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魔界の平和は彼らによって  作者: ダイアのナイン
第1章 皇国遠征編
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Chap1 ep17-総攻撃、迫る群衆へ

 ――百鬼夜行。その時、皇国が最も滅亡に近付いていたと言われる悲劇の災害。実際に当時の皇国軍は半ば壊滅状態に陥り、事後解体・体制の見直しが行われた。無数の魔物が統率の執れた行進により各地の集落を襲った。


 民間人ですら農具で武装し、参戦することが強いられた程である。当時の皇国軍は半ば壊滅状態に陥り、事が終わりを告げた後、解散・体制の見直しが行われた。遥か昔の事ではあるが、その惨状は今に至るまで語り継がれ、皇国に住む者で知らぬ者はいない。


 首謀者は未だ判明しておらず、人為的な災害であると主張する者や、天の怒りに触れたと主張する者などによって様々な憶測が飛び交う。その中で最も有力とされているのが、"究極体による反乱説"。究極体と呼ばれる、高度な知性、圧倒的な戦闘能力、将軍並みの統率力を併せ持つ、魔物の頂点的存在が元凶であるとする説である。


 実際に、究極体と思われる魔物の目撃証言も多数報告されており、その膨大な情報からいくつかの究極体のイメージが完成していた。勿論その中にはラドエフやデルデノットが交戦した長い鼻の魔物や狐の魔物も含まれている。一度目で生き延びた究極体はまだ残っていた。惨劇が再び皇国を襲おうとしている――



 外がやけに騒がしかった。様々な声が皇都に響き渡っている。大陸共通語だけでなくウグィス語も混じっていた。焦燥感が滲み出るような怒号、それに対する返答や異議に加えて、時折挟まれる物騒な言葉の数々が、まもなく訪れる百鬼夜行の正体を物語る。


 そんな騒がしい皇都の様子を窓越しに見ることすら叶わない。病床に伏せる負傷者は不満を膨らませ続けていた。話し相手の1人でもいれば退屈も少しは和らいだことだろう。



♦︎万物秘澱の湖


「まもなく、ですね」


 声を掛けられたシュレン小隊長は無言で頷く。議論の結果、シュレン小隊とレイエス小隊は合同で前線に立つこととなった。シュレン小隊に至っては最前線、湖を覆う小森林を取り囲むように弧を描く陣形を組む。シュレン小隊には、弓手や魔術使いなどの遠隔攻撃の手段を持つ隊員が臨時的に集められ、サンティアもこの小隊に配属された。


 理想はシュレン小隊による遠隔戦での完封。それが叶わなくとも、山間部から平原にかけて配置されたレイエス小隊が進路を塞ぐ。堰き止められた群衆を、ウォック小隊・皇国軍の合同部隊と共に囲い込む形で一掃する算段であった。余る2個小隊は最後の砦として皇都に残る。無論、最高戦力であり総指揮官である連隊長は皇都で戦報を待っていた。


「来るぞっ! 射撃準備ィ!」


 シュレン小隊長の叫び声は、周辺に響き渡った。それぞれの隊員が、多種多様な属性の魔力を構築し、弦を引く者は呼吸を整える。とうとう行軍の先頭を征く魔物が姿を現した。


「標的確認! 掃討しろおおォ!!」


 様々な属性が入り混じった魔術砲は混色の輝きを見せ、目に悪い。木々が悲鳴を上げ、怯まぬ魔物の頭には矢が突き刺さっていく。この一瞬の間で、100を優に超える数の魔物が地に倒れた。それでも、何事もなかったかのように行列が続く。


「第二撃もいくぞ!」


 休む間もなく魔力が大量消費された。再び放たれた魔術砲は、第一撃とは比にならない程の被害を与え、1匹たりとも抜け駆けを許さない。魔物と木々が断末魔を上げる。血肉と燃焼が齎す異臭が周囲に立ち込め、隊員の鼻腔を刺激した。湖を囲う小森林が根こそぎ取り払われ、漆黒の船体が露わとなる。心地悪い予感が小隊長を襲うが、気にせず魔力を練り上げた。火属性を持つ真紅の光線が傷の1つもない対象に直撃する。


「だめだ」


 無気力な声が漏れ出た。船首の人面がにたにたと笑っている。小森林は魔術砲を遮る障壁になっていたと同時に魔物の行軍を阻む足枷にもなっていた。今となっては、どちらの役目も終えてしまっている。遠隔戦での勝利だけを考えて構成されたシュレン小隊は、接近を許せば圧倒的な不利を押し付けられてしまう。雪崩れのように、行列を成した魔物が速度を増して迫っている。


「迎撃は不可能だ。撤退しろ!」


 掛け声と共に、レイエス小隊が待ち構える山間部への後退作戦が始まった。隊員達は死に物狂いで駆け出し、とても統率があるとは言えない惨状が展開される。それでも全員が助かる訳ではない。逃げ道を失い、複数の魔物に囲まれた者の断末魔が上がる。魔物の集団は圧倒的な数的有利を突き付け、接近戦の術を持たない隊員を蹂躙していった。犠牲は小隊の半数に及ぼうとしている。


 命懸けの足止めを試みた、いくつかの班がその場に留まり1匹でも多くの魔物を仕留めるべく魔力を費やし続けた。フローセル班から引き抜かれた弓手も同様の選択をする。矢が尽きるまで戦い続け、底を突けば短剣を抜くつもりであった。しかし付近で撤退を叫び続けていた小隊長に腕を引かれ、後退を強いられる。


「行け。お前にはまだ仲間がいるだろう」


 魔術師と比較すると弓手の攻撃は火力に劣り、抑止力としての効果を期待できない。故に1人でも多くの人員を生かすことが優先された。弓手は納得していない。それでも小隊長はさらに強い命令形で撤退を促す。それには戦略的な意味合いも込められていたが、フローセル班から半ば無理矢理引き抜いた彼女を犠牲にするわけにはいかない。そんな主観的な思いも含まれていた。命懸けの足止めも虚しく、行軍の勢いが弱まることはない。小隊長自身も仲間の元へ合流するべく体を反転させた。

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