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出来損ないのノア  作者: きな粉
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2/7

宿主たち

突然、電話がなった。

コートの内側のポケットから、携帯電話を取り出す。

「はい、もしも、、、」

『おいノア!ニア!』

その大きい声に、思わず、携帯電話を耳から離す。

そのガンガンとなる大きい声の持ち主は、我が国の宿主が一人、関亦凡さんだ。

身長は二メートルを超え、70を超えたのに、まだ現役を言い張っている。

「うわ、ゆでダコさんじゃん。」

『おい、小娘!儂はゆでダゴではない!』

「ゆでダコさん、怒るとすぐ顔真っ赤になるし。ゆでダコさんの名前、書きにくいし。」

『カタカナでグアン・イーファンと書けばよかろうに!

 、、、じゃない、早く帰ってこんか!』

ほんとに声でかいなぁ。スピーカーモードでもないのに、なんでニアと会話できてんだよ。

「なんでそんなに慌ててるんですか?亦凡さん。」

『それがだな、、、モーガンがお怒りだ。』

「え」

『神の起源を語られたそうでな。

 儂とクラリスだけではさばけんわ。』

モーガン・キャロウェイ。

我らがエレノア連合国の総司令官である。

右目を隠す大きな眼帯、その下の頬にある大きなやけど傷、服の間から覗く無数の傷跡。

それらが、彼の進んできた道のりを示している。

、、、怒ってるのか。嫌だなあ。

「コールはいないんですか?」

『いると思うのか?』

「、、、ですよね。」

ニアを見る。

能天気に地面のアリと遊びやがって。

『元はといえば、お主らが、掃除屋を呼んだからだぞ!また危険なことしやがって。

 いつも言っておるだろう!お主らは未成年で、戦争に関わるべきじゃない!

 家で適当に勉強して、適当に遊ぶのがしご、、、』

横から、ニアが俺の携帯電話を取り上げた。

「あ、電波が悪い。めっちゃ悪い。

 あ、あー、聞こえないー。」

『何っ!?お主ら、圏外の場所にいるのか!?

 ったく、そんなところまで行ったのかお主らはまったく、、、』

ニアが電話を切る。そのまま電源ボタンを長押しし、携帯電話の電源を切った。

「おい、後でどうせ怒られんだぞ。」

「指滑っちゃっただけだもん。」

「よくそんな開け直れるな。」

にしても、まったくもって帰りたくないな。

亦凡さんのお説教に、総司令官の機嫌の悪さか。

「おーい、ノア、眉間にシワ寄ってるよ。

 シワに加えて、白髪は、、、あたしと同い年とは言えないね。」

「、、、白髪じゃない、銀髪だ。

 じゃあ、行くぞ。」

そういうと、ニアは大げさに嫌そうな顔をする。

「ええー、走るの?」

「車待ってるより早いだろ。

 ほら、よーい、」

ギリギリ、と音がなる。

俺と、ニアの足の筋肉が凝縮される音だ。

「ドンッ」


「ハァッ、ハアッ、あ、あたしの勝ちだね。」

「どう考えても、ハアッ、俺の勝ちだろ。」

「少年少女!」

エレノア連合国の城かつ、宿主たちの総本部に着き、疲れ切った俺たちに、張りのある声が届いた。

「汗をかいて健康的だけどね、血まみれってのは最悪だよ。

 医務室に来な。」

シワのない白衣を着こなしたその女性は、二グラム・リリウム。

我らがエレノア連合国、宿主専属医だ。

こちらも、亦凡さん同様、相当元気である。

亦凡さんよりは年下とはいえ、50歳超えて、、、

「おい、ノア。私は、永遠の19歳だよ。」

うちの軍部で、唯一宿主ではないが、お聞きの通り、勘がとても鋭い。

医務室に向かい、体を洗い、替えの服に着替えさせてもらう。

「まぁ、あんたたちのことだから、怪我はしてないね。

 さすがは、『厄災の双星』さん?」

「やっぱその名前考えた人ダサいよねー。

 私さま、いつか一発は殴りたい。」

「同意だな。」

二グラムさんは、カカッと、快活に笑った。

「で、モーガンが怒ってんだろう?

