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おまけ(公爵令嬢はロージーがお好き)

 私はブリジット・アップルビー。火魔法の名門アップルビー公爵家の娘であり跡取りである。


 私には、3つ年の離れた弟のグレンがいる。他国は男子が優先して家督やらを継ぐが、この国では基本的に男女関係なく長子が家督を継ぐ。王家のみ例外で、王位に就きたいものは、君主教育を終えなければいけない。


 現在、国王陛下の子供で君主教育を終えているのはアビゲイル様のみ。

 昨年、君主教育を終えたアビゲイル様の王配として、弟が選ばれた。アビゲイル様と弟は3つ年齢が離れているがとても相性が良く、弟は毎月のアビゲイル様とのお茶会を楽しみにしている。


 弟の婿入り先は決まったが、アップルビー公爵家の跡継ぎの私には婚約者が決まらなかった。他家に婚約打診をしてもなかなか良い返事がない。理由は分かっている。私の顔がこの国の美人の基準からハズレているからだ。


 母方の高祖母が他国の方で、先祖返りで高祖母の出身国の特徴が強く私に出た。そのため、お母様は何度もお父様と私に謝ってきた。


 お父様は、お母様を慰め、私のことを美しいと褒めてくれた。でも、お父様がいくら私のことを美しいと褒めてくれても、私の顔がこの国の美人の基準から外れていることは変えられない。


 婚約者ができない事に頭を悩ませているとき、ロージー・スミスの名前を耳にした。多くの女子生徒から美の妖精と崇められていると。興味半分で、ロージー・スミスを見るために、Fクラスに行った。

 そこで見たロージー・スミスの姿に、思わず胸がキュンっとなってしまった。


 綿あめのように柔らかそうな髪は、美しいピンク色をしており、国一番美しい海のような透き通ったエメラルドの目、真珠のような白い美しい肌。


 そして、見事なまでの幼児体、ゲフン……まな板……ゲフンゲフン、スレンダーな体型。身長も同年代の平均よりも15センチも低く、一番小さいサイズの制服もブカブカで、童顔と言うこともあって、どうしても十歳児にしか見えない。

 ロージー・スミスは女の子が欲しいと思う理想の人形のような女の子だったの。だから、人によっては、ロージー・スミスを歩くビスクドールと表現する人もいる。


 すぐに声を掛けたかったけど、私は高度な教育を受けた公爵令嬢。面識の無い人にいきなり話しかけるなんていう無作法を行うわけにはいけない。


 Fクラスには幼なじみのレイラがいるので、レイラに紹介してもらうことにした。レイラは、ロージー・スミスの紹介の場所として、侯爵家でお茶会を開いてくれた。


 侯爵家を訪れると、庭に通された。庭にはテーブルとイス、日差しを遮るためのパラソルが準備されていた。レイラは椅子に座り、庭の花を観て楽しんでおり、先に来ていたロージー・スミスは、限界まで花に近づき花びら1枚1枚観察するかのように熱心に見ている。


「ブリジット様、お待ちしておりました。ブリジット様、こちら私のクラスメイトのロージー・スミスです」 


「初めまして、ブリジット・アップルビーと申します」


「は、初めまして!ロージー・スミスと言います!ロージーと呼んでください」


 私に気づいたレイラは、私に軽くあいさつをした。花を凝視していたロージー・スミスは、レイラの後ろに控えていた侍女に呼ばれ、ウサギのようにピョンピョン跳ねるように走り、レイラ様の隣に来た。

 レイラに紹介された私は、ロージーに挨拶をした。ロージーは、アワアワしながら、ペコリと私に頭を下げた。頭を下げると、ロージーの髪はふわふわと揺れる。思わず口元が綻んだ。それは私だけでなく、レイラも侍女も同じだった。


 お茶会が始まってすぐは、ロージーは緊張していたせいか、動きがぎこちなかったが、レイラが準備した紅茶とクッキーを口にすると、紅茶とクッキーの美味しさに目を輝かせた。大きく口を開けてクッキーを食べていたロージーだけど、はっ、と何かに気づいたように、クッキーとレイラを交互に見比べ、レイラの真似をして食べ始めた。


 きっと、大きく口を開ける事はマナー違反だと思ったのであろう。確かに、貴族令嬢が大きな口を開けたらはしたない行為だけど、ロージーは平民。私はロージーが平民だと理解しているため、ロージーにそこまで貴族のマナーを強制するつもりはない。だけど、大きな口を開けてクッキーを食べる姿はとても可愛らしいかったが、レイラの真似をしてクッキーを食べる姿は母猫の真似をして、爪とぎの練習をしている子猫のように可愛かった。


