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出来損ないのノア  作者: きな粉
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6/7

ハッキング

「ねぇ、ノア。」

ニアが、俺をまっすぐ見つめた。

その瞳を見つめ返すことができず、なんだよ、と視線をそらす。

体力は回復して、みんなでかまくらの中に座っている。

先程のことを問い詰められるんだろうな。憂鬱だ。

「トマトってさ、逆から呼んでも、トマト、だよ。」

、、、不安になった俺が馬鹿だったよ。

横にいる亦凡さんを、ちらりと見る。

、、、なぜ不敵に笑っている!?

「ニア、『私、負けましたわ』って逆から読んでみろ。」

「わ、た、し、、、。ふ、ふぅん、ゆでダコさんにしてはやるじゃん。ま、まあ、ゆでダコさんにしてはだけど。」

まったく、くだらない話しやがって。

呆れると同時に、安心感が胸に広がる。

「なんの話ししてるんですか。

 本題に戻りますよ。

 今の課題点は3つ。

 この吹雪を抜けて、居住区に侵入すること。スピオンさんとの連絡方法を見つけること。

 そして、スピオンさんを誰か特定すること。」

「スピオンの特定、か。」

亦凡さんが呟いた。

スピオンさんの座右の銘は「敵を欺くには、まず味方から」であり、味方にも正体を明かさないのだ。

その完璧主義はぶりはもはや美しいが、今はとてつもなく迷惑だ。

「、、、物語でのスパイってさ、いっつも頭良さそうにしてるじゃないですか。

 俺、いつかぎゃふんと言わせたかったんですよね。」

亦凡さんは、目をパチリとまたたかせた後、顔をクシャッとして笑った。

「威勢の良いことだなぁ。儂は乗ったぞ。」

「ノアが言うなら何でもー。」

かまくらの中いっぱいに地図を広げる。

「まず、居住区に行く方法についてです。

 寒さの影響で、農作物は少ない。よって、この国には、狩猟の文化があるはずです。

 ハンターに見つかれば、ニアの能力でなんとかなります。

 よって、俺達が行くべきは、居住区に近く、日差しが温かい南向きの斜面。」

地図の真ん中に近い森を指を指す。

「ここです。」

ほう、ふうん、と、亦凡さんが、分かっているのか分かっていないのか、よくわからない声で頷く。

まあ、この人は、身体能力に全振りしているからな。

「スピオンさんと連絡を取る方法は、やはり、通信面でしょうね。

 この国は、気候の影響で、『神の選別』の際の国際協調の動きにあまりついていけず、先進技術は、あまり進んでいませんからね。

 ハッキングしても、他の宿主にバレにくいでしょう。」

そこで、ニアからの視線を感じた。

ニアは、目を細めながら、俺を見つめる。

 「、、、言ってくれ。

 あるんだろ、戦略。」

「ん。まあ、天才二アちゃんだからねぇ。

 愛しのノアくんのためにひと肌脱ぎますか。」

ニアが、ゆっくりと口を開いた。


ビービービーッ。

ゼラニウム連合国の総本部。

けたたましい警戒音が鳴り響く。

そこにいるのは、戦闘系でないゼラニウム連合国の宿主、モへードと、宿主ではないが、一般兵幹部として本部にいる、スピアと、アゲントだ。

ゼラニウム連合国は、国風的に愛国心が強いため、国民軍が結成されている。

戦場にいる宿主1人と、一般兵幹部が1人、そして、国民軍たちによって、今、この瞬間にギガント連合国との激しい戦いが、ノアたちが入ったところから、遠く離れた反対側、で行われている。