 早く行ってやんなよ。」

「二グラムさんは行かないんですか?」

「私は、宿主軍人どもの考えは、よくわからないんだよ。

 ホラ、さっさといきな。

 昼間から酒に溺れたいんだよ、私は。」

「せんせー、めっちゃ下戸なのに?」

「、、、下戸がアル中じゃいけない理由はないのさ。

 差別反対運動をしてやろうかぁ。差別はんたーい、カッカッカ。」

「もう酔ってますよね。」

その瞬間、目にも止まらぬ腕さばきで、医務室から、追い出される。

これが、酔曲拳か、、、。

「これは完全にノアのせいでしょ。」

「仕事中に飲む二グラムさんのせいだろ。」

そうして、無駄に広い城の最奥と向かう。

政治、軍備、その他の国の中枢的な部分は、基本的に、宿主のみが行っている。

そのため、一般人はほとんどいないため、無駄に広い城が、もっと無駄に広くなっているのだ。

レッドカーペットを辿って歩いていくと、そこには重厚な木製の扉があった。

軽くノックをする。

「エレノア連合国の宿主が1人、ノア・キャロウェイ。ただいま到着いたしました。」

「同じく、エレノア連合国の宿主がひとりー、ニア・キャロウェイ。到着しましたー。」

ドアを開けると、手前には、椅子に座り、どんやりとしている、亦凡さんと、クラリスさんが。

正面の奥には、同じく椅子に座り、俺たちに背を向ける、総司令官がいた。

、、、あまりにも空気が死にすぎてんだろう。

医務室に戻りたい。飲んだくれのほうが、まだましだ。

「はーい、みんな!

 この空気を照らす天使、ニアちゃんの登場だよ!」

こういうときの、ニアの空気の読まなさは、助かるというか、助からないというか。

そのとき、亦凡さんが、立ち上がった。

「モーガン!孫たちの登場だぞ!

 こいつらに話を聞いてもらえ!」

、、、こいつ、俺らに任せやがったな。

総司令官は、亦凡さんが言ったよう、俺たちの祖父だ。

まぁ、血はつながっていないらしいが。

だからといって、このムードを押し付けるな。

「そうですわね。それがよろしいかと。

 それではわたくし、野暮用がありますので。」

クラリスさんは、華やかな笑顔でそう言った。

この人も逃げようとしてるな。

クラリス・クロイス。

我らがエレノア連合国の宿主が1人。

金色の長い髪と、常に維持された微笑み。

そして、シスター服を模したような服装。

エレノア連合国宿主の中で、最も新入りであるこの人のことを、俺はまだあまり知らない。

「待ってください。こうなったら、全員で共有するべきですよ。

 総司令官、なぜそんなに怒っているのですか?」

亦凡さんと、クラリスさんが固まる。

逃げさせるわけ無いだろうに。

すると、突然朗々たる声が響いた。

「昔々、人間たちは、戦争を続けていました。

 ー何回も、何回も。

 みんなが悲しんで、辛いとき、神様が現れました。

 神様は、私たち愚かな人間たちから、『負の感情』を消し去りました。

 そう、『神の選別』です。

 すると、どうでしょう。

 みんな、戦争が馬鹿らしくなって、やめてしまいました。

 自分、家族、友人。戦争なんかより、ずっとずっと大切なものを見つけたのです。

 ーそうして、長く続いた戦争は終わりました。

 その上、神様は、人間がもう同じ過ちを明かさないよう、ご自身の力の一部を授けてくださいました。

 『宿主様』に預けた『神石』です。

 宿主様たちは、その力をお使いになって、私たち国民を守ってくださっています。

 神様、宿主様たちに感謝し、尊敬の意を持って、日々の生活を過ごしていきましょう。」

総司令官は、椅子を回して、こちらを見た。

「まったく、馬鹿らしい。」

手にしていた、カラフルな子供向け聖書が、バラバラに引きちぎられた。

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