 お茶会も中盤に差し掛かり、ロージーの緊張もだいぶほぐれたところで、世間話しのように「この顔のせいで婚約者ができない」って言った。


 するもロージーは私の顔をみて、「アップルビー様、十分お美しいのに……」と言った。


「アップルビー様……アップルビー様が嫌でなければ、私にお化粧をさせてください」


 そして、俯きしばらく黙ったあと、顔を上げ意を決したように言った。


 ロージーの言葉を聞いたとき、私の中に電撃が走った。何故か、ロージーの言うとおりにすれば、何もかも上手くいく……そんな気がした。

 私は二つ返事で了承し、2週間後……来月最初の学園の休みの日に化粧をしてもらうことになった。



 2週間後、ロージーは大きな鞄を引きずるように持ってきた。


 ロージーの鞄を見て、お母様は心配そうに私とロージーの鞄を交互に見た。お父様は怪訝そうにロージーを見た。


 ロージーを招待することにお父様は反対していた。私がこれ以上落ち込む姿を見たくない、と言っていた。だけど、お母様が頑張って説得してくれた。きっと、お母様はロージーの魔法について色々なお茶会で耳にしたのであろう。


 最初は私の自室で化粧を行おうとしたけど、お父様が反対していてサロンで化粧をすることになった。

 ロージーはサロンに入ると、鞄を開けた。鞄には化粧で使う筆の他に色とりどりのアイシャドウや口紅、チークが入っていた。その他に、外国の言葉で書かれたメイク本が何冊も入っていた。ロージーはその中の一冊を手に取った


 ロージーは私を椅子に座らせると、私の目の前に立ち手に持った本のページと私を何か確認するように、何度も交互に見た。


「アップルビー様、お化粧を始めさせていただきます。」


 ロージーは確認が終わったのか、私に声をかけた。私はその声に頷き、目を閉じた。化粧をするために目を閉じたわけではない。怖いから目を閉じた。

 ロージーに化粧を頼んだけれど、やっぱり怖い。侍女やお母様が評判の良い化粧品を買ってきても、私は綺麗になれなかった。



「アップルビー様、目を開けてください」


化粧が終わり、ロージーは私に目を開けるようにいう。




目を開けるのが怖い……




でも、せっかくロージーが化粧をしてくれたのだからと勇気をふり絞り目を開けた。


「お父様?お母様?」


 目を開けると、お父様とお母様が涙をなしていた。


「お嬢様、こちらを」


「こ、これは誰?」


 涙が出るほど出来が悪い化粧だったのかと不安になった。同じく泣いている専属侍女のミアに手鏡を渡され、意を決して鏡を見ると、そこにはしらない女性がいた。鏡に写っているのは自分だとわかる。にわかに、鏡に写っている美女が自分だと信じられなかった。


 目が大きくパッチリになったわけでもない。この国の美人メイクをしたわけでもない。だけど、ロージーが化粧を施してくれた顔は、一目で美しいとわかる顔だった。


「アップルビー様は、元々美人ですよ。お化粧の方法が合わなかっただけですよ」


「っ………」


 ロージーな言葉に、ツーっと涙が出る流れた。

 私は、ずっとこの国基準の美女にならなければならないと思っていた。美しいの基準をそれしか知らなかったからだ。外に目を向ければ美しいの基準はたくさんあって、私に似合う美しいを見つければ良いだけの話だった。


「ひっく……」


 小さく嗚咽が漏れる。『淑女たるもの、そう簡単に感情を表に出すべきではない』と教育を受けているため、頑張って涙と嗚咽を止めようとする。


 だけど、止めようとすればするほど涙も嗚咽も止まらない。


 そんな私を、涙で顔をぐちゃぐちゃお父様とお母様が抱きしめてくれた。


 泣き止み外を見ると、空が茜色になっていた。


 夕食の時間も近いこともあって、ロージーを夕食に誘うが、「マナーが分からないから」と言って断られてしまった。

 お母様がお礼の品として宝石を付いたアクセサリーを渡そうとするが、「平民には不相応です」と言い断った。次にお父様が「何か望みはあるか?」と聞くと、しばらく考えるように黙った後「マナーを教えてくれる先生を紹介してほしい」と言った。


