9:元勇者…流石にひと言物申す。
「おい、お前ら2人!何、解決したみたいになってんだ!?特にエン爺!あんた本当にどっちの味方だよ!?」
唯一の連れが、自らを殺そうとやって来た女の同行をあっさりと許したのだ。
そんなエンゾーにジンが詰め寄るのは当然であった。
しかし一方のエンゾーはというと・・・
「まぁ良いじゃろ別に。お主は強いし、サリヤ嬢に遅れをとるとは思わん。なら別に問題はあるまい」
と、それこそ試行錯誤した刀の出来に満足したかのような、気の抜けた顔でそう答えるのみである。
「良い訳あるか!そりゃ、あんな女に俺が負ける気は毛頭無いよ!あんな!女に!」
「ムッ・・・アンタこそ実際本当に強いの?私、これでも学院じゃ敵無しだったんだからね!」
「・・・今の聞いたか、エン爺。学院での評価が本当の戦いに関係あると思ってる甘ちゃんだぞ。こんなヤツ連れて行ってどうするんだよ?」
「お前さんの言うことは分からんでも無いが・・・でも、それなら尚更殺される心配など無いのではないか?」
「だーかーら!それはあくまで戦闘での話だよ!さっきコイツも認めてたろ。この女は俺を『暗殺』しに来たんだよ!俺を殺せればオールオッケーなヤツが正攻法で挑んでくるわけ無えだろうが?俺達の食いモンに毒盛ったり、寝首をかいてきたりしたら、幾ら俺だって危ねえんだよ!?」
「そっ、そんなこと・・・・・・・・・するわけ・・・ない・・・でしょ?」
「お前ホント嘘下手だな」
「大きなお世話よっ!」
ムキーッ!と歯をむき出しにし、飛びかからんばかりの表情を見せる自称美少女。
それを見たエンゾーは先程よりも大きな声で笑った。
「ハッハッハッハッ!な・・・見ろ、ジン。こんな女子に暗殺など出来ようはずも無かろうて・・・」
「・・・なんだろな。俺も何だかコイツに殺される気はしない」
「じゃろ。サリヤ嬢を使わした者の目的がどこにあるのかは知らんが、少なくともこの子は良い子じゃ。きっと大丈夫じゃよ」
「んん・・・なあ、サリヤ」
ジンは初めて彼女のことを本名で呼ぶ。
「な、何よ・・・?」
「お前は俺達をどうしたいんだよ?」
「ど・・・どうって?」
「信じられないかもしれんが、俺は別にこの国を離れたからって、反旗を翻すつもりなんて毛頭無いんだよ。タダ働きだったコトも今更咎める気無いし・・・」
「え・・・タダ働きって?」
「なんだ・・・そこら辺の事情は聞いてねえんだな」
ジンはそう言うと、自身が魔王討伐後に王から受けた手ひどい仕打ちについて語った。
稀代の英雄にも係わらず、対した賞賛も無ければ報酬も与えられず・・・ひいては王都を追い出されることになった・・・そんな身の上話を聞かされて、流石のサリヤも同情の念を示す。
「そ・・・そうだったの・・・ごめんなさい」
「お・・・おい、何でお前が謝る?」
「だ、だって・・・あなたが魔王や魔物と戦ってくれていたから、今の国の平和があるのよ。それは間違いない。なのに・・・これ以上用は無いから出て行けだなんて・・・国に仕える者として只々申し訳ないわ・・・」
そう言って終いには涙ぐむサリヤ。
そんな姿には、流石のジンも何も感じないわけでは無く・・・
「さっきも言ったけど、もう終わったことだ。それに、魔物との戦いの日々の中で俺はそこにいるエン爺と出会えたし・・・それに新しい夢も出来た。今の自分にとっちゃ、金銀財宝なんかより、そっちの方がずっと大事なんだよ」
「・・・・・・・・・」
「んで、話戻すけど、俺らはその夢を追う為にこの国を離れるんであって、復讐したいとか考えてるわけじゃ無い。その上で聞くんだが、お前はそれでも俺達に付いてくるつもりか?お前に指示してるヤツはともかく・・・お前自身は俺達のこと、どう思ってるんだ?」
「・・・私は」
サリヤは目の前の青年と老人をそれぞれ見やる。
そして10秒足らずの思考の中で、彼等に対する自身の思いと、今後の行動方針を確認した。
「あなた達のこと・・・完全に信じ切れたわけじゃ無い。でも、少なくとも理由も無しに他人に害を与える様な人達じゃないと思う。だから・・・その感が正しいかどうか確認するためにも、どうか・・・同行を許して欲しい」
「許して欲しい・・・か」
地べたに座り、頭を下げるサリヤの頭部を暫く見つめたジン。
彼は自らの頬をポリポリと掻き、1つ溜息を付いてからこう言った。
「邪魔になるようなら置いていくからな!」
こうして、彼等の旅には同伴者が1人、加わることとなったのであった。
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