!」


レオンが前へ出た。


牙獣が突進する。


レオンは盾で受ける。


ドンッ!


地面が沈む。


それでも。


レオンは倒れない。


「――今だ!」


カイルが横から飛び込む。


牙獣の後ろ脚を狙って攻撃。


体勢が崩れる。


そこへ。


「動きを止めるわ」


リゼットの魔法が絡みつく。


牙獣の身体が一瞬、止まった。


夜叉が弓を引く。


「……そこ」


矢が飛ぶ。


一撃。


牙獣が倒れた。


「よし」


レオンが息を吐く。


カイルが笑う。


「楽勝だったな」


「いや、最後の一撃は夜叉だけど」


「細かいこと言うなって」


夜叉が振り返る。


「でも、三人とも上手だったよぉ」


「……そうか?」


「うん」


夜叉は笑う。


「前よりずっと」


レオンは少し照れたように頭を掻いた。


⸻


さらに奥へ進む。


今度は二体。


レオンが一体を引きつける。


カイルがもう一体を誘導する。


リゼットが二人の間に魔法を撃ち込み、互いの動きを分断する。


夜叉は必要な場所だけを射抜く。


戦闘が終わる。


誰も大きな怪我をしていない。


カイルが息を吐いた。


「……なあ」


「ん?」


「俺たち、結構いけるんじゃね?」


レオンが笑う。


「今さらかよ」


リゼットも少しだけ笑った。


「少なくとも、もう初心者とは呼べないわね」


夜叉が首を傾げる。


「じゃあ……A級?」


三人が夜叉を見る。


カイルが笑った。


「それはまだ早いだろ」


「でも、近づいてはいる」


レオンが言った。


リゼットも頷く。


「ええ」


四人は歩き出した。


その日。


彼らは一つの依頼を完遂した。


誰も大きな怪我をしなかった。


誰か一人が無理をする必要もなかった。


四人が。


四人の力で。


依頼を終えた。


それは、小さな変化だった。


だが。


後に振り返れば。


あの日が――


四人が本当の意味で「A級クラスのパーティー」と呼ばれるようになった境目だったのかもしれない。


⸻


その日の夕方。


ギルドへ戻った四人。


受付で報告を終えると、カイルが椅子に座った。


「疲れたー!」


レオンも座る。


「お前、途中まで元気だっただろ」


「最後まで元気な奴なんているかよ」


リゼットが二人を見て笑う。


夜叉はその横で水を飲んでいた。


「今日は楽しかったねぇ」


「そうだな」


レオンが答える。


「前よりずっと楽になった」


「うん」


夜叉は嬉しそうに頷いた。


「みんな、強くなったねぇ」


三人は少し照れながら笑った。


――その翌日。


ギルドの空気が変わる。


森の異変。


魔物の生息域の変化。


行方不明者。


そして。


魔物たちが森から逃げ始めた。


何かが起こる予感がした。


読んでくれてありがとうございます。


一章は短めに。


終わりに、向かっています。

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