悪意の神戦 その5
『死ねぇぁ!クソがぁ!』
「そんな汚い言葉を使うんじゃねぇ!」
もはや、どっちもどっちである。
両者とも、怒りで語彙力が幼児退行している。
しまいには、同じ言葉を連呼しているのではないかと思うほどだが、気にしてはいけない。
言っていることはまるで、稚語だが、両者の行っていることは生死を賭けた戦い。
静也はあわよくばこの『悪意の神』を帰らせることも考えていたが、『悪意の神』に甘いことをしていたら、必ず再び戻ってきて、村の人達を実験道具として死ぬまで弄るのだと考えると、『悪戯の神』と同じようにするのが良いのではと考えるのだった。
神に人間の法など通じるわけがない。
それに、捕らえたところで無意味に終わるのは目に見えている。
前世の法も通じない、
今世の法すらも通じない。
むしろ、質の悪い宗教家達に崇められ、奉られ、世界を制服するのでは、と最悪のシナリオすら沸き出る。
この世界に生きて、成長し、少なからずこの世界に順応してきているのだろうか、生死を別つ戦いならば、生かして帰すなんていう甘ったれた選択などない。
あるのはただひとつ。
村の人の為に戦い、勝つだけだ。
両者とも蹴り、殴りの肉弾戦を繰り広げていた。
両者とも、殴っては殴られ、殴っては殴られの繰り返し。
血味泥の戦いを、鈍い音を響かせていた。
戦いの中で成長を見せる静也に『悪意の神』は、危機感を感じていた。
殴れば殴るほどタフになり、殴られれば殴られるほど、その攻撃に重みが増していく。
このまま続けていれば負けるのは自分だと思い始めるくらいにだ。
だから『悪意の神』はある手段を使う。
それは
『おらぁっ!くたばれ!』
『悪意の神』が狙ったのはノーナである。
その攻撃は拳圧。
神気の混じった拳圧だ。
ノーナを殺してしまえば、きっと静也は冷静でいられなくなる。
もしくは、ノーナを守れなかったことに自分に落胆し、大きな隙が生じると、思ったからだ。
『悪意の神』の今の表情は、悪役を極めたような極悪な表情である。
ノーナは常に攻撃が来る、と想定していながらも、実際に来た攻撃があまりにも早すぎた為に対応が遅れた。
しかし、その拳圧は、一本の傘によって受け止められた。
静也は『悪意の神』の真ん前にいる。
傘召喚の効果範囲内にノーナがいて、そこで召喚し、傘操作で傘を開き、盾としての役割を持たせたのだ。
まさか自分の攻撃が受け止められるとは思わなかった『悪意の神』は、驚愕で言葉が出なかった。
驚愕した、その隙を付くように静也の拳が『悪意の神』の顔面に入る。
全体重と傘の能力を乗せた強烈な一撃。
地面に叩きつけるように殴り抜ける。
後頭部から地面に叩きつけられ、鈍い音を出す『悪意の神』。
気絶こそしないが、行動が出来ない。指ひとつ、動かすことさえ。
脳がグチャグチャにかき混ぜられたのだから、再生するとしても時間がかかる。
つまり、チェックメイト、詰みである。
「この世界だけでない、全世界には悪意に溢れているだろう。そして、それを糧にお前はまたここに来ては、全人類を悪意に染めようとするだろう。」
当然である。神の中でも復活のできる神なのだから、時間さえ過ぎればまた復活、再降臨することができる。
故にここで殺されることに対して恐怖心はない。
「だから、もう二度とここで悪さできないように、俺がびっしり教えてやらないと、なぁ?ノーナ?」
「うむ。こやつには、妾もきちんと教育が必要だと思っておる。」
「と、いうことで、あっちじゃ犯罪だけど、ここでなら許されることをしたいと思います。」
そう、静也のしたいこととは。
拷問である。
精神的に、肉体的に追い詰め、トラウマになるくらいにまで虐めぬく。
ついでに有益な情報があれば吐き出させる。
そして、トラウマを植え付けたところで、殺す。
拷問である。
どれだけ非道なことをしているのか分かっていても行えるのは、異世界にやってきて、その環境でそだってしまったからである。
環境が人を変えるのは前世でも知られている。
静也とノーナ、二人は手をわきわきと、マッドでサイエンティスな顔で『悪意の神』に近づいていくのだった。
その雰囲気に『悪意の神』は、流石に恐怖した。
その後行われた拷問については詳しくは話せないが、確実にトラウマになるような惨く、痛々しい、ソレばかりを行っていた、と言おう。
静也とノーナは確実に拷問の基礎と、応用をマスターしてしまった。
だが、この世界で、拷問の有用性は非常に高いため、論理面で言えば良くないものの、実に役立つものだ。
拷問を終え、静也は『悪意の神』の頭を傘で潰し、息の根を止め、ノーナは魔法で骨すら残さない状態になるような上位火魔法で燃やした。
この世界に少しでもいてほしくないからだ。
二人の凶暴性は、格上げされたと言っても良い1日だった。