「なんやろう、こん音は!?」

ドタドタと、大きな足音を立てて走るのは、スピアだ。

「ハッキングだそうですよぉ。そんなの、あたしたちの国が対処できるわけないじゃないですかぁ。

 世界の終わりですよぉ。」

「そう情けない声を出すな、アゲント。」

「だってぇ、、、。なんで、モへードはそんなに冷静なんですかぁ。」

スーツをぴしっと着こなしたモへードは、四角いメガネを上げた。

「確認すればいいだけのことだ。

 まずは、自分の端末を確認するくらいのことはしろ。」

モへードの指示に従い、2人は自分の席へとついた。

モへードもパソコンを見る。

そこには、10、9、というカウントダウンと、その後ろで次々と描かれていく文字式が映し出されていた。「スピアちゃんの画面も、私と同じ感じですねぇ。

 あーあ、やっぱ駄目ですよぉ。無理ですよぉ。」

そう言って、アゲントは、パソコンを殴った。

ゴン、と鈍い音がしたと思うと、画面が真っ暗になる。

「うわわ!何やっちょんのか!!アゲントちゃん!?」

「あああああぁ、壊しちゃったぁ。そこまでやろうと思ってなかったのにぃ。

 もう全部だめだよぉ。」

「貴様は、なぜイライラすると、すぐものを殴るんだ!?」

「だってぇ、これでテレビ直ったって聞いたことあってぇ、、、。」

そのとき、モへードと、スピアのパソコンから、パパパパーン、と間抜けな音が響いた。

『親愛なるゼラニウム連合国へ。

 おめでとう!このメッセージが届いたということは、君たちの中に、藁が詰まっていることが証明されたというわけだ。

 そんな馬鹿な君たちに愛を込めて。』

「ふん!!」

グシャ、と音がする。スピアも、パソコンを叩き割ったのだ。

「わしん国馬鹿にするやつは許さん!自然豊かで、優しいこん国は、わしん宝物や!

 どうせ、ギガント連合国ん仕業やろうね。 」

モへードのところに、スピアは歩いていき、そのパソコンも壊そうとする。

「おい!やめろ!いくらすると思っているんだ!

 ただでさえ、万年財政不足なのに、何を考えている、貴様ら!」

モへードが、必死にそれを押さえつける。

「貴様たちは、あとで報告書だからな。覚えておくんだぞ。」

「、、、でも、でも、今出す相手なんておらんのやねえかな。」

その言葉に、2人の肩が揺れる。

「元帥様、ずっとカタカタ震えち、小声じブツブツ言うち。

 わしには、あげなん尊敬できんちゃ。

 あげなんが守る国なんて、、、。」

「おい!」

モへードが声を荒げる。

「口を慎め。元帥様、そして、国民たちに対しての冒涜だぞ。」

スピアが、ギュッと下唇を噛みしめる。

「、、、でもぉ、アゲントもそう思いますぅ。

 だってぇ、他の宿主様や、幹部兵たちも、どんどん行方不明になっててるじゃないですかぁ。

 もうまともなのは、5人だけですよぉ?前は、もっともっといたのにぃ。」

モへードが拳を握り込む。

少しためらう様子を見せたあと、ゆっくりと口を開いた。

「、、、俺は、この中に、スパイがいると思っている。」

1音ずつ噛みしめるように言われた言葉は、2人の胸に突き刺さる。

「そげなわけ無えやろう!?わしらは、ずっと前から一緒におる仲間!

 疑わんじくりい!」

「スピアに以下同文ですぅ。

 もう、怒っちゃいますよぉ、モへード。」

モへードは、力なく笑った。

「そうだ。この中に、スパイなんているはずなんてない。

 、、、よし、貴様たちは今すぐ報告書をかけ!そして、パソコンの弁償代は、体で払ってもらおうか。」

「いやぁーん、エッチですねぇ。」

「何を言っているんだ、貴様は。

 雑用に決まっているだろう。

 まずは、雑巾がけ100周!」



俺は、眼の前にいる、老人に頭を下げた。

「ありがとうございました。」

「いやいや、お安い御用だよ。」

俺たちと、運悪く遭遇し、ニアの能力によって、感情をを注入され、居住区に導いてくれた哀れな狩人だ。

「特に、おもてなしもできなかったからね。

 まあ、旅を楽しむんだよ。」

世界を旅する旅人、という設定の俺は、ありがとうございます、と言う。

宿主以外は、世界を旅できるほどに平和な世の中だ。

「にしても、君たちは、整った顔をしているね。

 さらわれないように気をつけるんだよ。えっと、おじいちゃんだっけ。」

俺とニアの祖父、という設定の亦凡さんが、ニコリと微笑む。

本人は、年齢差に嘆いていたが。

「しっかりと、この子たちを守ってあげるんだよ。

 もちろん、自分を守ることも大切だけれどね。」

亦凡さんは、ハッとしたような顔をしたあと、頷いた。

その後、当たり障りのない会話をして、老人から離れる。

「ニア、亦凡さん。」

小声で2人に話しかける。

「わかりましたよ、スパイは、この国の本部の中にいます。」  

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