「魔法学園に入学してから、貴族の方々と関わる機会が増えたから、きちんと学びたい」


 ロージーは、はにかむように言った。


 お父様とお母様は、ロージーの貴族社会に馴染もうと努力する姿に感銘を受けた。

 他国では、貴族学園に特待生として入学した平民が、学園内の身分平等を盾にして、貴族の子女に無礼を働いている、と言う話しがあるらしい。

 私が心配と言うこともあったが、ロージーが他国の無礼な平民と同じではないのかと言う懸念があったため、お父様は最初ロージーが我が家を訪れる事に反対していたのだろう。


 感銘を受けたお父様は、ロージーに一流のマナー講師を紹介すること、マナー講師への謝礼金は公爵家が持つことを約束した。

 一流のマナー講師の紹介と、実質無料でマナーを学べることに、ロージーは驚き辞退しそうだったが、お父様が「お家断絶の危機だった」と鼻息荒く血走った目で言ったため、ロージーは若干引きながら、お父様の申し出を受け入れた。


 色々話しているうちに、すっかり日が落ちてしまったため、我が家の馬車でロージーを家まで送ることにした。公爵家の家紋入りの馬車だとロージーは気後れしてしまうと思ったため、公爵家が所有する場所の中で1番小さく質素な馬車で送ることになった。




「こちらが、今日アップルビー様に施したメイクが載っているメイク本です。あと、他のメイク本にもアップルビー様にピッタリなメイクの方法が載ってますので、よろしくお願いします」


 ロージーは馬車に乗る前に、そう言いながらミアにメイク本を渡した。

全てのメイク本に、私が似合うであろうメイク方法にチェックがついていて、しかも全てロージーの字で翻訳が書かれていた。

 その心使いに胸がときめいた。


 なんて……気配りができる女の子なんだろうと。


 最初はロージーのお人形の様な外見を好きになった。だけど、今日改めて、ロージーの考え方や心意気……ロージーの全てが好きになった。


「馬車の中で食べてね」


 家に帰るまで、お腹を空かせていたら申し訳ないと思い、お茶の時間に食べる予定だったお菓子を渡した。ロージーは目を輝かせて受け取った。



 翌週、レイラの実家であるファレル侯爵家の夜会に参加した。

 この日のために腕を磨いたミアが、腕によりをかけて私に化粧を施した。



 ファレル侯爵家に到着し、屋敷のなかに入った。盛り上がっていた会場が水を打った様に静かになり、会場中から「あのご令嬢は誰だ」「美しい……」「彼女は女神なのか」と言った賛辞が私に向けられた。


「ブリジット様、お待ちしてました。」


「レイラ、ご招待ありがとう」


 レイラが私の名前を呼ぶ。


 私が「ブリジット・アップルビー」だとわかると、ざわめきが起きた。「あの公爵令嬢が……」「魔法でも使ったのか?」「あのお化粧羨ましい」などの声が上がった。


「ブリジット様、見違える様に美しくなっていますが、何かありましたか?」


「ええ、ロージー・スミスに力を借りましたの」


 ロージー・スミスの名前を出すと、女性達のざわめきが一際大きくなった。私のお母様でさえ、知っているのだもの。半信半疑とは言え、ロージー・スミスの名前は女性達の間では十分に知れ渡っているのだもの。


 私とレイラは、顔を見合わせイタズラが成功したかのようクスクスと小声で笑った。



 私は、この夜会で婚約者を見つけることができた。南の辺境伯であるストーン家の三男であるニコラス様。

 同じ年齢だけど、ニコラス様は魔法が使えないため魔法学園ではなく、別の学校に行っているため交流が無かった。そのため、私はニコラス様の事を知らなかった。けれども、ニコラス様は私の事を知っていた。


 夜会の度に、うつむくことなく真っ直ぐ前を見ていながら、誰とも視線を合わせる事をしなかった私の事を心配していたと言われた。声を掛けようにも、私が人を寄せ付けない雰囲気を纏っていたため、今まで私に声をかけられなかったと。


 ニコラスの話を聞いて、私は何も見えてなかった事に気づいた。家族と信頼できる友人以外、誰もが敵に見えていた。前を見ていたけど、周りを全然見ようとしていなかった。




ロージー・スミスに出会ってから、私の世界は広がった。





 夜会後、改めてロージー・スミスに感謝を伝えた。感謝の印として我が家のシェフが腕によりをかけたお菓子を贈った。


 その後、私とロージーの仲は深まった。我が家にマナー講師を呼んで、我が家で学んでもらうことにしたからだ。学園の授業終了後、週に2回私と一緒にアップルビー家に来てマナーについて学んでいる。最初は「アップルビー様……」と他人行儀だったけど、「お父様もお母様も、アップルビーよ?」と言って、ブリジット呼びをお願いした。もちろん、私も親しみを込めてロージー呼びをすることになった。


