表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出来損ないのノア  作者: きな粉
PR
1/7

ノアとニア

2つの影が、男に迫ってくる。

「ニア、いたぞ。」

「あっ、やっと見つけたー。」

1つは、左目に軽くかかった銀髪と、きだるげな青い瞳を持つ少年のもの。

夏だというのに、ハイネックの服と、真っ黒の長いコートを着ている。

もう1つは、無造作にはねた黒髪と、大きく開かれた赤い瞳を持つ少女のもの。

こちらもハイネックであり、全体としては少年と統一感のある装いだが、腹、二の腕、足など、だせるところは全部切ったような服を着ている。

「いやぁ、今日はなんだかいい天気だね。

 あたしとノアの結婚式にちょうどいいよ。」

「お前と結婚するバカは、どこにもいないよ。」

「あっ、バカって言った。バカって言ったやつは、カバと結婚するんだよ。」

「ガキかよ。」

「16歳はまだまだガキですよーだ。」

他愛のない雑談。それを標的を前にしてやる度胸を、男は馬鹿にし、余裕を感じ、そして、ほんの少しの恐怖を覚えていた。

「にしてもいい天気すぎるな。

 今日今からこの場所で、」

1人死ぬっていうのに。



「改めまして、ここ、エレノア連合国の宿主が1人、ノアと。」

「同じく、エレノア連合国の宿主が1人、ニアだよん。」

俺は、黒いスーツをだらしなく着こなしたその男を見る。

「あなた、ロラレスト連合国からのスパイ、ロッツァさん、ですよね?

 なんで我が国に?今そちら、戦争中でしょう?」

ロッツァさんはニヤニヤと笑うだけだ。

すると、ニアが不機嫌そうに眉をひそめた。

「ねぇ、おじさん、ノアが聞いてるんだから、ちゃんと答えようよ。

 ノアの質問には、3秒以内。

 社会常識でしょ?」

男は馬鹿にした笑いをやめない。

ニアの言っていることはよくわからないが、もともと期待していたわけではない。

ニアの機嫌の悪さもヤバそうだし、ここで殺しておしまいだな。

袖口から銃を取り出そうとしたとき、ロッツァさんが、急に口を開いた。

「、、、おい、ガキども。この国の情報、全部吐け。そうすれば泣かせないでやるよ。」

「え」

思わず口から漏れる。目の前の男を見つめた。

「なんで、あなたに俺を泣かせられると思うんですか?

 病院、予約しときますか?」

ブチッと音が聞こえた。ロッツァさんの顔が怒りで歪む。

「あー出たよ、ノアの無自覚煽り。」

楽しくなってきたぁっ、とニアもニヤニヤと笑い始める。

「おい、ガキども。」

胸元からおもむろに銃を取り出した。

「調子乗ってんじゃねぇぞ!!」

バンッと銃が俺に向かって発砲された。

「、、、へ?」

間の抜けた声がする。

「どうしましたか?」

俺のコートから伸びた手錠がキラリと光った。

「は?跳ね返し、、、え、いや、その手錠何製だよ!?」

「百均で買ったプラスチックのです。」

「想像の百倍低いクオリティだなぁ!」

ロッツァさんは俺を激しく睨む。

「ガキのくせに戦争に出てくんなよ!!!大人しく、、、」

言葉が途切れた。ニアが後ろから羽交締めをしたからだ。

、、、さっきまで隣に居たはずなのにな。

心臓が大きく脈打つ。

いつも気味悪い笑顔を浮かび続けるニア。

戦闘のときは、それがより顕著に現れる。

、、、まぁ、こいつが敵でないことを手を上げて喜ぶしかないだろう。

「ノア、やっちゃってー。」

ニアの声で、俺はハッとし、ロッツァさんに近づいた。

手錠の俺とつながっていない方を、ロッツァさんの手首の前で構える。

「おい、なにすんだ、、、」

ガチャン。

途端に、ロッツァさんの動きが止まった。

鳥が飛ぶ。風で木が揺れる。どこか遠くで遊ぶ国民。

その動きに交わることを忘れたように。ロッツァさんは、固まり続ける。

ニアをちらりと見た。

もういいよん、と軽い声が聞こえてくる。

ため息をついた。

、、、ついても状況は何も変わらない。

手錠を外した。

ロッツァさんが再び動き始め、、、


ブチャ。


血。血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血。

眼の前に血が広がった。

それらは、重力に従って下へと落ちていく。

それが、ロッツァさんの、最後の動きだった。


ロッツァさんは、もうそこにはいず、羽爻締めをした姿勢のまま、血に染まったニアがいた。

「やっぱ、あたしたちの能力相性サイコーだね。

 運命かなぁ。」

「、、、お前と運命なら、俺は世界中の女に土下座して、なんとか結婚してもらうよ。」

空を掴む手錠にぼんやりと反射した俺の顔が見える。

顔についた血。そして、いつも通りの無表情。

またため息をつく。

ああ、幸せがまた逃げていった。

俺の能力は、「世界を『忘れる』」。

俺と手錠でつながったものは、世界を忘れようとする。

簡単に言うと、脳の処理速度が完全にゼロになる。

だから、動かなくなる。このクソみたいな世界には絶望しきっているから。

ニアの能力は、「あたしたちを『吾する』」。

ニアと身体的接触をしたものは、ニアの感情状態が、相手の身体状態とリンクする。

俺の能力と合わせることで、その大きな衝撃を一度に食らわせられる。

だから、こんな派手に血が飛び散っているわけだ。

こいつの血がついてる服着たくない、と言って、颯爽と服を脱いだニアが、俺に抱きついてきた。

こいつほぼ下着みたいな短さの服着てるから、あんまり意味をなしてないけどな。

「おい、離れろ。

 お前、下着姿なんだから。恥じらいを持て、恥じらいを。」

「えー、いいじゃん。双子なんだから。

 それともノア君、思春期ですかぁ?」

元ロッツァさんを見る。

この能力の使い方をすると、いつもこんな悲惨な状況になる。

ニアがロッツァさんとくっついているのがそんなに嫌だったのか。それとも。

、、、いつも最悪な気分なのか。

俺はニアを無理やり引きはがす。

「お前なぁ、あんまりそういうこと軽々しくやるなよ。」

ニアの間抜けな大きな赤い目を見つめる。俺とまったく違う温度をもつ、その赤い目を。

「-その体、お前の物じゃないだろ?」

空気が一瞬にして冷える。

キャハ。

腹の底から響くような、甲高い笑い声。

「ノアから『あの子』のこと言うなんて珍し。」

キラリ、とニアの喉元が光った。

淡く虹色に光る、美しいそれは『神石』だ。

俺たちが宿主であることを表すその石。

それは、俺にとっては呪いの石、といったほうが良いだろう。

今すぐにでも、叩き壊したい衝動に駆られ、指先がピクリと震える。

耳障りな笑い声は、未だに続く。

さっさと服着ろ、と俺はつぶやいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