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悪意の神戦 その4

100話目になります。

ここまで読んでくださってる皆様、誠にありがとうございます!

拙いものですので、生暖かい目で緩く見ていただければ幸いです。

融合傘を持ち走る静也は妙な冷静さを持っていた。


視界を染める色は褪せて行き、音は遠ざかる。

すべてのものを全体的に見ることができる。

一種の感動を感じていた。


ノーナは依然戦意喪失状態でいる。

瞳には光は宿っておらず、地面にへたりこんで死を待っている。

静也が生きていることを知らずに。


だから、静也は叫ぶ。

「俺は生きている」「諦めるな」と。


その声に気付いたノーナは、光の宿っていない瞳で声の元を見る。

するとみるみるうちに、瞳に光が宿り、活力が沸き上がり、立ち上がった。


そして、ノーナは呪文を唱え、静也にアイコンタクトをする。

「やるぞ」、と。



『ムシケラ共がぁ!念入りに潰さないといけないようだなぁ!』

「すまないが、そう簡単には潰れないから。いくらでも反撃させてもらうぞ。」

「貴様の好きにはさせぬ!<再生阻害>!<身体脆性向上>!」


静也は左手に傘を召喚し投擲する。

『悪意の神』は、難なく掴み、放り投げる。


つかんだ一瞬、静也が見えなくなってしまう。

そのことを読んでいた静也は融合傘を盾状態に変更する。


傘を広げ向かってくる静也を『悪意の神』はシールドバッシュか、タックルかと考える。

神である自身の身体に一種の自信を持っていたため、『悪意の神』は待ち構えていた。


推進力と脚力は傘の能力で向上され、鉄球が弾丸並みに向かってくる。

しかし、『悪意の神』は、真正面から受け止める。

ぐんぐんと押し潰さんと、迫る傘を素足で轍を作りながら、やっとのこと突進が止まる。


そして『悪意の神』は、傘を放り投げると、目を見開いた。


小さな拳大の傘が独りでに回転していた。独楽のように。

静也はというと、投げられた傘と一緒に宙で止まっている。


宙にいる静也に気をとられた『悪意の神』は目の前にいる回転している傘のことを見放してしまい、どこかに消えてしまった。

どこに消えたのか、傘を探しても見つからない。


そうしていると、突然体が切られてしまう。

左手横腹に深い切り傷。

ナイフか?とも思ったが、ノーナと静也の二人はナイフを装備していない。

つまり、魔法の類いと考えるのが妥当。


静也の持っているのは精々、解体用のナイフ。

革を剥ぎ、腹を割いて内臓を取り出す程度の物だが、上等の物ではない。

『悪意の神』の肉は静也の持つナイフでは到底切り傷すらつけられない。

そのこと自体静也はわかっていた。


今まで解体できたのは精々、獣までだった。

と、いうも獣しか村の外にいないからだ。

金属のような光沢を持つ虫を束ねたような身体に手持ちのナイフでは傷つけられる訳もない。


だから、自分の身体を傷つけたのはノーナと判断した『悪意の神』は、ノーナに怒り狂ったような無表情で向かう。


しかし、すぐに真相に気づく。

再び、自身の身体に傷が入る。

背中に、深々と切り傷が。


攻撃してきたものの正体は、傘だったのだ。

グラインダーの刃の回転のように、高速回転することで、易々と傷を付けることが可能になったのだ。

戦闘に集中していたため、あるアナウンスを聞きそびれる。


《スキル<傘手裏剣>を習得しました。》




『チィッ!チマチマと…!ウザイんだよぉ!!』

「反省も後悔もないぜ?なんたってノーナに手を出そうとしてたんだからな。俺が怒らないとでも思ったのか?精神年齢お子ちゃまめが!」

『うるせぇぇぇ!』


静也の安い挑発に乗ってくる『悪意の神』。

依然『起死回生の神』が言っていたことを行ってみたのだが、効果が絶大だ。

相手の調子を崩し、自分の調子に持っていく。

実戦においてこの上なく有利だが、実際にされた方はたまったものじゃない。


「お前のせいで運命や、人生をめちゃくちゃにされた人のことを考えたことがあったか?!悪いと思ったことはあったか?!」

『何を今さら!悪いと思う?んなわけねぇだろ!運命や人生を自分のちからで切り開けなかっただけだろうが!それを俺のせいにしてんじゃねぇよ!』

「お前は俺の知り合いをめちゃくちゃにしようとしているんだ!それを知っておきながらみすみす見過ごすわけにはいかねぇだろ!」

『それがずっと、このさきそいつらを見てやれるのか?できねぇことを無責任に言ってんじゃねぇよ!この偽善者が!』

「偽善でも、妾は助けられた。なにもしない善者より、行動を起こしてくれる偽善者の方が妾はまだ良いと思っておる。」

『ただのきまぐれに決まってんだろうが!お前ら魔族なんて、人間からしたら羽虫同等なんだよ!助ける理由なんて気まぐれに過ぎないだろうが!』


静也は静かに激怒した。


目は見開かれ、髪の毛は逆立ち、血管が浮き出ていた。

ノーナのことを羽虫同等と言われ、腹が煮えくり返っていた。


ついに堪らず激昂してしまう。


「ノーナが羽虫だぁ?んなわけねぇだろうが!ノーナは心がある!感情がある!お前よりよっぽど人間だ!お前の方が羽虫だろうが!」


『言ってくれるな!下等生物がぁ!』


白目であったところは黒くなっている『悪意の神』の瞳は恐ろしく、狂気すら感じられる。

そんな瞳で睨み付けられれば、誰であれ畏縮する。


般若の面のような顔で向かって来られたら、失禁してしまうような恐怖を味わうだろう。


怒りの面で二人はそれぞれを睨み付けながら、強く大地を蹴り、相手との距離を詰める。

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