 私の化粧の変化にロージーが関わっていると言う話が学園で広まると、ロージーは学園で一番の人気者になったの。

 ロージーは女性が自信をなくしていると、すぐに助けに走った。「自分には女性を輝かせる力がある」と言って。多くの女性がロージーにより自信を持てるようになり、前に進めるようになった。



 ロージーは、お礼の品として私達が宝石やドレスを渡しても、決して受け取らなかった。いつも「分不相応だから」と言って断るの。


 他国では、勉強しないのに自称優秀な平民が貴族に高価な宝石やドレスをねだり、当たり前の様にそれを受けとるって言う事例が報告されている。ロージーは、そんな品の無い平民と違っていた。




 ロージーは勉強家で、毎日魔法の勉強以外の本も読んでいる。

 魔法学園は、本来高額な授業がかかるが、平民の生徒は魔法の暴走を防ぐために強制的に通わせるため無料だ。ロージーはこの機会に学べることを学ぼうと、貪欲に学んでいる。


 ある日、ロージーはマナー講師が勧めた初級マナー本を借りに図書館に行く途中、大怪我を負った。


 木の上に居たアーロン王子が、ロージーの上に落ちてきたのだ。アーロン王子に押し潰される様に地面に倒れたロージーは頭から血を流したらと聞いている。


 それを見た他の生徒の悲鳴で、駆けつけたレイラの迅速な聖魔法のお陰でロージーに傷が残るような事態は防げた。


 この時に、ロージーを傷つけたアーロン王子は、全女子生徒の敵になった。


 私達はロージーを守るために、可能な限り一緒に過ごすようにした。

 あまりにも、女子生徒達がロージーと過ごす時間が長いため、男子生徒からロージーは文句を言われるようになった。

男子生徒達は、最初は感情のままに文句を言っているのだけど、段々と幼子を虐めている気分になるらしくって、最後はロージーに謝るのよ。ロージーに悪気はないから。


 この件に関しては、男子生徒・ロージー双方に申し訳ないと思い、改善に勤めた。




 ロージーが怪我をした日から数日経った日、ロージーから相談を受けた。

 ひどいストーカー被害に遭っていると。


 ストーキングのあまりにも酷い内容に、体がおののいた。ロージーは思い出しただけで体が震えている。

 恐怖で勉学に身が入らない状態のロージーに、アビゲイル様は隣国への留学を勧めた。


 ロージーは二つ返事で、留学する事を決めた。


 この国は、魔力を持っている者が国外に出ること快く思っていない。しかし、アビゲイル様の尽力により、ロージーは隣国への留学が決まった。


 ロージーが、隣国に行く前日に、アビゲイル様主催で学園のホールでロージーの壮行会が行われた。



「ロージーさん、留学から戻ったら何をしたいですか?」


「何かやりたいと言うよりも、華やかな夜会を観てみたいです!でも、夜会に着ていくドレスとアクセサリーが無いです。誰がください」


 お調子者の男爵令息がロージーに聞くと、ロージーはそう笑顔で言った。

 きっと、「誰かドレスとアクセサリーをください」と言うのは、ロージー本人は冗談を言ったつもりなのだろう。


 それを聞いた瞬間、会場が盛り上がった。ロージーは何故盛り上がったのか分からないから様子だったけど、この時に会場にいた生徒達、特に女子生徒達を中心に心が一つになった。


『絶対、ロージーを夜会に招待する』と……。



 ロージーが留学してから、ロージーが夜会に参加できるように、皆で各所に根回しを始めた。


 国王陛下への根回しは、アビゲイル様に任せて、私達は貴族達への説得と根回しに走った。多くの貴族は、ロージーの魔法の事を知っていたため、二つ返事でロージーの参加を喜んだ。


 でも、土魔法の名家であるゲイル公爵家は反対した。保守的な考えのゲイル公爵は、歴史あるデビュタントの場に平民は相応しくないと言う考えだったからだ。ゲイル公爵家は歴史ある家のため、国王陛下でさえその意見を無視することはできない。


 しかし、次回の新年会でデビュタントする娘がいる家から多くの嘆願書が公爵家に届き、同じく次回の新年会でデビュタントするゲイル公爵の末娘からの半ば脅しにも近い説得により、ロージーが夜会に参加することを、ゲイル公爵は認めてくれた。


 ロージーの夜会参加が決まり、学園の女子生徒達の間で、ロージーへ誰が何を贈るか……駆け引きが始まった。ロージーの性格上、多くを貰おうとしない。夜会に最低限必要な物しか受け取らない事は分かっている。


 男爵家・子爵家の令嬢達は、早々に駆け引きから離脱し、連名でブローチを贈ることにを決めた。


 私は幸運なことに、イヤリングとネックレスを贈ることが決まった。週に2回放課後を一緒に過ごしていることが決め手となった。

 本当はドレスを贈りたかったけれど、絹や染め物を領地の特産とする家、服飾業が盛んな領地を持つ家、外国から珍しい布を取り寄せている家など、領地や家の威信をかけてドレスを作ろうとする家々の熾烈な攻防戦を見てドレスを贈ることは諦めた。


 しかし、熾烈な攻防が繰り広げられていたのに……隣国の皇太子がロージーにドレスを贈ることになった、とアビゲイル様から発表があった。隣国の皇太子には敵わないと、皆ドレスを贈ることを諦めた。仕方のないことだけど、皆悔しくって涙を流した。


 争いに敗れた令嬢達は、涙を流しながら、学園の食事やお菓子のさらなる品質向上のために学園に寄付金を送った。ロージーは、学園の食堂の食事を、いつもニコニコ美味しそうに食べるからだ。



 留学したロージーの話しはアビゲイル様経由で色々聞いた。驚くような内容がたくさんあったが、何より驚いたのは、隣国の皇太子達と力を合わせて隣国を救ったと言う話だ。


 どうやって、隣国を救ったのか気になるが、学園の生徒達は「さすがロージー・スミス」と言った様子で、誰もロージーが隣国を救ったことを疑わない。


 皆、早くロージーに会いたくって、色々話したくって、ロージーの帰りを心待ちにした。



 ロージーが、国へ帰ってきたのは夜会の5日前だった。

 夜会当日、夜会が行われる大広間にロージーが現れると、会場から感嘆が上がった。その可愛らしさに、誰もが息を飲んだ。


 ロージーのために準備した専用席に案内されると、さっそくこんなの主役であるデビュタント達に囲まれていた。ロージーも楽しそうに、飲み物片手にデビュタント達と話している。


 その姿に、ロージーの帰国早々に、馬車で王都の入り口まで迎えに行き、王宮に連れてきてよかったと思った。アビゲイル様の好意によりアビゲイル様の専属侍女達によるエステとマッサージで、ロージーは旅の疲れを癒すことができた。




「ロージー!!出てこい!」


 夜会を楽しんでいると、アーロン王子と言う異物が侵入してきた。

 昨年の意味の分からない、私との婚約破棄騒動の原因は、ロージーのせいだと、喚き散らした。

 また、ロージーを恐怖に陥れたストーカーも自分だと自白し、会場中の女性を敵に回した。


 それに、アーロン王子が、ロージーに向かい「愛してる」と言い出した。それを聞いた、一部の女性達は「ロリコン王子」認定され、冷たい目で睨見つけられた。


 このまま、ロージー最初の夜会は、最悪な思い出になってしまうと危惧していたら、国王陛下と王妃様の素早い判断と行動により、アーロン王子は見事に回収された。






 夜会終了後、私とアビゲイル様はアーロン王子が閉じ込められている部屋へ行った。宰相に、アーロン王子の解凍を頼まれたからだ。


 アーロン王子は体は氷漬けのため動けないが、口は呼吸のため塞がれてないため、良く動いた。

 せっかく、解凍してあげているのに、私とアビゲイル様、それにロージーの悪口をピギャピギャと言うから、思わず手元が狂ってしまた。

 狂った手元の火は、アーロン王子の髪を盛大に燃やしてしまった。


 アーロン王子は、燃える髪をみて「ピギャァ…」って悲痛な声を上げているけど……自業自得よね。


「まぁ、燃やされて可哀想なアーロン……」


 王妃様は慈悲に満ちた表情を浮かべて言った。夜会の会場でアーロン王子を水責めにした人と同一人物とは思えないほどだ。

 王妃様はあんなに激怒しいたのに、もうアーロン王子を許したのかしたら?


「やはり、氷の解凍は水で行わないとね」


「ピギャッーーー!!」


 いや、まだもの凄く怒っていた。


 王妃様の水責めは、アーロン王子の解凍が終わるまで続いた。


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